見出し画像

【日経分析】新常態、オフィス変貌、面積縮小・拠点分散・3密対策、都心空室率、10年ぶり上昇幅。 2020/07/10 日本経済新聞 朝刊 1ページ

【要約】
 新型コロナウイルス感染拡大によって在宅勤務が普及した。企業がコスト削減も見込んで都心のオフィス面積を減らしている。6月末時点の東京都心5区のオフィス平均空室率は前月比0・33ポイント上昇の1・97%と、高水準となった。
 一方、オフィスを縮小する動きだけではない。郊外・地方では新たな需要も出ている。地方では仕事と休暇をかねたワーケーション市場が盛り上がる。
 人が集まり仕事をするオフィスは3密状態が生じやすく感染リスクと隣り合わせだ。座席間隔を広げたり座席数を減らしたりするなどの対応をする企業もある。

【考察】
①不動産業界が新常態で生き残るには?

 新常態において、コンサルタント的な不動産企業が生き残ると考える。
 確かに、オフィスの縮小や退去が進んでいる。しかし、単にオフィス不要というわけでもない。例えば、オフィスを解約した株式会社LAPRASでは、対面コミュニケーションが取れないことでネガティブな影響が出ている(*1)。
 コンサル的な不動産企業として、株式会社ZACが面白いと思った。株式会社ZACは、オフィスの課題解決を通して企業ブランディングや採用力向上・従業員エンゲージメントの向上支援をする企業である。そのHPでは、「これからのオフィス戦略」という専門ページを設けている。「アフターコロナ時代のサテライトオフィスに必要な条件とは?」「当社オフィスの感染症対策実施例と今後の対策案」「オンライン会議やオンライン商談をスムーズに進められるオフィスとは?」など、今求められる記事が掲載されていた。特に3つ目の記事で、オンライン会議なら自宅ですればいいとなるところを、オフィスを中心に考えようとしている点が面白かった。
 オフィス戦略は変化の真っ只中にある。正解は誰にも分からない。だからこそ、不動産業界が企業のオフィスをめぐる課題解決に取り組む需要があるのではないか。

②新常態の企業採用活動
 新常態では、企業が人材確保をする上で、健康管理や安全対策の点で、他社との差別化を図る必要があると考える。
 以前は、駅近くの高層ビルにオフィスを構えていることで優秀な人材が集まった(*2)。しかし、もはや一等地という訴求力だけで人材が集まる時代ではなくなった。優秀な社員に選ばれるためには、健康管理や安全確保が要求される。
 これからは採用説明会のアピールポイントが変化するだろう。説明会で主に伝えられるのは、①経営理念、②事業内容、③働く環境、④福利厚生である。これまでは、③働く環境=オフィスという意味合いが強かったように思う。特に都心のベンチャー企業は「渋谷や新宿の新しいビルにオフィスを設けていること」や「シリコンバレーのようなおしゃれなオフィスであること」を美点として紹介していた。実際、洗練されたオフィスは、その企業への志望度を上昇させた。
 問題なのは、コロナ禍の現状でも、いまだにオフィス写真でアピールする企業が多いことである。担当者の言葉は決まって「今は在宅だが、本来ならこういうオフィスで働ける」。しかし、今の学生が知りたいのは、そういうことではない気がする。
 そこで、アピールの仕方を一歩先に進めるべきではないか。いつ使えるかが不透明なオフィスより、どのように安全や健康を守るのかが重要だ。在宅勤務の割合、在宅手当の種類、出勤の条件、在宅勤務と出勤を併用する場合の交通手当の扱い、社員同士のコミュニケーション手段。これからは、こうした健康・安全対策によって他社との差別化を図っていくべきだと考える。

【用語】
■空席率

賃貸用オフィスビルの総床面積に占める空室の割合。今年2月には1・49%まで下がり、記録上過去最低を更新していた。不動産業界では従来、経験則として5%がオフィスの「自然空室率」といわれる(*3)。

■サテライト型シェアオフィス
 サテライトオフィスとは、企業の本社・本拠地から離れた場所に設置されたオフィスのこと。シェア型やコワーキングスペースも増えている。都市型、郊外型、地方型がある。サテライトオフィスが注目される背景には、労働人口の減少や働く世代の育児や介護の両立問題がある(*4)。

●都市型=主に外回りの営業が帰社せずとも仕事ができるように主要拠点に置かれる
●郊外型=ベッドタウンに置かれ、通勤時間の短縮や介護・育児との両立が目的となる
●地方型=地方自治体が誘致を行う場合もあり、二地域就業によるBCP(事業継続計画)や雇用の促進、自然に囲まれた環境で人間らしい生活の実現などが期待される

■ワーケーション
 リゾート地や地方等の普段の職場とは異なる場所で働きながら休暇取得等を行う仕組み。新たな働き方として注目される(*5)。
 2020年7月には、ワーケションができる宿泊施設を探せるアプリ「Workations(ワーケーションズ)」がリリースされる(*6)。

■フリーアドレス
 社員それぞれが持つ個人専用のデスクはなく、フロアに長机と椅子が設置されているところに、自由に着席場所を選んで仕事をするスタイル(*7)。

【参考文献】
*1「「絶対に必要」と信じたが、解約──コロナ禍で“さよならオフィス”は現実となるのか【#コロナとどう暮らす】」

*2「オフィス、ネットワーク型に、JLL社長河西利信氏、フリーアドレスも増加。」2020/07/07 日経産業新聞 6ページ

*3「空室率―オフィス、コロナ禍前は活況(きょうのことば)」2020/07/10 日本経済新聞 朝刊 3ページ

*4「サテライトオフィスとは?メリットとデメリット、事例を含め解説」

*5「拡大するワーケーションの可能性と課題」

*6「ワーケーションができる宿泊施設を探せる「Workations(ワーケーションズ)」を2020年7月末にリリース」

*7「オフィスにおける「フリーアドレス」とは?~メリットとデメリットを解説~」

パンデミックが収まったらロンドンや中国に芸術旅行したいですね~~~!!!頑張ってお金貯めます!(*'▽')