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「小さな本物」ホビーラジコンの世界

明けましておめでとうございます!
アサイ・エンジニアリングの浅井伸一です。

前回の記事で書かせていただきましたが、アサイ・エンジニアリングは、様々なロボットや精密機械の開発を手掛けている会社です。
今日は、高難度なロボットや医療機器を開発できる背景に何があるのか、、、についてお話したいと思います!

最初に種明かしをしてしまいますと、実は、それは(タイトルにもありますが・・・)、「ホビーラジコン」を開発する中で磨かれた技術なのです。

アサイ・エンジニアリングを2008年に創業する前、私は模型メーカーに勤務し、ラジコンカーの開発を数多く行っていました。
今回は「小さな本物」である「ホビーラジコン」というものについて、開発者の視点からご紹介したいと思います。お楽しみいただければ嬉しいです。

私が京商在籍時に開発したミニッツレーサー(1999年発売)。手のひらサイズながら最高速は20km/hを超える。手軽さと高い走行性能を兼ね備え、世界的ヒットとなった。

ホビーラジコンとは

「トイラジコン」と「ホビーラジコン」の明確な違い

皆さんは「ラジコン」というと、どんなものを想像されるでしょうか?
子供向けの「おもちゃ」というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし、私が手掛けていたのは「ホビーラジコン」というもので、「トイラジコン」(おもちゃのラジコン)とは全くの別物です。

トイラジコンはその名の通りトイ(おもちゃ)として開発され、低価格で子供~大人まで幅広い層に操縦を楽しんでいただくための製品です。

一方、ホビーラジコンは、本格的な大人のホビー(趣味)として楽しんでいただくために技巧を凝らした製品です。マシンの走行性能を追求し、最高峰のクラスでは100km/hを超える速度のモデルで世界選手権が行われるような精巧であり過激(?)な世界です。スペック上の性能を追求すると同時に、ユーザーの感性に訴求する「感性性能」を極限まで突き詰めることに主眼を置いて開発されます。

↓かつて手掛けたホビーラジコン「京商ミニッツレーサー」走行の様子をご覧ください。私でも目が付いていかないくらい速いです(笑)

「小さな本物」ホビーラジコンの技術

「ホビーラジコン」ではシビアな走行性能追求が行われますので、設計には機械工学の基礎はもちろんのこと、自動車工学の知識も必要になります。

例を2つ挙げてみたいと思います。少々技術的な話になりますが、工学を学んだご経験のない方にもご理解いただけるように心がけて書いてみました。

滑らかなコーナリングを実現する技術①

当たり前ですが、クルマのハンドルを切ると前輪が曲がります。このとき、左右のタイヤが全く同じ角度に曲がるのでは、実はつじつまが合いません。図をご覧ください。

「アッカーマン・ステアリング・ジオメトリ」と呼ばれる各車輪の構成

カーブの中心点からの位置関係で、各車輪に必要な角度は自ずと決まります。これは「アッカーマン・ステアリング・ジオメトリ」と呼ばれるもので、ハンドルを切った時の各車輪の構成を示すものです。

精密に、滑らかにクルマを旋回させるためには、これは必須検討項目なのです。実車の世界では当たり前のことですが、ホビーラジコンの設計にも取り入れられています。

滑らかなコーナリングを実現する技術②

また、たとえば、クルマがカーブを曲がるとき、カーブの内側の車輪と外側の車輪ではそれぞれ移動距離が異なり、左右のタイヤに回転差が生じます。図をご覧ください。

カーブでは、左右の後輪で移動距離が異なる=回転差が生まれる

これを考慮せずに、左右の車輪を完全に同期させたままカーブを曲がると回転差を吸収できず、タイヤがスリップしてしまいます。

そこで、この差を吸収する「デファレンシャルギア」という機構が駆動輪についています。実車の世界ではほぼ全てのクルマに装備されていますが、これはホビーラジコンでも実装されています。

左右の車輪の回転差を吸収する「デファレンシャルギア」。駆動輪に装備される。

ホビーラジコンは走行性能が命の世界ですから、コストアップを覚悟の上でこのような技術を必ず設計に盛り込みます。

この他、検討項目は重心位置、繊細なスピードコントロール、サスペンション、空気力学・・・その他諸々と多岐にわたります。ホビーラジコンは模型ではありますが、機械としては紛れもなく「小さな本物」といえるものであり、ある意味では小さいからこそ、本物とは違う難しさがあるとも言える世界なのです。

おわりに

今回ご紹介できた技術はごくごく一部ですが、ホビーラジコンという世界の技術や開発精神を少しでも知っていただけたなら嬉しいです。

このようなホビー開発で培った技術を応用して、私は現在では高難度なロボット開発、さらには精密医療機器開発を手掛けるようになりました。
ラジコンからロボットに応用した技術の事例や、そのきっかけなどについては、次回以降の記事で詳しくお話したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました!
今後も更新してまいりますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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