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◆怖い体験 備忘録╱第9話 虫の知らせ

何となく嫌なことが起こりそうな気がするな、という予感めいたもののことを、俗に『虫の知らせ』なんて言いますね。
皆さんも、悪い夢を見た日などにはどうにも胸騒ぎがしてならない、という経験をしたことがおありなのではないでしょうか。

わたし自身も、そんな経験をしたことがあります。
わたしの場合『虫の知らせ』は不思議な夢や悪い夢となって現れることがほとんどでした。

今宵は、わたしが経験した虫の知らせのお話を、ふたつご紹介していきますね。

まずひとつめは、社会に出たての頃でした。
あれは早朝に見た不思議な夢です。
わたしは夢の中でお風呂に入って身体を洗っていました。
ところが、おかしなことがあります。
身体を洗っているはずなのに、手に持っているのは鋭利なカミソリでした。
それでわたしは、一心不乱にふくらはぎの肉を削いでいたのです。

夢の中では、特に何も思っていませんでした。
ただ、ひたすらにじっと血を流しながら肉が削げて細くなっていくふくらはぎを見つめ、カミソリを使っていました。
そのまま、特にハッとするでもなく、ぼんやりと目が覚めたのです。

ただ、起きたときは全身にびっしょりと汗をかいていました。
何か良くないことが起こりそうな予感が胸の中をざわざわと這い回り、あれがただの夢ではなかったのではないか、という想いが拭えません。
時計を見ると早朝の6時過ぎ。
その時、ちょうど電話が鳴ったのです。

それは、祖父の危篤の知らせだったのでした。


二つ目も、やはり夢です。
あれも確か、明け方の起き抜けに見た夢。

場所はどこか広い会館のようなところで、人がひしめき合っていました。
場の人たちが全身黒づくめであったことで、わたしはそれが誰かの葬儀であることを理解します。
葬儀はちょうどもうすぐ出棺というところで、わたしは誰かに花を差し出されました。
棺に近寄って花を手向けようとしたところで、それが母の葬儀であることに気づき、わたしはハッと目を覚ましたのです。

その当時、父と離婚した母とは離れて暮らしていましたが、わたしは慌てて母に電話をして「あんたの葬式を出す夢を見たよ。気をつけてね」と伝えました。
母は真剣に「わかった」と答え、この話はここで終わると思っていたのです。

3日後の早朝。
父が事故で突然亡くなりました。
昭和生まれの豪傑で、釣りと狩猟をこよなく愛し、たくさんの山男たちの兄貴分のような存在でした。
それが、あっけなく死んでしまった。
あまりのショックでしばらく忘れていましたが、式には参列できないような諸事情で離婚した母と、その後久しぶりに会ったとき、「あんたのあの夢は、お父さんのことだったんだね…」とポツリ言われ、あぁ、あれは虫の知らせだったのか…と思ったものです。

いかがでしたでしょうか?
虫の知らせと言うけれど、一体どんな虫なんでしょうね。
まぁ、直感的に胸騒ぎがする時などは、やはり気をつけるに越したことはないと思います。
みなさんも、虫の知らせを受け取ったことはありますか?
良かったらコメントでお聞かせください。

それでは、このたびはこの辺で。


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