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地上の楽園 (夢のクロニクル)

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日本だけでなく、世界各国の読者に大航海時代の魅力を知ってもらいたくて書き続けています。今、世界は宇宙に向けての第二次大航海時代。未来へのビジョンをも喚起してくれるでしょう。
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記事一覧

マデイラ島の伝説 3

マデイラ島の伝説 3

「恋の病ってやつだね」
「それに加えて、ドーリーってひとは、人一倍多感な女性だったんでしょうね。ロバートの方も、彼女に劣らず情の深い男性だったみたいで、友人たちは見かねて一計を案じた」
「それで誘拐ってことになったんだ? で、ロバートも脱獄させたとか?」
「いいえ。彼女の結婚式がつつがなく終わった後、ドーリーの親族たちはロバートを釈放させてたの。そこで、友人たちは彼とともにブリストルへと馬を走らせ

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マデイラ島の伝説 2

マデイラ島の伝説 2

「この島を発見したのは、ポルトガル人じゃないって、知ってた?」
「いや、知らなかった」クリストバルはフェリパの方を見る。「そうなんだ?」
「ええ、実はエドワード三世の時代に、英国人たちがここに漂着したらしいの」

「このマデイラ諸島の存在そのものについては、すでにローマ時代から知られていたとは聞いているけど…」
「そう。そうして、エンリケ航海王子の命を受けた探検家ジョアン・ゴンサルヴェス・ザルコが

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葡萄牙の海 4

葡萄牙の海 4

《わかった。で、どうしてだったの? エンリケ航海王子は、どうしてもっともっと先へ行きたかったの?》
〈挟み撃ちにするためさ〉
《誰を?》
〈アフリカ西海岸沿いの土地々々を征服しつつあったイスラム勢をさ。そいつらを、こちとら海路を回って背後から攻めるってわけだ。それに、海戦となると、イスラム軍より我らがポルトガル船団の方が数段上だからな〉
《それは、成功したの?》

〈まあ、急くなって。はははは。お

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三人のイサベル 2

三人のイサベル 2

一行の姿が見えなくなるまで見送っていた祖母はうなだれたまま王宮の中へと引き返してゆく。お付の者たちも悄然とその後に従う。
中は薄暗くひんやりとした空気だ。がらんとした空間の果てからヒステリックな女性の声が響いてくる。



可哀そうに、実家に送り返されたブランカは、なんと父フアン2世によってモンカダ塔に監禁されたままだというじゃありませんか。ああ、私、その有様を思い描いただけで胸が苦しく…、ああ

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