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【#50】材料力学の強化書 〜引張りや曲げにおける弾塑性変形〜

今回のトップ画像は、オーストリアのウィーンの風景です。道中で見かける全ての建物が歴史的建造物のように見えますね。こうして過去の証跡を残しながら、近代的な風景と合わせてデザインを考えるのは、なかなか大変なものかもしれません。

さて、材料力学の話に戻りましょうか。

前回は弾塑性体の基本的な構成式(応力とひずみの関係を示したもの)を紹介しました。材料ごとに導出された構成式も存在しますが、まずはこれらの構成式をスタート地点として理解を進めました。

今回は単軸引張荷重を受ける棒や、曲げモーメントを受けるはりにおける弾塑性力学について考えます。材料力学は弾性変形を前提とした話でしたが、それがどのように弾塑性力学の話に発展するか見ものです。

棒の静定問題

まずは、剛体天井に固定された一様断面の棒について考えます。この棒の自由端で鉛直下向きに引張荷重が作用したとき、この棒の荷重と伸びの関係を求めてみましょう。材料は弾完全塑性体とします。

棒には垂直応力が生じます。垂直応力が降伏応力に比べて小さいとき、棒に生じる伸びはフックの法則より、

$${\lambda=\frac{Pl}{AE}}$$

となります。これより、引張荷重について求めると、次のようになります。

$${P=\frac{AE}{l}\lambda}$$

引張荷重が増加して垂直応力が降伏応力に達すると、引張荷重は次の通りとなり、棒は際限なく伸びます(棒が引張荷重に耐えられなくなります)。

$${P_U=\sigma_y{A}}$$

以上を整理すると、荷重ー伸び線図が描けます。

曲げを受けるはりの弾塑性変形

次に、長方形断面を有するはりの弾塑性変形について考えます。前と同じく弾完全塑性体を仮定します。弾性変形の場合は既に説明した通りです。

曲げ応力の最大値ははりの表面で生じます。つまり、はりの表面の曲げ応力が降伏応力に達すると、表面から中立軸に向けて塑性領域が広がります。

弾性領域と塑性領域が混在する場合は、弾性領域と塑性領域で曲げ応力(関数)が異なります。それぞれ分けて積分することで、曲げモーメントを求めます。中立面に対して曲げ応力の分布が対称であることから、片側の積分計算の結果を2倍する操作を入れます。

はりが塑性崩壊するときの曲げモーメントは次のようになります。

$${M_U=\sigma_y\frac{bh^2}{4}}$$

曲げモーメントとはりの変形状態を表す曲率半径(逆数表記)の関係を描くと、上記の通りになります。

おわりに

今回は単軸引張荷重を受ける棒(静定問題)、曲げモーメントを受けるはりにおける弾塑性力学について確認しました。

本来であれば、材料力学の範囲は弾性領域に限られますが、塑性力学の問題に拡張することで、また新たな側面が見えてきたと思います。

塑性崩壊条件については、弾塑性変形を許容した設計において非常に重要な概念とされています。今回の計算の流れをきちんと理解しておきましょう。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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