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元自衛隊メンタル教官が教える 夫婦げんかにスッと効く「ありがとう瞑想」の魔法

 あけましておめでとうございます。朝日新聞出版「さんぽ」です。今年もステキな書籍の紹介や、役立つ記事を配信してまいります。どうぞよろしくお願いいたします!
 新年1本目にお届けするのは、夫婦げんかに効く魔法について。年末年始にけんかしてしまったという方は必読! 今すぐ、仲直りしてください。

 一説によると、恋愛の賞味期限は3年。恋愛という感情は、DNAを残すのが目的で、1人の人を愛して、子どもを作り、ある程度まで育ってくれたら、その目的は達成されるから、だそうだ。

 だから、どんなに熱い思いで結ばれた夫婦も、情熱が冷め、そのあとは人間同士のつき合いとなる。洗濯物の干し方から食べ方、子育て方針、人生観まで、違いが目立ってきて、「ムカつく」「許せない」ことは増えてきてしまう。

「人間関係の悩みで一番多いのが、実は“配偶者”です。結婚は異文化との遭遇、夫婦とはどうしてもぶつかりやすいもの。上手に折り合っていくには、大人の智恵が必要です」と話すのは、元自衛隊メンタル教官で、『人間関係の疲れをとる技術』著者の下園壮太さん

 なぜ夫婦は上手に折り合うべきなのか? 下園さんは、夫婦関係、親子関係などの基本的な人間関係が安定していることが、人生の底支えになるという。そのために役立つ、ある方法を教えてもらった。

■基本的な人間関係の安定は、人生の“自信”を底支えする

 もしあなたが、夫婦間だけでなく、家族、職場などの人間関係に悩んでいるのなら、2つの視点から、自分自身を振り返ってみてください。一つは、自分自身が疲れていないか。そしてもう一つは「自信」のケアができているかどうか、です。

 自信には、3つの種類の自信があると私は考えています。

【図】三つの自信

<第1の自信>
課題ごとの「できる」「できない」に関する自信。

<第2の自信>
自分の体や頭脳、感覚に関する自信。
健康で、体が動き、今後も自分の感覚に従っていれば、人生を何とか乗り切れるという自信。

<第3の自信>
人に愛されて、「人間関係」をうまくやれる自信。
他人に認められており社会的な居場所があること。

 人生にはさまざまな出来事が起こります。失敗して第1の自信が揺らいでも、がんを宣告されて第2の自信が急激に低下しても、第3の自信があると、何とか持ちこたえられます。逆に、第3の自信がないと、少しの失敗でも、とても大きなダメージを受けます。

 夫婦をはじめとした基本的な人間関係が良好で、自分の居場所がある、誰かが守ってくれるという第3の自信は、人生を支えてくれる土台のようなものです。ここが安定していることは、あなたを“底支え”してくれるのです。

■「ありがとう瞑想」でスッと落ち着ける

 そうは言っても、「異文化の遭遇」である夫婦の間では、なかなか冷静ではいられない場面も多いですよね。そこで、私がいつもクライアントに話している、「ありがとう瞑想」と名付けた素敵な方法を紹介しましょう。

 言い争いになった、腹が立ったなどの場面にあったら、まずは可能な限り、その場、相手から離れること。そこで、深呼吸を大きく2、3回行う。次に普通の呼吸に戻し、その呼吸に意識を向けるようにしてください。

 それでも多くの場合、今あったホットな出来事や、イライラした感情が頭をめぐってきます。その感情に、「ありがとう」とつぶやいてください。その後、呼吸に意識を戻す。また、すぐに感情がめぐってきても、そのたびに「ありがとう。でも今は、私は呼吸に戻るよ」と言って、呼吸に意識を戻す。

 この「ありがとう瞑想」を繰り返すことで、比較的短時間で落ち着くことができます。呼吸への意識の向け方は、鼻から入ってくる空気を意識してもいいし、お腹のふくらみを観察してもいいし、ただ呼吸を「数える」という方法でも、各自の好きな方法でかまいません。

■最悪パターンを回避する

 なぜ、この方法が効くのでしょうか?

 一番良くないのが、イライラを拡大させてお互いを攻撃し合うこと。攻撃されて傷ついた思い出は、深く長く残ります。また、そんな相手が近くによるだけで、緊張して疲れてしまいます。結果的に、相手を嫌いになるし、家庭を安心の基地とは思えなくなります。

 では、我慢すればいいのでしょうか。大切な人間関係だからこそ、「我慢」に頼る人も多いものです。ところが、我慢だけだと結局、破たんしがちです。確かに攻撃はしないでしょうが、我慢はとても大きなエネルギーを使うからです。しかもその状態が長く続きます。これも、結局、相手が自分に我慢を強いる存在になって嫌いになり、安心できません。

 最も現実的な落としどころが、自分のイライラをまず認めること。イライラはパートナーとのつき合いの中で、自分が何らかの不満足を強いられているという信号。「イライラなんて感じたくない、消えてしまえ」と否定しても、その信号は逆に、大きくアラームを鳴らしてきます。
 
 そこでまず「(危険を教えてくれて)ありがとう」とつぶやき、自分の「感情」を認めてください。そうすると、少し穏やかに感じ始める。そのあとは、ひたすら呼吸に意識を向けるのです。

 イライラしているのには、理由があるので、何かをやったからと言って、急に機嫌よくなるような魔法はありません。あるのは、先に上げた2つの最悪ケースを避けるための方策です。

 ありがとうとつぶやくことで、自己否定しなくて済みます。その後、呼吸に意識を向けることで、相手を攻撃したくなる衝動をそらすことができます。すると、自分をコントロールできた感覚(第2の自信)が強くなるだけでなく、結果的にイライラや我慢を長引かせることで疲れ果てて、相手を嫌いになるという、最悪のパターンを避けることができるのです。

 大切な関係で、イライラしてしまったら、「ありがとう瞑想」。

 怒りに乗っ取られた「攻撃」か、あるいは、自分の感情を押し殺す「我慢」か。外交もそうですが、そんな極端な方法だけではなく、柔軟な大人の対応を練習したいものですね。

(構成・文/向山奈央子)


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