見出し画像

Chips|アートってどう見ればいいの?

この前、美容室で美術館に行くと話したら「絵ってどう見ればいいんですか?」と聞かれたんですね。非常に返答に困りました、そもそも床屋の会話が苦手ですが。
いきなりハイレベルな鑑賞は要求できないけれど、あまり知識も興味関心もないまま見ても楽しくありません。何より美術のことを嫌いになってほしくないので、「知識があればもっと楽しめるけれど、色がキレイとか犬がカワイイとか、好きに見ていいんですよ」と答えました。

皆さんはどう答えますか?
これがベストではないけれど、アートビギナーさんにどのようなアドバイスができるか考えてみました!(上から目線ですね)

【どんな展覧会に行ったらいい?】

一般的に「〇〇美術館に行こう」ではなく「〇〇展に行きたいな」と来館する方が多いと思います。それでは、どうやって展覧会を選ぶと良いのでしょうか。

2023年夏〜秋の気になるラインナップ
コルクボードなどに貼っておくと、オシャレかつ忘れない

●チラシをチェックする

一番ベタな方法が、美術館に置かれたチラシです(公共施設や観光案内所などにもあり)。大体A4サイズで、展覧会タイトル、会場、会期、展覧会の概要、作品の写真が掲載されています。そうしたチラシやアート情報サイトのウェブサイトなどをチェックすると、どのような展覧会が開催されているかわかります。
他にも駅のポスター、電車内のディスプレイやテレビCM、美術館や展覧会のSNSなどで、情報を得られることもあります。

デザインが素敵なチラシや気になる作品があったら、ぜひ週末のお出かけ候補に。
チラシを家に持ち帰って検討もできますし、ウェブサイトで詳細情報を、SNSやブログで口コミを見てから決めても良いでしょう。

オススメのウェブサイト

●好きなジャンルから入る

自分が好きなコト・モノをテーマにした展覧会はいかがでしょうか?
マンガ好きならマンガの原画展、ネコ好きならネコをテーマにした企画展など、もともと好きなジャンルなら興味を持って見られるでしょう。

以前、「ブルーピリオド」をきっかけに美術に興味を持ったという方におすすめの美術館を紹介する機会があったのですが、うまく芯を捉えられた感じがしなかったんですね。(友人経由でやり取りしてたこともあるのですが)
初心者向けの美術館ではなく、マンガ展をよく開催する美術館をオススメしたほうが良かったかなと反省しています。

●初心者向け・子ども向けの展示に行く

知識や経験があまりないという点では、大人も子どももスタートラインは同じです。夏休み期間に開催される「動物大集合」のような子ども向けの展示、「〇〇入門」「〇〇教室」といったネーミングの展覧会であれば、ユニークでやさしい解説になっているはず。
お子さんと一緒に展覧会を楽しんじゃうのも手です! 子どもと大人、同じ作品でも違う視点から鑑賞できて、効果も2倍で大変お得。

子ども向けと銘打っていない展示でも、ジュニアガイドワークシートなどを配布しているところもあるので、それを手がかりにするのもオススメです。作家のプロフィールや鑑賞のポイントが、わかりやすく紹介されています。図録を買うほどじゃないけど、まとめ的なものがほしいときにも。

●推しの音声ガイドを聞きに行く/グッズやカフェを目当てに行く

最近は人気の俳優さん・声優さんが音声ガイド担当していたり、ナビゲーターとしてメディア出演したり、テーマソングがつくられることもあります。
推しが関わってるから行くのもアリです。美術館も新規層獲得を狙ってのことなので、安心して不純な動機(推しへのピュアな愛)で来てください!

展覧会の限定グッズや限定メニューが来場の決め手になることもしばしば。
すみっコぐらしやポケモン、スヌーピー、ミッフィーといった人気キャラクターとのコラボグッズが販売されることもありますし、ファッション通販のフェリシモやミュージアムショップ運営のEast、文房具メーカーのGreenFlashから、おしゃれなグッズも多数出ています。
展覧会を鑑賞した後、併設のカフェやレストランで限定メニューをいただくのもスペシャルな体験です。

グッズはオンラインで購入できる場合もありますが、展覧会も観てほしい!
「作品は好きだけどグッズがイマイチ」「作品には興味を引かれなかったけどグッズはカワイイ」といったギャップがあるのも、おもしろいです。

フェリシモ ミュージアム部さんのnoteはこちら

【どのように作品を見ればいい?】

気になる展覧会や作品がみつかったら、美術館へGO!
ここでは具体的な注目ポイントではなく、鑑賞スタイルに絞ってご提案します。

ヴォルフガング・ライプ《ミルクストーン》(1995-1998)@森美術館
大理石の表面に牛乳が注がれ、表面張力でこぼれずにいます

●各章のテーマを把握する

基本的には、各章のパネルに鑑賞のヒントが書かれているので、それを手がかりに作品を見ていくと良いでしょう。
会場には100〜200点もの作品が、章立てに沿って展示されています。例えば今季の展覧会では、マティス展(東京都美術館)は年代順、大阪の日本画展(東京ステーションギャラリー)ではテーマ・モチーフ別の章立てです。各章のパネル解説を見ると、前者であればその年代の作家の状況(引越した、結婚したなど)や作品の特徴、後者であれば作家ごとの作風の違いなどがわかります。

ちなみに、順路に沿って鑑賞するとわかりやすいですが、空いているところから鑑賞すればストレスも少ないですし、一通り見た後に(他の鑑賞者の邪魔にならないように)逆走すると新しい発見ができるかも。

●予習をしておく

美術はわからないのが楽しいところもありますが、わからないと楽しくない!という方は、事前に予習しておく良いでしょう。展覧会や美術館のウェブサイトやチラシ、展覧会に合わせてテレビ特番雑誌の特集が組まれたり、YouTubeTikTokで解説やガイドツアーが配信されていたり。
知識や経験といった引き出しの数だけ、鑑賞体験も深まります。

私も映画や舞台など詳しくない分野を鑑賞するときは、ネットで予習したり、感想ツイートを見てチケットを買おうか悩んだりします。

オススメYouTube

●音声ガイドを借りる

事前に予習をしていなくても、音声ガイドがあれば大丈夫。会場入口で専用ガイド機(650円)を借りるほか、スマートフォンのアプリ(入場料込み or 別途有料)から利用することができます。作品の解説はもちろん、作家のインタビュー音声や関連音楽、ラジオドラマ風のコンテンツが聴けることも。

自分のペースで観たい方には向きませんが、よく知らない作家や時代の展覧会の時や会場が空いている時などは、借りてみるのも良いでしょう。

音声ガイドの大手、アコースティガイド・ジャパンさんに取材したシリーズ

●友達になるつもりで長所を探す

「その服似合っているね」「丁寧に字を書くね」なんて言われると、自分のことを見てくれてるんだなと嬉しくなりますよね。そう、相手のいいところを探すには、よく観察することが大事なんです。
友達になるつもりで、この作品はどんな子なのか、よく観察してみましょう。きっといいところ、すごいところ、苦手なところ、好きなところが見えてきますよ!

●友達と会話をしながら観る

私はひとりでミュージアムに行くことも多いのですが、興味のありそうな友達がいれば誘って一緒に行きます。誰かと行くと意見交換もできるし、詳しい人なら質問もできるし、科学館にありがちな体験型の展示も怖くない!
そもそも「友達とお出かけ」というだけで楽しい思い出になります。

美術に詳しい・興味のある人でなくても、最低限、抵抗感のない人なら大丈夫。「ここ行ったことある!」「おいしそう」のような他愛もない会話でも、気にせず盛り上がってください。ただし、声のボリュームは控えめに。

大事なのは、自分が楽しむこと

川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアムではしゃぐ筆者

美術館・博物館と聞くと、「お勉強しなければ」「私に理解できるだろうか」と身構えてしまう方も多いことでしょう。けれど、「きれいなものをみた」「面白い体験をした」で良いのです!

もちろん、ミュージアム(登録博物館、博物館相当施設、博物館類似施設など)は第一に資料の保存・収集や研究、教育のための場所ですが、展覧会やイベントの開催も重要な活動です。それは、なぜ大切に保管し残していかなくてはならないのか、その資料・作品の魅力や価値を知ってもらうためです。お金も時間も人手もかかるミュージアムを存続させるためにも、そういった魅力や価値を示して、行政・市民の理解を促し、未来のファンや研究者を育成することが大切なのです。

スポーツ選手も科学者も「好き!」「楽しい!」「面白い!」という気持ちをきっかけに、その道に進むもの。アート鑑賞も、それが第一歩です。

私は大学で美術史を勉強していましたが、展覧会に行っても「〇〇という作家は〇〇派で、こういう技法で」と情報で見てしまい、感動できなくなった時期もありました。大好きな美術に触れても楽しくないことが辛かったので、鑑賞深度はどうであれ、自分が楽しめるのが一番だと思います。

アート鑑賞について、さまざまな言説はあると思いますが、個人的には「考えるな、感じろ」派です。もちろん考えながら味わうこともありますが、どういう印象を受けるか、どういった感覚になるかは人それぞれで、だからこそ大事にしたいのです。
一方で、「子どもでも描ける」「落書きと何が違うの?」と言われると悲しいので、そう思ったときは章の解説や作品の説明を読んで、何を表現したかったのか、知ろうとしてほしいなと思います。

何より入場料がかかるのにつまらなかったら、もったいない!
せっかくなら全力で楽しい思い出にしちゃいませんか?


よろしければサポートをお願いいたします。いただいたサポートでミュージアムに行きまくります!