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~読むアロマ~「人間失格」太宰治

物語の世界観を香り(精油)で表現する「読むアロマ」。「読むアロマ」は、思わず手に取ってしまう美しい装丁のように、イメージを香りでデザインしたもの。物語と、精油が持つ香りや働き、様々なエピソードをつなげて、オリジナルのアロマブレンドを作ります。

新旧、ジャンル問わず、好きな物語、気になる話をランダムにピックアップして、作った香りのご紹介です。


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人間失格 太宰治

「ゆさぶられる」

読みはじめてすぐ、「このまま読み続けてだ大丈夫かな」とちょっと不安になりました。頭のなかを根こそぎもっていかれないように、お腹にしっかり力を入れて読みました。

主人公は物心ついたときから、他者に対して違和感をもち、孤独と疎外感に苦しみながら生きています。

俗世間の偽善やエゴ、悪意にさらされるたび、その弱さ、その繊細さ、その純粋さゆえに、自分自身を傷つけ、落ちていきます。

それでも、人の持つ清らかさ、美しさをどこかで信じている、信じたいと思っているその姿に涙しました。

戦後の混迷期に描かれた生きづらさが、現代に生きる私たちが抱えるものとなんら変わりなく、その痛みは、国や時代を越えて、読む者の魂に訴えかけます。


主人公が悪友と言葉遊びをするシーンに、同義語(シノニム)と対義語(アントニウム)を議論する場面があります。

花のシノニムは月

黒のアントは白

では、罪のアントは?

神、救い、愛、光、祈り、悔い、告白・・・

「罪のアントがわかれば、罪の実体もつかめるのに」


<読むアロマ「人間失格」ブレンド>
・レモン
・ローレル
・ローズ
・フランキンセンス
・サンダルウッド

生きるという根源的な問いに対する香りとして、フランキンセンスとサンダルウッド。

求めてやまなかった信頼、愛を象徴するローズ。

普遍性のシンボルにローレル。

そして、光を感じさせるレモンを。


己の全存在をかけてこの物語を綴った作者に、ありったけの「罪のアント」を。

そんな思いを込めたブレンドです。


#読むアロマ #読書感想文 #太宰治 #人間失格 #アロマセラピー #香り


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