【エッセイ】それぞれの作法
右隣に座る上司に「長い白髪あるよ」と言われた。
「え、どこですか」
「このへん」
ちょうど見えづらい位置だった。白髪パトロールの際に見逃したらしい。
「いや、抜いてくださいよ」
「やだよ」
その後、帰宅するまで白髪のことを気にして過ごすこととなった。
夜になって、自宅で鏡に向かう。はたして白髪はそこにあった。かなりの長さになっていた。無事に抜いて一件落着である。
それはそうと、わたしの感覚では白髪を指摘したからには抜いてあげるのが作法というものだ。だって、本人がすぐに抜けない状況が多々ある。指摘しっぱなしではいかにも無責任だ。
しばらくその無責任さに憤慨していたが、ふと気づいてしまった。
もしわたしが上司に「鼻毛出てますよ」と指摘することがあったとして。
「抜いてくれ」と言われてもやっぱり拒否するだろうから、自分の作法が万人の当たりまえだと決めつけてはいけないようだ。
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