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【エッセイ】巣

 ニャギの巣は、物置の入り口にある発泡スチロールの箱に畳んで置いてある青い毛布だ。天蓋のようにカラスよけの網が下げられている。
 ニャギはそこに大きな身体を丸めてすっぽり収まる。前は私が近づくと嫌な顔をして逃げたが、このごろは黙って触らせるようになった(冷たい手をぬくい腹の下に差し込むので嫌がられるのだろう)。
 猫はここと決めるといつも同じ場所に同じ体勢で寝る(犬も同じ)。猫がいないときも猫の寝床は丸くへこんでいて、しだいにいつも寝ている部分が黒ずんでくる。ますます「巣」っぽさが増す。
 ニャギがのそりと立ち上がったところで、丸まった猫のかたちがついた巣に手を置く。暖かくて笑ってしまう。
 人間のかたちにへこんだ自分の寝床を思い出した。特に腰のあたりの沈みかたがひどい。そろそろマットレスを買い換えようと思っていたんだった。
 ニャギの巣はここ。私の巣はあそこ。
 
 

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