会いたかった。
「龍二が... 自殺した」
親友とは小学生のときから仲が良く、
付き合いも長い。
だから、彼女の声のトーンでわかる。
今から悪いことを伝えようとしているのだと。
しかし、
一瞬たりとも想像していなかった言葉が飛び出した。彼女の弟が死んだというのだ。
龍二は今年の9月に24才になったばかり。
わたしより7つも年下なので、わたしにとっても可愛い弟という感じだった。
コロナで、親友とも龍二とも2年間会っていない。
親友はその間に双子を出産。
一方、龍二は 仕事で悩んでいたという。
今年の春に「俺、鬱かも」と言っていたらしい。
そして先月、自殺した。
「どうして.. 龍二が悩んでいるってこと言ってくれなかったの..?
わたしに言ってくれたら、何かできたかもしれなかったのに..」
と、悔しさと絶望の中で必死に訴えたが
親友は双子の子育てで精一杯で、龍二のことを考える余裕もなく、ましてやわたしに龍二のことを報告したり相談する時間もなかったとのこと。
わたしには子供がいない。子育ての大変さはわからない。
だから、そう言われたら.. なにも言えず、わたしはただ耳に当てているスマホを強く握った。
龍二は姉である親友と両親に
助けてのサインを しっかり出していた。
だけど、それぞれに
それを救い上げる余裕がなかったのだ。
もしも、龍二にわたしの連絡先を教えていたら
助けてほしいと連絡がきただろうか。
頼ってくれていただろうか。
いつでも会えたから。
すぐに会えるから、連絡先を交換するなんて発想もなかった。
2年前の夏、わたしが親友の実家に遊びに行き、帰ろうとしたら
車の免許を取ったからと龍二が家まで送ってくれた。
「送ってくれてありがとう!またねー!!」
と手を振ると、龍二も満面の笑みで手を振り返してくれた。
それが 龍二との 最期になるなんて。
人は、簡単にいなくなる。
失ってから後悔しても もう遅い。
わたしよりもずっと若く、優しくて可愛い龍二が もうこの世界に存在していないなんて、信じることができない。
ただ、ひたすら、
わたしはあなたと もっと一緒にいたかった。
コロナが終わったら、
また当たり前に 会えると思っていたよ。
会いたかった。
いただいたサポートは創作活動の費用に充てさせていただきます。