Larry Riversの絵画と評価の多様性

ラリー・リヴァース（Larry Rivers,1923-2002 US)
アメリカのアーティスト、画家、ミュージシャン、映画製作、そして俳優も行う。
ポップ・アートの先駆的者だ。ある意味、アンディウォーホルなどのアーティストの前身（祖父）と言われる。
簡単に言えば、抽象表現主義のスタンスと広告の商業的イメージを融合させた。
その業績は、アメリカの大衆文化の日常的なオブジェクトを、自然主義的アートとして再現したという事だろう。
ラリー・リヴァースの作品は、テキストを組み込んでいる作品も多い。
テキストの語彙（ごい：ある特定の範囲において使われる単語の総体）は、メッセージと抽象表現主義の比喩的なスタイルを融合させている。
そして、後期の作品には、性に対する問題点を観る者に投げ掛ける。

(c)Larry Rivers

略歴-Larry Rivers
1923年、ブロンクス（Bronx）、ニューヨーク州で生まれる（ウクライナからのユダヤ系移民）。
空軍除隊（病）後、ジュリアード音楽院で学び、ジャズサックス奏者として活躍した。マイルス・デイヴィス（Miles Davis, 1926-1991）との生涯を通して交流があった。
1945年、絵画を始める。当時は自然主義的なものが多い。
1947-1948年、ハンス・ホフマン美術学校（マサチューセッツ）：そのホフマン（Hans Hofmann, 1880-1966、画家/美術教育者）のもとでは、自然主義からのエクステンション（拡張的に）として、抽象画を制作を始めた。
1947-1951年、ニューヨーク大学（美術）卒業。
1949年、個展-ジェーン・ストリート画廊（Jane Street Gallery）
1950年、フランク・オハラ(Frank O'Hara,1926-1966/作家・詩人)とパリで、詩を通してのコラボレーションを行った。ある意味、パートナーだったといわれる。（性的マイノリティだったという事だろう）
その作品にO'Hara Nude with Boots (1954)がある。この関係は、オハラの晩年（-1966）までつづいた。

1957年、版画工房ユニヴァーサル・リミテッド・アート・エディション（Universal Limited Art Editions）での招待作家。
そして、フランク・オハラの詩とのコラボーレーションである１３点のリトグラフからなる「Stones」の制作した。
1960年代には、ロンドンで、ハワード・カノヴィッツ(Howard Kanovitz,1929- 2009）とジョイントした、それは、その後の作品に影響しているだろう。また、1961-1963年、Marvin Israel（伝説のアートディレクター）により、ハーパーズ バザー（Harper's Bazaar）でも作品は取り扱われた。

・・・・・・
1968年、ラリー・リヴァースはピエール・ドミニク・ガイソー（Pierre Dominique Gaisseau-映画監督）と、ドキュメンタリーアフリカを製作。

(c)Larry Rivers

1970年代から、ラリー・リバースは、エアブラシ、ステンシル、版画、アッサンブラージュ(Assemblage art)を制作している、そして、アンディ・ウォーホルのファクトリーに頻繁に赴いた。その中には、ジャック・ケルアック（Jack Kerouac-小説家・詩人）もいた、そのテキスト（語彙）もあるかも知れないが、当初（-1966）からは、フランク・オハラの影響がテキスト（語彙）については大きかっただろう。その1970年代には、ラリー・リヴァースは、ヴィデオも多数制作している。作品には、性に対する問題点も抱えていると言われるが、「Growing」（10代の娘の身体の発達を記録、それは児童ポルノと呼ばれた）などは、多くの非難を浴びた。それらの作品は、性的タブーを破壊しているのだろうか・・・観る者に投げ掛けるのだが。
2002年、ワシントンDCのCorcoran Gallery of Artで大規模な回顧展が行われた。
ラリー・リヴァースは、ニューヨークで2002年8月14日に亡くなった、78歳だった。

多様な問題を抱えて、多様な問題を投げかけた作家だ。

後期の作品には、非難の声もあがるが・・・ただ、はたして？現代だと、どうだろう、美術史は後から、語られると言うことだろう。

初期の代表作の１つとして「デラウェア川を渡るワシントン将軍」(Washington Crossing the Delaware-1953,MoMA(Museum of Modern Art)等の作品がある。
これは、エマヌエル・ロイツェ（Emanuel Gottlieb Leutze)の絵画からのエクステンション（拡張）だ。

（註）ハワード・カノヴィッツ（Howard Kanovitz,1929- 2009 US）：画家・写真家、抽象的な表現主義からコンピューター・イメージングまで最前線の作家だ。「フォトリアリズムの祖父」と呼ばれた。