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『滅びの前のシャングリラ』を読んでみた

こんにちは!読んでいただきありがとうございます。
『滅びの前のシャングリラ』(凪良ゆう著)を読みました。
本の感想を書いて公開したことがないので、おそるおそる書いていきます。
ネタばれはしません。


小説について

この小説は4人の主人公の視点での物語で構成されています。一つ一つが短編になっていますが、本全体を通して登場人物にはつながりがあるのです。

高校の同級生を殺した江那友樹、大物ヤクザを殺した目力信士、友樹の母、歌手の山田路子は、それぞれ自分の人生に絶望していました。そんな中で、一か月後に地球に小惑星が衝突し人類が絶滅するというニュースが入るのです。このニュースを知ってから小惑星が衝突するまでの1か月間について書かれた、感情の揺れが止まらない小説です。

それぞれの主人公が、絶望の中で生きる意味を問いかけながら終焉の時を迎えます。絶望が渦巻く街の中で、自身の内で湧き上がる愛と憎しみの感情を真正面から見つめなおすことになります。ときに、そんな感情から目をそらしたり、また恐怖を乗り越えて自分自身の本当の欲求と向き合ったりしながら、忘れかけていた生きる喜びを感じられるようになっていくのです。

この物語は、あらすじを読む限り、生と死の意味について問うているものだと思っていましたが、読み終えてみると、生と死よりも愛と憎しみの葛藤や苦しい状況でも誰かを愛し続けたい人間の原始的な欲求を浮き彫りにさせるような内容でした。

読んだ後の感想

小惑星の衝突までの一か月間、街は荒れて、人々が疲れきっていくような絶望的な状況の中で、それぞれの主人公が愛したい人を見つけて、信じたいものを信じていく。その様子が日がたつにつれて色濃くなっていくのが感じられました。

衝撃的で悲しい場面も多かったですが、社会の秩序が崩壊し、人々が持っていたであろう倫理観が揺らぐ中で、自分の人生とは、自分が大切にしたいものは何かと問い続ける心の内を感じるたびに、読んでいる私の心は締め付けられました。

今まで守ってきたプライドを徐々に手放していく過程で、主人公一人一人が本当に大切にしたいものを見つけていく、そして終焉の時に向けて日に日にその想いが強くなっていく描写に心を奪われ続けてしまいました。

生と死。愛と憎しみ。正義と悪。闇と光。
相反する2つの要素のあるようでないようなあいまいな境界線を、ときにははっきり感じ、ときには読者の私でもわからなくなるような感覚を感じました。

読後の気持ちは、うれしいわけでもなく、悲しいわけでもなく、前向きになれるわけでもなく、放心状態になってしまうような余韻のすごい小説でした。

こんな言葉でしか表現できない自分に腹が立つ。自分の中で、人生に対する問いを持てていなさすぎた、そして、自分が人生で大切にしたい価値観について、今まで真剣に考えてこなかったな、といい意味で反省できる小説でした。

どんな人におすすめ?

人間の愛と憎しみについて深く考えたい人におすすめです。逆に、深く考えたことない人にも読んでみてほしいです。

上にも書いた通り、社会の秩序や人の倫理観が揺らいだ状況からこそ浮き彫りになる、人間の内に眠る愛憎の深さを、この小説で疑似体験することができます。

おわりに

人生で初めて公開アカウントで本の感想を書いたので、自分の表現力のなさに苛立ちました。

自分の中の倫理感や感情をこんなにも揺さぶる、色濃い描写がされた小説を、こんなに平凡な言葉でしか説明できない自分が嫌になるぐらい、大胆で読み応えのある小説でした!

悔しいいいい!!!

読んでくれてありがとうございました!


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