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東京アダージョ「あれですから」最終回

#1)「喪中だから、仕方ないよねぇ」

「喪中だから、仕方ないよねぇ・・・」
道で急に、知らないおばさんに言われた。
「そうだよね、、ね」
思わず、後ろを振り返っても、自分以外に、周りに誰もいない・・・このご時世だ。
「ね・・」
「そ、そ、そうですよ、喪中じゃぁ、しょうがないですもの」
思わず、あわてて、吃音気味に答えてしまった、ああっ。
「だよねぇ・・・」
と言って涙を流している・・・
そして、こちらをじっと見つづけているのだ。
間が持てなくなって、
「あの、、わかりますよ、それ・・あれですよ」
また、余計な事を言ってしまった、何にも、わかっていなのにだ。
ただ、会話の形になってしまったのでしょうがない。

そして、こちらを目をじっと見て、
うなづくと、小刻みに嗚咽している・・・

信号が、ちょうど良いタイミングに変わったので
「あっ、それじゃ、、、あれですから、失礼します・・」
横向きに会釈して、振り向かないで早足で歩いた。

誰だったんだろう、何があったんだろう・・・
それにしても、午前中なのに、衣装やメイクが、ど派手だった。
何があったかも分からないが、身近に相談相手も居なくて、辛いご苦労が重なったのだろうと思うと、なんだか滲みてきた、、早足で歩きながら何も考えないように、ただ、そそくさと歩いた。

誰でも、いいから、うなづいてもらいたい事ってあるし・・。
それは、数日前の春の陽気だったが、山手線の駅から、ほんの少し入った、、ウィルスの自粛から、誰もいない交差点だった。

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#2)少し前にも、出先の満員のカフェのチェーン店で、突然、
「ホワイトデーのお返しはどうすればいいの」と、急に隣の知らないおばさんに聞かれた事があった・・・
「えっ、、あの、、それって、バレンタインのあれだから、いいんじゃないですか。」
「それが、違うのよぉ」
「あの、誕生日とかに返すとか、旅先に珍しいこれが有ったからとか」
「そこなんだよね、誕生日知らないし、旅行なんか、できる訳ないし・・・」
「う~ん、なんか、あれですね」
「にいさん、若い時なんか、すぐ過ぎるんだから、ほんとに、ありがたいんよね」
「そ、それって、あれですよね」

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#3)そして、いわゆる下町に位置する総合病院の循環器の内待合室でも、ご高齢の方から
「難しい本読んでるねぇ、なんだい、それ」
「いや、そんなんじゃ・・」
「難しい事好きなんだねぇ」
「全然、分かってないですから、ハハ」
「ワッハハ、にいさん、頭いいんだろう、ええっ」
「あっ、いや~、そんな訳ないですから、、見た通りで、あれですから」

いずれにしてもだ、ただ、優柔不断というだけのあれだ。

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(c)Antonio Palmerini

(最後に)このところ、危ういウィルスの影響もあり、どこへ行っても、あれですが、どうぞ、ご自愛くださいませ。

私の記事は、当初はランダムにアップしておりましたが、その後、続けては、今日で、連続投稿は300日目になりました、読者さまのおかげです。最後までお付き合い下さり、ほんとうに、ありがとうございました。

この後も、ランダムになりますが、機会があれば駄文をアップする気持ちも有りますので、よろしくお願い致しますね。

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