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モネの魅力は、その「目」にあり!

上野のモネ展が話題です。モネの絵ってほんとに綺麗ですよね!

『チャリング・クロス橋、テムズ川』


『ジヴェルニーの風景、雪の効果』


描かれているのは家や庭や橋など、ありふれた物事ばかり。ですが作品は輝くように美しく、唯一無二の個性を放っています。

何の変哲もない風景をこんなに美しく描くなんて、モネは一体どのように世界を見ていたのでしょうか。モネの魅力の秘密を一緒に見ていきましょう!

見たことあるけど見たことない

モネの絵は形も輪郭もぼんやりしています。それにより際立っているのが、色彩の魅力です。
本当にたくさんの色が使われているんです!
たとえばこちらの作品を見てみましょう。

『舟遊び』


とっても綺麗ですよね!水面の青も美しいですが、私的注目ポイントは影の色です。

拡大図


青に紫に赤っぽい色まで、いろんな色が見えます。影だからといって安易に黒く塗りつぶしたりしないんですね。影の暗さの中に様々な色を入れることで、逆光の水面に写る反射像をリアルに表しています。

次の作品は、木の根元近くの色に注目してみてください。もちろん、ただの茶色ではありません。

『陽を浴びるポプラ並木』


白みがかったピンクのような色になっています。日が当たってきらきら輝いているようですね。

私たちは、影といえば黒、木といえば茶色、葉っぱといえば緑などなど、つい固定概念に囚われてしまいます。ですがたとえば同じ木陰だとしても、晴れた昼間の街路樹の影と、夕方の水面に映る柳の影では見え方が違うはずです。

モネの目は、そんな微妙な色彩の違いをばっちり見分けていました。先入観を捨て、目の前の景色に丁寧に向き合っていたのでしょう。
モネの絵を見ていると、世界がたくさんの色で溢れていることに気付かされます。

同じだけど同じじゃない

モネは色の変化にも敏感でした。同じモチーフの絵を何枚も描くことで、その変化を写しとっています。

ルーアン大聖堂:西面、陽光


ルーアン大聖堂:日没(グレーとピンクのシンフォニー)


ルーアン大聖堂


構図まで全く同じ、でも作品毎に雰囲気が全然違いますよね!時間帯や天気によって光の当たり方が変わることで、見え方も変化していくからです。同じ場所なのにこんなに印象が違うなんて驚きです。

モネが特に気に入っていたモチーフが睡蓮です。睡蓮の絵は、なんと200枚以上も描いています。



ご覧のとおり、モネは同じような構図の絵を何枚も何枚も描きました(ここで挙げているのはほんの一部です。)。ですが同じものは一つたりともありません。
特定の対象の中にこれほどの違いを見出せる、その観察眼がすごい!
この優れた観察眼があったからこそ、素晴らしい連作を生み出せたのでしょう。

モネが絵にした景色だけでなく、私たちの身の回りの風景も、きっと目まぐるしく変化をしています。季節や空模様のちょっとした変化に気づくことで、いつもの通勤風景も新鮮に感じられるかもしれません。
身近な光景の豊かな広がりを、モネの連作は教えてくれます。

「目にすぎない」けれど

モネの絵に描かれているのは実在する風景であり、モネの目に写った光景がそのままキャンバスに映っているかのようです。そこにはドラマティックな物語も、役に立つ教訓も、大袈裟な演出もありません。その代わり、モネにしか描けない独特の色と光が満ちています。

そんなモネについて、後世の画家はこう言いました。
「モネは目にすぎない、しかし何という目だろう!」

モネがただの風景を特別な作品に昇華できたのは、たくさんの色を見分ける目を、見慣れた景色に変化を見出す目を持っていたからこそでしょう。
モネの目で見てみれば、何気ない日常の中にも美しい光と色が溢れているかもしれません。

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