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「帰る」 ということ

 一年の終わりも近づいた寒々とした今日。
例年の如く、我が家では毎年この時期になるとお寺さんにお越しいただいて、仏壇のご先祖様への供養をする。
 
 毎年、近所のお寺さんが来てくださる。今回もいつものように縁側から参上され、お茶で一息整えて経典をお読みになられた。そして、経典を読み終えた後はお寺さんのお話をいつも聞かせていただいている。今年は、特に時の流れの残酷さであったり過去を省みることが多かった年。そんな中で、今回のお話がとても心に響いたから、すこし書き残そうと思う。

 お寺さんの娘さんは、今東京に住んでいらしている。その娘さんから、先日年末は帰らないという連絡があったそう。
 それから、その娘さんの旦那さんのご両親は京都におられたらしく、今はもう亡くなられたのだとか。
 だから、広島には帰ることはある。けれど、その京都にもう”帰る”ことはない。今は、京都に”行く”となるのだと。

 ”帰る” というのは、そこに誰かがいて「おかえり」と言ってくれる人がいるから”帰る”のだと。
 その人が居られなくなれば、そこに”帰る”のではなく”行く”ことになるのだと。

 それとは別で、同級生は増えることはないんですよ。というお話も。
 年齢も年齢だから、もうすでに数名の小学校からの同級生が亡くなられ、今年は高校時代からの三人組で仲良くしていた内の一人が亡くなられたそう。
 常に、お寺の住職をされているからこそ、余計に人の生き死に対してお考えになられることがあるのだろうなと。
 
 ついこの前まで、友達と共にランドセルを背負っていたのに。もう生まれてきて20年。同時に母親もこの家に嫁いで20年。祖母は、この家に嫁いでかれこれ60年。
 今年の夏、脳梗塞で倒れた祖母。この数年で何度か脳梗塞で倒れている祖父。
 幸い、まだまだ長生きだけれど小学校の時に見た、元気で若々しかった面影は記憶の中だけになってしまった。

 母は、四兄弟だけれど学生の頃に父親を亡くしていて、母方の祖父には会ったことがない。

 母は度々いう、”いつまでも何でもあると思うなよ〜”
 
 この歳になって、色々分かるようになってちゃんと理解できるようになってきたなと思う。
 やはり世の中、いつかは生命は尽き、今あるものは無くなっていき、徐々に徐々に時が流れていく。

 逢いたいな、逢い続けたいな。そう想える人に出逢える、出逢えたと言うのは私の人生において、本当に奇跡ではないかなと思う。

 これから先、逢いたいと思っても逢えなくなるだろう。そうなる前に、逢いたいだけ逢いたいなって。だからこそ、動けるうちに逢いたい人に逢い続けているし、これからも直接逢えなくなろうとも関係は持ち続けたいなって思う。

 今まで出会った人と、死ぬまで逢い続けるのは正直無理な話で。けれど、想い続ける、関わり続けることはできる。私は一人でも、一秒でも、直接逢えるのであれば、これからも逢い続けると思う。
 そうして、直接逢えなくなったとしても、いつかお互い天寿を全うした後にでも再会できることを願ってる。
 死ぬ時に、出逢えてよかったな〜。幸せに生きてこれたな〜って今も思えるだろうけれど、そう想いたいし、出逢った人にも想ってもらえる人になれたら嬉しいな〜って。


 今抱えている様々なことに、向き合うというのは難しい。けれど、時は待ってはくれない。いつか迎える寿命の前に出来ることを、最大限悔いの残らないように行っていきたいし、そう生きていきたい。


 あと80年じゃあ足りませんわな!笑。と、案の定ここまで脱線したのですが。


 考えたことというのは、やっぱり誰かの”ただいま”になりたいな〜って。
 そして、”おかえりなさい”って今度は自分が言うんだ〜って。

 知ってる方も多いかも知れませんが、私の夢は『全世界ホームタウン
これはいつまでも変わらないだろうなって思います。

 今までは、自分が”ただいま”と言えるような場所や、そう言える人に出逢う旅をしていたし、今もこれからもそれはし続ける。
 
 そして、これからは自分が”おかえり”と言える、誰かが”帰りたい”と思える場所を作り上げていきたいし、それを実現させる。
 


 何でもないありきたりな一日。
 ちょっと心が疲れた一日。
 久しぶりに帰りたいなって思った一日。
 今日は何しようかな、どこ行こうかなって思った一日。
 いい気分な一日。
 ちょっと特別な一日。
 
 そんな一日に。
  
 あ、そうだな。今日はあそこに帰ろうかな〜。

 そんな居場所を、帰る場所を、色んなところに、作りたいと思った所に作りたいなって改めて思った。
 此処に来て、心を元気にして笑顔になって、こんな場所に、人に出逢えて良かったなって思ってもらえるそんな空間。

 今度は私が”おかえり”も言う番かな。
 
 そんな何でもないクリスマスイブでしたとさ。


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