朝日新聞出版さんぽ
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ディストピア的現代で、どうやって「希望」や「私」、そして「言葉」を取り戻すのか/藤井義允による文芸評論『擬人化する人間 脱人間主義的文学プログラム』より「はじめに」公開
はじめに――人間ではない「私」 自分の存在の希薄さを常に感じながら生きてきた。 感情も、感覚も、何もかも。僕の中にあるものは、まるで全て作りもののようではないか。そんな違和感を持って過ごしていた。 しかし厄介なことに、それでも悲しみや怒りや嬉しさというような人間的な感情は確然と存在しており、矛盾する二つの感覚を抱えていた。 つまり「人間」らしさを持った「人間」ではないもの――「人擬き」の感覚が僕にはある。 一般的にイメージされる「人間」とは離れた場所に存在
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一冊完結のはずが…「編集K氏が、乗せるのがとても上手なのだ」/時代小説の旗手・佐々木裕一さんが明かす「斬! 江戸の用心棒」シリーズ化裏話
読む時代劇 昭和の時代劇スターに魅了されて『斬! 江戸の用心棒』という題名を見ると、昭和スターによる時代劇を連想される読者が多いかと思う。まさに私は、スターが出てくるような読む時代劇を書きたかった。 『斬! 江戸の用心棒』は当初、仇討ち物として、1冊で完結するつもりで書かせていただいた。ところが、出版した時には、シリーズになっていた。編集K氏が、乗せるのがとても上手なのだ。会えば、書きます、と言ってしまう。それでも、スケジュールの関係で2巻までは5年も間が空いてしまった。そ
「悠々自適」な老後は恐ろしく退屈? 82歳で転職した元ソフトバンク副社長・松本徹三さんの著書『仕事が好きで何が悪い!』を立ち読み
■はじめに 日本は世界にこれまで例を見なかったような「高齢社会」に突入しており、これがGDPの深刻な伸び悩みと、財政の悪化を招いています。しかし、「高齢化」は止めることができないので、これを嘆いていても仕方がありません。 今必要なことは、その「高齢化」をむしろ逆手にとって、流れを良い方向へと変えていくこと。これしかありません。 世の中には、明らかに「良い高齢者」と「悪い高齢者」がいます。一言で言えば、良い高齢者とは「世の中のためになっている高齢者」、悪い高齢者とは「世の
『源氏物語』が面白いだけでなく悲しみにも効く理由を、「こころ」の言葉に照準を絞り解きほぐした帚木蓬生さんの『源氏物語のこころ』/尾崎真理子さんによる書評公開
悲しみに効く、言葉の妙薬として『源氏物語』ばかりは、既成の現代語訳を読み通せば、それで終わりとはならない。全体の筋を頭に置くのはその世界への参加最低条件であって、そこからが面白いのだ。 幾種かの解説書に目を通して、一応の知識を得たつもりでも、十年、二十年に一度は必ず、『源氏』絡みの話題作が現れるのもこの作品の特別さ。しかも、社会の風潮や研究の進展によって、これほど評価や解釈が変わり続けてきた物語もないから、ブームのたびに新たな知識を得る楽しみも生じる。大河ドラマ「光る君へ