小説・成熟までの呟き 49歳・2

題名:「49歳・2」
 2039年秋、美穂の息子の健は休日だったので、実家の農園にいた。健は高校2年生で、将来について考えていた。父親の康太に対して、話を切り出した。「お父さん、僕高校を出たらこの農園を継ぎたい。」すると康太は、「うーん、今のままでは難しいかな・・。」と答えた。健は、「えっ、どうして?」と動揺していた。すると康太は、「農園経営って、単に作物を育てればいいってわけではない。その作物をオリーブオイルなどに加工したりして、第一次産業を第二次産業に変換していく戦略を持たなければならない。それにカフェの運営や販売経路のような第三次産業に変換していく道筋も築かなければならない。要は、総合的で多様な見方をして運営全体を考えていかなければならないんだ。康太にはそういうノウハウはあるか?」と尋ねた。康太は、「えっ?わからない・・。どうすればいいの?」と尋ねた。すると康太は、「だったら、明能大学の農業経済学科に進学しなさい。そこでなら、農園経営に関して多角的な視点で学べる。学んだことはこの農園で活かせる。詳しいことは、卒業生であるお母さんに聞いてみればいい。」と答えた。その後、健は美穂に、その学科について聞いた。美穂は自分が卒業した明能大学農学部農業経済学科について述べた。「私は最初の頃、農業は食に関するイメージしかなかった。でも水田が環境保護に貢献しているように、農業には多面的機能があって驚いた。その後、農業は単に作物をつくるだけではなくてそれを加工して販売していくように発展していうことを知って、農業にある奥深さを感じたんだ。それに、同級生には農園の跡継ぎとか全国からいろいろな学生が集まっていて、それがとても刺激になったなあ。今になっては、そのときにもらった言葉が励みになっているなあ。私も、もし健がこの農園を継ぎたいっていう気持ちがあるならそこに進学すべきだと思うよ。」その意見を聞いた健は、再び康太と会話し大学に進学したいということを述べた。すると康太は、「俺、いずれはこの農園の経営から離れようと思っている。そして、モノレールの経営に参画しようと思っていてね。高齢化が課題になっているみたいで・・。島唯一の鉄道だから、モノレールが無くなったら過疎化が進むと思う。だからなんとしてでもこの公共交通をまもらなきゃいけないって思っていてね。だから健には、この農園を継ぐならしっかりとした考えを持って運営する経営主になってほしいんだ。だから自分のできる範囲で頑張ってほしい。受験のためにやる勉強はきっと生きていくための勉強じゃなくて好きな学問を究めるための勉強だと思う。でも無理しちゃだめだよ。」と述べた。そして、健は未来に向けて進んでいくことになる。

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