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【おもしろいK-POP】ソンムル編

「ソンムル」とは韓国語で贈り物やプレゼントを表す言葉。コンサート会場でオタクたちがプレゼント交換をしているアレである。

ソンムルの起源は昔ファンサイトの管理人が読者たちに配布したギフトが始まりだの、ペンミ(ファンミーティング)でアイドルにギフトを渡す文化が始まりだの、いろいろあるようだ。

オタクたちが用意する小さなプレゼントは、自作のトレカやシール、カードケースなど趣向を凝らしたものから、小分けのお菓子やティーバッグなど比較的安価で用意しやすいものまでさまざま。

【私がもらったソンムル達】

渡す前にSNSでソンムルを公開し、渡したいオタクたちの反応を見ながら試行錯誤をするという気の利いた人もいる。どんなものなら喜んでもらえるかを考える様は、恋人や仲のいい友人へのプレゼントさながらである。(だいたい渡すのは初対面のオタクなのに!)

私もこのK-POP恒例の行事に染まってしまい、今ではあげるのももらうのも当たり前になってしまったが、つい先日参加したコンサートで小さなソンムルがもたらす大きな効力に気づいてしまった!

K-POPというファンの連携がチャートも世界のトレンドも作り上げる独特の文化の中で、自然発生的に生まれた行為が、またさらに大きな潮流を生み出す仕掛けとなっていることに。

そもそもソンムルは、小さなプレゼントを贈り合ってオタク同士親睦を深めましょうねという感覚で広がったと思う。

特にSNSでつながる場合、「ようやく会えたね」という感謝の気持ちでソンムルを贈り合うのだ。これは私も体感していて、ツイッター(X)で出会う仲間とは顔も年齢もわからず、ただただ推しが好きという1点だけが濃密につながっているので、実際に会えた時は感無量のひと言。

ただ人見知りが多く消極的な日本人の私たちは、そのうれしい気持ちを素直に伝えるすべを知らない。そんなときにコミュニケーションツールになってくれるのがソンムルである。

ソンムルがあると初対面でもそれをネタに「かわいいね」「どうやって作ったの」と会話のきっかけにもなるし、相手の趣向も知れて一石二鳥。自分の推しがかわいくデコレーションされたソンムルを見て、コンサート前に気分も最高潮!

先日のコンサート前、そんな感じでソンムル交換をしていた時のこと。

相手のオタクが交換しながら「これからも投票がんばろうね」と言ったのだ。それまでもツイッターで投票がんばろうね、スミンがんばろうねと鼓舞してきた私たちだったが、実際に顔を見て言われると言葉の重みをズシンと感じてしまった。(ちなみに投票とは各種賞レースへのファン投票、スミンとはストリーミング)

ああそうか、ソンムルを渡す行為が推しへの愛を営業することなんだとソンムルの本当の目的に合点がいった。

そのことを頭の片隅に入れると、まわりでソンムルを渡しているオタクたちから、「これからも推しをよろしくね」「一致団結していこうね」というじっとりした本人達は無意識であろう思惑が見えてくる。「うちの商品を末永くよろしくお願いします」と頭を下げる営業マンが持っている手土産がソンムルそのものなのだ。

これがトレカやお菓子じゃなく簡単なあいさつだけだとしたら深く印象には残らない。コンサートが終わって家に帰ってきて、楽しかったなーとふと目に付くのがソンムルだ。一気にコンサートの情景がよみがえってきて、何日経ってもソンムルを見れば楽しかった思い出がよみがえる。それと同時に推しをもっと押し上げたい気持ちもコンサート当日さながらに思い出すのだ。においで記憶がよみがえるとはよく言われるが、ソンムルでよみがえる(笑)

そこからソンムルがきっかけとなりオタク同士が仲良くなる▼

コミュニケーションが増える▼

推しへの想いを共有できる▼

成績への反映▼

活動が増える▼

オタクが増える……(▲一番上に戻る)

と永遠のループへと広がっていくのだ。
まさしく、相手を喜ばせ次の商談の機会へ次々つなげていくツールとして手土産を使う日本の営業マンと同じである。

世界中のファンの熱意が合致すればジャックできてしまうK-POPチャート市場において、いかにファンダムの人数確保と主体性を底上げできるかが課題である。みんなで同じ方向を向いて半永久的に熱狂し続けるかがカギなのだ。その底上げにじっとりと重要な役目を果たしているのがソンムルな気がしてならない。

ファン一人ひとりが横のつながりを強固なものにすれば、点が線になり、線がサークルのようにつながってやがて大きな潮流になる。


小さなソンムルから生まれる、ファンによる無意識の営業活動。

見た目も行為も、何なら名前もかわいいソンムルだが、K-POPが日本で躍進してきた背景には、小さなギフトに込めた、言葉を多くかわさなくても推しへの愛を伝えられる利便性と、相手の気持ちへ同調していく日本人特有の気質にも関係が深そうだ。ソンムルが本場韓国より日本で発展してきた背景にも納得。

ああ、知れば知るほどK-POP文化はおもしろい!

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