⑮映画『PERFECT DAYS』繰り返しと変化について
とにかく観た友人たちの評判がすこぶるよかったので、ずっと気になっていました。間に合ってよかった!
*ネタバレ含みます。
日々繰り返されるルーティン。
派手さも“ばえ”もなく淡々と送る日々は、でも、なんて美しいのだろう。
その美しさは多分、規則正しい一定のリズムから作られている。
平山の一日、トイレ掃除のやり方、一週間の過ごし方。
過去でも未来でもなく、「今」に集中すると、こんな風に安定と安心に身を置けるのかな。
繰り返しは退屈なのか、安らぎなのか。
それを選択するのは自分自身。
でも、この生き方を手に入れるまでに、きっと彼はとてもとても大変な思いをしたであろうことがうかがえます。
そう、まさに“うかがえる”のです。
人との距離感、仕事や物に対する細やかなふるまいといった描写が、多くの言葉で語られるよりも雄弁に彼がたどってきたであろう道のりを思わせます。
「平山という男は、まるで木のようだ。」
公式サイトで、作品内で出てくる1冊『木』(幸田文著)を紹介する一文です。
種を落としたその場所で、根を生やし、一生動くことなく生きていく様子は、一見変化とは無縁のよう。
けれど、光の動き、虫や鳥たちとの共生、何かしらの病原菌の対処など、実はダイナミックに葉や枝の茂らせ方を変えたり、近隣の植物たちに信号を送ったりと、多様に、臨機応変に変化しているのです。
淡々とした日々のなかで、彼が心をむける空や木や人との小さな触れ合いが、木の幹を通る水のようにみずみずしいと思いました。
「木漏れ日」も彼にとってのみずみずしさのひとつ。
木漏れ日、日本の言葉だったんですね。あの光に名前をつけた日本人の感性!
そしてね、ラストシーンですよ。
この5分間を大画面で味わえただけでも、映画館に足を運んで本当によかった。役者、役所広司のすごさ。この一言につきます。
今回、隙間時間にかけ込みで観に行ったのが日比谷シャンテ。
ここ10年以上行ったことがなかったのに、先月の『落下の解剖学』に続いて2度目とは、何たる偶然。
そう、そして日比谷シャンテと言えば30年以上前に初めて観た映画がヴィム・ヴェンダース監督の『ベルリン天使の詩』でした。
この時は、「???」が頭のなかにいっぱい。
彼の世界観を感じるにはタイミングが早すぎたようです(笑)
満を持しての今回は、最高の出会いと相成りまして、成長ともとれる自分の変化がなんかうれしかったな。
先日の『わたしの叔父さん』とあわせて届けられるのは、「日常」「変化」というワードたち。
小津安二郎監督をリスペクトする監督によるデンマーク発の物語。『PERFECT DAYS』お好きなかたにはこちらもおすすめです。
何か今目の前の、すでにあるものの見方を捉えなおすような、そんなヒントをもらっているような気がしています。
#映画感想 #パーフェクトデイズ #100チャレンジ #ヴィム・ヴェンダース
#日々の暮らし
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