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◆わたしがアポイ岳を推す理由

標高810.6m。
様似町の東に位置し、低山ながらも本格的な登山気分が味わえる山として、年間約1万人もの人が訪れるというアポイ岳。
わたしもそんな山に魅せられ、去年だけで3回登ったファンの一人だ。
今回は、いつものどら焼き備忘録をお休みして、本格的な登山シーズンの到来を前に、わたしがイチオシのアポイ岳についてウザ語りをしていこうと思う。

とは言え、まず最初におことわりしておきたいのは、わたしはガチガチのガチで登山初心者であるということだ。
赤裸々に言うと、他の山と比較してアポイ岳を語れるほど他の山には登っていない。
友達だけで結成した『ゆる登山部』も昨年の活動は総合4回だけで、アポイの他には樽前山に登ったきりである。
だから、これはトレッキングにハマりたておばさんの独り言くらいのつもりで読んで欲しい。
そして、それでも言いたい。

アポイ岳は良いぞ!

と。

そんなわけで、まずアポイ岳を知って頂くために、これまで登ったときの写真を交えてアポイの魅力を語っていこう。

◇魅力① アポイ岳ジオパーク

アポイ岳は2008年に【日本ジオパーク】に認定されたあと、2015年には【ユネスコ世界ジオパーク】に認定された。
実際問題それがどれくらいすごいことなのかはよく解んないのだが、世界にたった177箇所、日本には全部で9箇所しかないらしいところを見ると、何かすごいのかな、と皆さんも思うでしょう。
ここでカッコよく説明しようとwikiとか読んでみたけど字がいっぱい書いてあって、しかも例のアレ「自然と人間との共生及び持続可能な開発を実現することを目的とした事業」みたいな説明が目に入っちゃって、出た!SDGsってやつだ!ってなっちゃったのであとは各々自分で調べてください。
何しろアポイ岳は世界的に見ても稀少な地質学的価値がある場所で世界中からエラい学者先生たちが来るんだって説明がビジターセンターにあったような、なかったような!
えーとあとあれだ。何か、本来は地中の奥深くにあるはずの貴重な岩石が、アポイ岳周辺は地表に出てるって言ってた気がする!

えー……。
皆さん登山の際にはぜひ自分でアポイ岳ジオパークに足を運んでみてください。

頂上を写そうとしただけなので見切れている
ジオパークのビジターセンターの図

◇魅力② 1合目から登っていける

これは、他に樽前山しか知らない身で言っていいのか解らないのだが、例えば樽前山の場合、多くの初心者は一般的に比較的簡単と言われる7合目からスタートするルートで登り始めるのではないだろうか。わたしたちはそうだった。
他にも行ってみたい山はいくつかあるのだが、結構な割合で『初心者が1合目から行くのはオススメできない』みたいな説明を目にすることがある。
それはだいたい登山口からそこまでがめちゃくちゃ難所続きであったり、とにかく途方もなく歩かなきゃいけないであったり、理由は様々だが、アポイ岳は初心者でも1合目からスタートすることができる。

1合目から5合目くらいまではこんな感じの林道を
往くことになる

沢水があちこちに涌き出ている林道は、木々の匂いや水音、小さな生き物の気配に満ち満ちていて、まさに自然の中を散策している!といった感じだ(貧相な語彙)
時には鹿やリスなんかに会えることもあり、お手軽に美味しい空気や木々の緑を満喫したい人は5合目まででも充分に行く価値があると思う。
年に何度かは野鳥や高山植物を観察するイベントなども開かれているようなので、まずそういうのから参加してみるのもいいだろう。

◇魅力③  一回で2個の山を登ったみたいな気持ちになれる

よく、最初と終わりで全く違う曲みたいな歌があるでしょう。あんな感じ。
そう、アポイ岳は5合目からはまるっきり別の山だと思ってもいいくらい表情が変わるのである。

5合目までを【完全初心者向け☆森のお散歩コース】だとすると、5合目から頂上までは【初心者も頑張ればイケるけど頑張らないと厳しい☆岩がゴロゴロマジで気をつけて登山気分満喫コース】とでも言うべきか。長いな。
とにかく、両手をついて気をつけてよっこらしょー!と、人によっては他人の力を借りないとなかなか進むのが困難な箇所が5合目より上にはいくつも出てくるのである。
とはいえ、アポイ岳は地元小学生さえ踏破可能な山でもある。
些か運動不足の社会人でも頑張れば行けないほどの難山ではない。

5合目以降に現れる岩場の一例

是非とも頂上までを踏破して、ひと粒で2ヵ所分の登山気分を満喫して欲しい。

◇魅力④ 何たって絶景

そう。何たって絶景なのである。
先にも説明したように山自体は低山の部類になるそうだが、何しろ周りにほぼ何もない田舎で視界を遮る人工物が限りなく少ない。
様似町は広大な太平洋に面して、特殊な地質が生み出す奇岩・親子岩を含み、更に雄大な日高山脈を戴く街だ。
それらがアポイ岳の上から一望できる景色は我々人間社会の営みから切り離されたように壮大で美しい。
わたしはよく知らないのだが、上に行くほど稀少な高山植物も散見されるらしく、晴れた日にはそれらを画像に収めようとする人たちも少なくない。

よくわかんないけど何か貴重かも知れないと思って撮った花
よくわかんないけど何か貴重かも知れないと思って撮った花②

あと、たまたまの偶然かも知れないが、アポイ岳は晴れの日が多い気がする。
わたしは人生で5回登っているのだが、天気が微妙だった日は1日しかなかった。
あとは大概ド晴れ空である。
いや、うん。これはまあ偶然かも知れないね。
ともあれ晴れた日には以下のような絶景に
お目にかかれる山なので、ぜひ善き日を選んで登ってください。

見ろ。人がゴ( )
X用に撮ったオシャレ気取りの1枚
モン○ルの広告みたいになってる同僚
水平線が地球の円さを証明するパノラマ
これは去年登ったとき。薄曇りだった。

◇魅力⑤ アレの目撃情報が割りと少ない。

北海道の山に登るにあたって、アレとの遭遇率が低いことほどの魅力はあろうか?
いいや、あるまい。
思わず反語的表現になるほど、アポイ岳ではアレの目撃情報や被害情報を聞くことが少ない。
初めて登った時は「向こう10年は目撃情報ないよー」とすれ違ったおじさんが言っていた。
去年の7月に行ったときは、5月に目撃情報があったと言っていた。
しかし毎日誰かしらの登山客が登る人気のスポットとしては、やはり少ない方ではないかと思う。
基本わたしはアレがたくさん出るらしい山には今後一生絶対に行く気がないので、これがアポイ岳を推すもっとも大きな魅力のひとつとなっていることはお解り頂けることだろう。
ちなみに、登山にハマりかけて間もなくの頃、地元山岳会の方にお話を聞く機会があった。聞けば、近々某山の山小屋のごみ拾いイベントがあるので参加者を募集しているという。
いい機会だし!トレーニングにもなるし!他の山も登ってみたいし!ぜひ行きたいです!とまでは言ったものの、念のため「あの…その山って…く…熊と会ったりすることは…?」と恐る恐るお尋ねしたところ、満面の笑顔で「前回行ったときは5回遭ったよー」と言われたので、即座に行くのはやめにした。
これに比べればアポイがどれほど魅力的かが伝わったのではなかろうか。
ただし、出ないとは言っていない。
アレよけの鈴やアレ撃退スプレーはあるに越したことはありません。
しっかり準備していきましょう!

はい。
そんなわけで、ここまでアポイ岳について語ってきましたが、少しは魅力が伝わったでしょうか?
実際は、途中までの絶景に比べると頂上の景色は些かショボいので、7合目くらいまで登ればアポイ岳の絶景は楽しみ尽くせることでしょう。
初心者かつ運動不足の我々でも、初めて登った時でさえ、登山口から往復5時間ちょい。
朝早めにつけば、帰りは浦河町の八雲で美味しいラーメン食べたりできる時間だね。

そうだ。
あと特に女性の方には注意事項がひとつ。
トイレの準備はしてった方がいいです。
往復5時間の途中にはトイレがない。
わたしは前回の登山時、頂上でうっかり友人がくれたコーヒーを飲んでしまったため、帰りの7合目付近で不意に尿意をもよおし、そこから地獄を見る羽目になった。
何しろトイレがない。まさか天然記念物がわんさと眠る自然遺産の宝庫で「ちょっと失礼」などと野に我が分身を放つわけにも行かない。
結局のところ、わたしは事態がよく呑み込めていなかった夫と自分の友人に「すまん…先に行く」とハードボイルド調に言い残し、人生最速のトレイルランニング状態で大学生とおぼしき若者たちも、登山中級者のナイスミドルたちもぶち抜き、夫たちより40分も先行して下山したのでありました。

登山を始めてから、わたしは毎度必ず1,2回は軽い転倒を経験していたのだけれど。
この時ばかりは一度も転ばなかった。

何故って、転んだら漏れるからな!!

人間、己の尊厳がかかると不可能を可能にするパワーを発揮するものなんだな…
そんなことも、アポイ岳は教えてくれたのであります。
あ、一応5合目に「トイレはないけどトイレとして使ってもいいよ」的なスペースはあるそうですが、行ったことはない。多分携帯トイレとかあればいいんだと思います。
この次は必ず持っていこうと思う。

そんなわけで、これから秋まで、北海道は最高の季節を迎えます。
札幌で美味しいものの食べ歩きも良いでしょう。函館で歴史に触れるのも悪くない。
富良野でラベンダーもいい。知床や釧路で世界遺産もいい。旭川で動物園もいいでしょう。

でも、日高もいいよ!
日高山脈を背に太平洋を臨む、海と山の幸に恵まれた日高。
冬は下手すると内地より雪が少なく、夏は涼しい涼夏少雪の里。
少し山に入れば人や犬より馬が多い変な地域。
そんな日高の屋根とも言うべきアポイ岳。
これからも推していく所存でございます。

それでは、このたびはこの辺で!

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