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台風制御に向けた取り組み 〜タイフーンショット計画〜

台風は人類にとっての「脅威」ではなく、エネルギーをもたらす「恩恵」へ変貌する。物語ではなく、将来的に実現させるべく、研究活動を推し進めている組織があります。

横浜国立大学の台風科学技術研究センターを拠点に進められている「タイフーンショット計画」です。

毎年のように日本を直撃する「台風」は様々な被害をもたらします。近年の地球温暖化の影響で、その影響はより強まっています。

そんな問題を解決する可能性のある「タイフーンショット計画」について、今回は紹介したいと思います。

気象制御の経緯

気象を人工的に制御するという構想は、夢物語に聞こえるかもしれませんが、現在では世界単位で科学的なアプローチが行われています。人工降雨の取り組みはその良い例のひとつです。

台風制御の例は少ないですが、アメリカでは古くからハリケーンの制御の研究が行われてきました。例えば、ハリケーン「デビー」にヨウ化銀を散布したところ最大風速が3割近く減少したそうです。

このヨウ化銀を散布する方法は、当時は十分な検証ができず、途中で打ち切られます。しかしながら、その後の科学技術の発展により、台風のメカニズムについての理解が深まります。同時に、スーパーコンピュータなどの台頭でシミュレーションの精度が向上し、台風制御の効果を確認できるようになりました。

さらに、台風制御の前提として、高精度の台風予測が不可欠です。昨今では国内で台風の航空機観測が行われるなど、シミュレーションと実地観測の両面からアプローチが続けられています。

台風制御の実用案

台風をコントロール(制御)するため、まずは台風がどのようなメカニズムで成り立つのかを理解する必要があります。

台風のエネルギー源は水蒸気です。強い風が吹き込むことで、水蒸気が台風の内側に運ばれて上昇し、凝結して雲になる時に熱を放出します。

このとき、暖気核と呼ばれる暖かい領域が内部に作られます。暖気核が発達すれば、吹き込む風が強くなり、さらに水蒸気を運んで暖気核の温度が上昇します。これらの相乗効果によって台風は発達します。

これに対して、現在研究を進めている段階ではありますが、航空機を利用して水やドライアイスなどのインパクト物質を台風の上空から暖気核へ散布することで、暖気核を冷やす方法が提案されています。

令和元年に発生した台風第15号(房総半島台風)を対象としたシミュレーションでは、上記物質を散布することで中心気圧が3〜5hPa上昇(台風が弱化)して風速が明確に低下することが分かりました。

これは建物被害に換算すると、台風が通過した神奈川県で実に4割ほどの軽減効果があることになります。

台風発電の実験

タイフーンショット計画では、台風を制御するだけでなく、台風のエネルギーを用いて発電を行うことを目指しています。

例えば、台風左側(可航半径)の後方で台風の横風を帆で受けて台風の移動と同じ速度で帆船を航行させ、海中のスクリュープロペラを回すことで、発電するというものです。

この手法はプールなどの縮小模擬実験で検証されています。また、遠隔操船についてはすでに実証実験の段階に来ていて、実現の可能性は十分にあるそうです。

発電した電気を陸域まで輸送する方法については、海水を電気分解して得られた水素を輸送する方法や、船底の蓄電池に蓄電し船で陸域まで輸送する方法などが考えられています。

台風は人類にとっての「脅威」ではなく、エネルギーをもたらす「恩恵」へ変貌する。冒頭でそのように書きましたが、台風の強さを逆手に取ったこのアイデアは自然災害の多発する日本において良い影響をもたらすものと言えそうです。

おわりに

私は千葉県という台風の影響をあまり受けない地域に住んでいるので、想像することしかできませんが、この研究の実現により、日常の平穏を完膚なきまでに破壊する悪夢を繰り返さずに済むのです。

今はまだ十分に認知されていないアイデアではあるものの、社会的な認知が広まることで、この研究活動がとてつもなく社会に貢献し得る新常識であるか知られるようになるでしょう。

この研究活動がインパクトのある存在として、世に広まることを期待したいと思います。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに寄り添えたら幸いです。何卒よろしくお願いいたします。

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