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炎に生きるオトコたちの匠

2年に1回開催される、ヨーロッパ鍛冶職人芸術祭。今年24回目。48年間も続いてる、息の長いイベント。初めて知り、行き、見てきた。

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着いたのはお昼頃。鳥の鳴き声と川のせせらぎの音で、心は癒されるけど、鍛冶屋独特の、鉄を打つ音、カンカン、コンコン、カンカンが聞こえない。

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誰もいない静寂な鍛冶場や街は、一瞬にして人類が消滅したような、シュールな世界。

しばらく歩いて、やっとわかった。職人達は方々へランチに出かけ、鍛冶場は、もぬけの殻状態だったのだ。

いいねえ、このユルさ。

そういえば、いた、いた。ビールや、ワインを飲んで、ソーゼージや牛肉のグリルを豪快に食べていた、おじさんたち(若者もいたよ)。

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14時を過ぎたあたりで、ようやく鍛冶場から音が聞こえてきた。

鍛冶屋の職人は、かっこいい。

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石炭が真っ赤に燃えて、火花を散らしているところに、鉄を温めては打ち、打っては火に戻す、の繰り返し。

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あんなに硬い鉄が、ハンマーでガンガン打ちつけられて、平たくなったり、丸くなったり、少しづつ形が整えられていく。鉄は熱いうちに打てとは、よく言い当てたものだ。

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鍛冶屋の職人達は、お腹は少しポコっとしているのに、上腕二頭筋や三頭筋がガシっと引き締まり、熱い炎を背に、汗水たらし、ローマ神話に登場する火の神、ウルカヌスの魂が宿っているみたい。

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ウルカヌスの英語読みはヴァルカン。火山、volcanoヴォルケーノの語源になった神様です。

このイベントは、トスカーナ州の山奥カゼンティーナ地方のステイアという小さな町の住人が一丸となり、イベントを盛り上げています。

鍛治職が減少していたのを、食い止められないかと、1976年に発案を受け実施されることになったようです。国際コンクールも開催され、人材育成のための学校も町内にあります。

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オーストリアとかドイツからも参加していて、チームで一つのオブジェを作っていた。全身タトゥーだったり、半分坊主だったり、長髪くんだったり、ロッカーでワイルド。作っていたのは、花のオブジェ。このアンバランス感もいい!

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鍛冶屋の歴史は古い。日本では日本刀を作る職人を刀工(とうこう)と呼ぶ。包丁を作る鍛冶屋も活躍している。新潟の燕三条で包丁職人の技を見学したことがあった。歴史と文化を継承する匠の仕事、素晴らしいの一言。

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フィレンツェで鍛治職人連盟が発足されたのは1379年。

洗礼堂が立つドゥーモ広場の辺りに鍛冶屋が密集し、当時はスッキエッリナイ広場、ねじ切り広場と呼ばれていたそう。

当時の鍛冶屋では、ネジ、鋤(すき)、ハンマー、鍬(くわ)、板戸、斧、ハサミ、ナイフ、etc… 生活に関わる鉄製のものを一手に引き受け、馬の蹄鉄も彼らの仕事のうち。

いまでも、フィレンツェの街を歩くと、炎に生きるオトコたちの匠を、そこかしこに見つけることができます。硬い鉄から、こんなにも繊細で優美な曲線が作り出せれるものかと感心することしきり。

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機能性と同じくらい、美しさに敏感で、生活のなかに豊かさを自然に取り入れていた当時がちょっと羨ましくなります。

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