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過去の自分が夢を阻む:出席率は貯金と同じ!な声かけメモ

出席率!

日本語学校に通う留学生にとって何よりも大事な出席率。

「留学ビザ」は学校に所属し、きちんと授業に出て勉強することが条件だ。学生たちの出席率は毎日、毎コマ、厳密に管理される。


日本語学校と出席率の関係

出席率の思わしくない学生を、日本語学校は入国管理局に報告することになっている。この基準は年々厳しくなっていて、現在は月の出席率が5割を下回った学生が毎月報告の対象だ。いずれ月7割、8割と引き上げられていくとも言われている。

学校側の立場からざっくり言うと、出席不良者が多い学校は国から「教育機関として適していない」と判断されることになる。「法務省告示校」というリストがあって、学生管理やほかに定められた様々な基準を満たした日本語教育機関が掲載され、適宜更新されている。

告示校であることのメリットは業務上の手続きにもいろいろあるのだけれど、身近な例で言うと、たとえば自分が留学したい、または自分の子どもを留学させようというときに「国の基準を満たした学校」と「そうでない学校」、どちらが選びやすいだろうか。仲介機関は、どちらを勧めやすいだろうか。

告示校であるかどうかは、学校の信用に関わる要件だ。それは理由の一つだけれど、とにかく学校として、留学生の出席管理をおろそかにしてはいけないということだ。

ただし、学生に学校側の事情は関係ない。関係ないということはないが、「学校が困るからあなたは休まないで!」なんて言われても、学生からすれば知ったこっちゃない。そんな言い方で指導している先生はいない。

遅刻・欠席は学生側にも悪い影響があるのだ。


学生と出席率の関係:守らないとどうなる?

留学生でありながら遅刻・欠席を繰り返して授業にろくに参加しないようでは、出席率がどんどん落ちていく。デメリットは次のようなことが挙げられる。

次回のビザ更新ができない(最重要)
・日本語学校の卒業要件を満たさず、退学になる
・進学先の出願要件を満たさず、受験資格が得られない
・就職先の条件を満たさず、応募ができない

主に学生自身の進路を狭める結果が待っている。

ビザ更新の問題は最も深刻だ。ビザが出なければ帰国しなければならない。どんなに成績優秀でも、日本で活動を続けることができなくなる。

……とデメリットを並べてみても、遅刻・欠席しがちな学生たちはどこか他人事で聞いている。どうにかなると思っているし、実際に知り合いがどうにかなっているケースを知っているのだろう。

だから私はこんな話をいっしょに伝えるようにしている。

みなさんのビザ更新はいつですか? 日本語学校を卒業して、次の学校に進学してから申請しますね。「進学してからがんばればいいや」と思っている人はいませんか。苦しい受験を突破して進学した大学、就職のために技術を学べる専門学校。すばらしい環境になって、毎日新しいことに出会って、すてきな友達や先生も得られるでしょう。夢に向かってがんばる気持ちになりますよね。
そんな気持ちになったときに入国管理局から言われます。「あなたは日本語学校にいたときの出席率が悪いです。ビザは出せません。帰国してください。」……どう思いますか? しかたない、と諦められますか? これからがんばろう! というときに夢をあきらめなけらばならなくなるなんて、悔しいですよ。
今の自分のせいで、来年の自分が泣くかもしれません。今、なんとなく怠けているだけの人は、よく考えて。これから自分のためにがんばれますね。

自己責任論をていねいに言い換えているだけなのだが、これはけっこう聞く耳を持ってくれるように思う。実際、そこから1日も休まなかった学生もいる。

「あのときああしておけばよかった」と自分の行ないを悔やまなければならないのはとてもつらい。

「しかたないな、次」と諦められる人ならいいが、自分を責めて人生を過ごしていくようなことは、あんまり誰にもしてほしくない。授業で顔を合わせている学生を相手にしたら、余計にそう思ってしまう。

どうしたら出席率を大事にしてくれるか? の声かけパターンは、いつもいくつも、考えている。


出席率は貯金と似ている。

そうは言っても留学生に限らず、どんなに真面目な人だって、どうしても人前に出たくない日はあるだろう。みんな人間なんだから。

風邪をひくなどの病気のとき、これはもちろん休まなければならない。

あとは、起き上がりたくない気持ちのとき。嫌なことがあったとき。失恋した、大切な人に何かがあった、どうしても終わらせたいことがある、家の事情や、頭の中を埋め尽くすくらいの悩みがある。

休みたい事情をぽつりと教えてくれる学生もいるが、多くはそこまで踏み込まない。

ひごろ授業にきちんと出席していれば、1日の欠席で追い込まれることはない。心理的にも、数字的にも。

教師の立場としては「病気になったりおうちの事情で何日も休まなければならないことは誰にでも起こり得る。その影響を少なくするために、今出席しておくんだよ」と、病気を例に貯金と同じアピールをしておく。

ただ、真面目な学生が不調になったときに「こんなことで学校を休むなんて私はダメな人間だ」と自分を追い詰めてしまわなくて済むようにしたいな……という気持ちもある。


声かけって、一通りではないですよね。目の前の学生たちが在籍中も進学後も心身ともに健康でいてくれるのが願いです。



写真:お散歩コースに咲いた桜




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