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#22 省略

言語という領域において、私には悪い癖がある。それは、「相手の理解力に依存した話し方をしてしまう」というものだ。

「それってつまりどういうこと?」「何が〇〇なの?」「何を〇〇したの?」

こういう類の質問をされることが自分にとって日常茶飯事になってしまうくらいには、いろいろ省略しながら喋ってしまう癖があった。

気をつけるようにしても、どうしても「わかるだろう」と勝手に考えてしまっていろいろ端折った伝え方をしてしまう。私の長所の一つとして「考えること」プラス「物事を単純化・効率化すること」があるとこれまでの投稿で導き出したのだけど、たぶん相手に何かを伝える前に自分の頭の中で「考え」、「最短ルートでそれを伝える方法」を編み出してから言葉に出すから、たぶん私の頭の中を覗けない相手の人からしたら言葉足らずに聞こえてしまうのだろう。

日本語が母語というのも、この省略の癖の原因の一つになっていると思う。(日本語で話してても「何が?」って言われることが多いからその真偽は不明)日本語って英語に比べると省略がうまくいく言語だと思う。日本自体がハイコンテクストカルチャーで、それぞれが相手のいうことをある程度は推測しながら話している印象があって、だからこそ英語に比べて圧倒的に人称代名詞の使用が少なかったり、主語を省略しても話が通じたり、そういう「省略」がある程度は通用する言語な気がする。


日本語と英語の人称代名詞の使用の違いについて考えた投稿もあげていますので、よろしければこちらもご覧ください!


そういうハイコンテクストカルチャーの中で生活してきて、「省略すること」、「相手に理解してもらうことが前提となっている喋り方をすること」が完全に身に染みてしまった。

なんでこの話をしたかというと、最近、その癖を本気で治していかないといけない場面に幾度となく遭遇しているから。

最近留学している中で、私の中では珍しく日本にあまり興味を持たない人たちと友だちになることが増えた。今まではというと、だいたい日本に興味のある人と仲良くなることが多かった。というのも私は結構受け身で、自分から友だちになろう!とか言えないタイプの人間だから、今まで友だちになった人といえばもともと日本に興味があって、私が日本人であるということに価値を見出して向こうから話しかけてくれたことで友だちになった人たちが大半を占めていた。

でも最近はありがたいことに日本にはそこまで興味を持たない人と話している中で、いろいろ気づくことがあった。

日本に興味がある友だちも、日本に興味がない友だちも、もちろん私が今留学している国(ちなみにローコンテクストカルチャー)で同じように生まれ育ってきて、本質的には似通っているところは大きいと思う。でも、日本という文化に馴染みがあるかどうか、というのはその人の「会話の中での推測度合い」に変化をもたらしていると思う。

日本に興味がある友だちと話しているときは、私が言いたいことを汲み取ってくれるような人たちが多かった。私が、説明する英単語が出てこなかったときに、「〇〇ってこと?」と助け舟を出してくれたり、日本人のように相槌を多く入れてくれて、言葉に詰まったときは向こうが代わりに話してくれて気まずい雰囲気を打破(?)してくれることが私個人の体感としては多かった。(たぶん日本語を学んでいる彼らからしたら、「英語から日本語」にする苦労を理解していて、私が「日本語から英語」に変換するのに苦労している姿を見て共感してくれる部分があるから助けてくれるというのも一つの理由としてある思う)

もちろん彼らは日本のことについて詳しいから、私が「あ、そういえば日本の文化にも似たようなものがあってね、、」みたいな感じで言ったときも、100説明しなくてもある程度説明しただけで「あ、それ聞いたことある、あれでしょ」みたいな感じで、ある程度説明を省略しても話が通じる世界線だった。

でも、日本に興味がない友だちだとそれがちょっと違う。

自分が言葉に詰まっていても、黙って次の言葉が出てくるのを待ってくれたり、日本語から来る主語や目的語が脱落した文を言ってしまったときは素直に怪訝な顔をして「どういうこと?」「何が?」と聞いてくれたり。はたまた日本の文化について説明するときは本当にほぼ100説明しないと理解されなかったり。

そういう経験がほぼ初めてで、代名詞の使い方に気をつける(容易にit is beautifulとかいうと、何が?と高確率で聞き返されるから、代名詞は使わずにちゃんとそのものの名前を言うようにする)、文章を完璧に完成させてから言葉にするというようなことにとても労力を奪われている。

でもそれが新鮮で、「どういうこと?」と率直に聞いてくれることがありがたいし、「日本人」としてではなく、「同じ英語を話す人」として接してくれているような気持ちになれて、とにかく嬉しい。

日本の文化について説明するときも、ちゃんと理解してもらえるように説明しようと思うと意外とうまくいかなくて、自分の語彙力の無さや文章構築の下手さ、そして、意外と自分が日本という国を説明できるほど日本について詳しくないという事実に気づいたりする。こういう気づきをもたらしてくれるという点で、日本に興味がない友だちと接することもとても大事だなと感じた。

というわけで今回は日本に興味がない友だちと接している中で気づけた自分の弱点についてのお話でした。今回も読んでくださった皆様、ありがとうございました。


【余談】

もののけ姫!写真撮るタイミング下手くそすぎる。

実はこの前ハウルの動く城に続いてもののけ姫を見ました。前ハウルの動く城を見せてくれた方がまた見せてくれました。

前はほぼ一人で見ていたのですが、今回はなんとこの投稿でメンションした日本に興味がない友だちも一緒に。日本に興味のなかった友だちが、自分という媒体を通して日本のものに触れ合ってくれるのが嬉しいなと思いました。今別の地域にいる友だちも、もともと日本をそんなに知らなかったのですがこの前、「日本食レストランに行ってみたよ」と教えてくれて、素直に嬉しかったです。

で、話は戻ってもののけ姫なんですけど、英語の訳は"Princess Mononoke"なんですね。初め聞いたとき、「なんで英訳はPrincessつくんや、、?」と意味わからん疑問を持ってしまいました(笑)というのも、なんかもののけ姫って「もののけひめ」っていう一つの単語として認識してしまっていて、「もののけ」+「姫」っていう二つの単語の集合っていうことをすっかり忘れていまして。(笑)

それプラス、Princessって、日本語にそのまま変えると「プリンセス」で、日本人が「プリンセス」と聞くと、なんかドレスを着た煌びやかな「プリンセス」を思い浮かべませんか?その影響もあって、もののけ姫はそういう煌びやかなプリンセスとは少し違うから、"Princess Mononoke"と聞いたときに違和感があったんだと思います。

話はズレてしまいますが、こういう日本語のあやが結構好きです。Foreign Loan Wordとして、英語から輸入された「プリンセス」と、同じプリンセスの意味を持つはずだけれど、Sino-Japanese Wordとして扱われる(native Japaneseなんかなあんまわからん)「姫」が、違うニュアンスを持ってるのって日本語ならではだと感じます。

実際、"Princess Mononoke"と聞いたときに私が「プリンセス?!」と驚くと現地の友だちに「うん、だって森のプリンセスじゃん」とサラッと返され、単語ごとの認識が言語によって違うの、面白いなってなりました。

Yoko HasegawaさんのJapanese -A Linguistic Introduction、第5章を読むとその辺をうまく理解できる気がします。

余談死ぬほど長くなってしまった、、この辺で本当に終わりにします。また次回、、