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【決定版カーネギー】道は開ける

D・カーネギー 著
新潮社
304p
1,400円

目次
1.不安と悩みが消えない人へ
2.すべての問題は消去できる
3.自分を壊さないために
4.幸せになるための科学的方法
5.もう絶対に悩まない
6.あなたはなぜ批判されるのか?
7.心の疲れよ、さようなら

イントロダクション

だれもが不安や悩みといった問題に直面するが、私たちの多くはその正しい対処法を知らない。しかし、本書は、ほんの少しの行動で人生は劇的に変わるのだということを私たちに教えてくれる。本書は、世界で最も有名なビジネススキルの指導者であり、対人スキル開発の先駆者であるデール・カーネギーの代表的著作として1948年に出版され、双璧をなす『人を動かす』とともに、世界的ベストセラーにして史上最高のビジネス・自己啓発書の一つと言われている。アメリカで見つかった貴重な初版本から、重要な部分をセレクトして再編集し、画期的な新訳と見やすいレイアウトで現代に甦らせたのが、今回の「決定版」である。「あらゆる悩みから自由になる方法」の数々が具体例とともに示され、カーネギーの考える「人生の成功」を得る方法が明確に述べられている。

過去と未来を鉄の扉で閉め出し、今日だけを見て生きよう

 1871年の春、将来を変える言葉に出会った医学生がいた。後に最も有名な医師になる彼の名は、サー・ウィリアム・オスラー。ジョンズ・ホプキンス医科大学を設立し、大英帝国での医師の最高栄誉オックスフォード大学欽定医学教授にして、ナイト叙勲者。彼の人生から不安を取り払ったのは、トーマス・カーライル
(英国ヴィクトリア朝を代表する言論人)の、この言葉だ。「遠くのはっきり見えないものを見るな。目の前の明白なことをやれ」

 42年後、サー・ウィリアムはイェール大学で講演した。「君たちは、大型客船よりはるかに長い航海を行くのです。“今日だけを見て生きる”ため、人生を安全に航海するため、人生のコントロール法を学んでください。過ぎ去った昨日という過去と、まだ生まれぬ明日を、鉄のドアで遮断するのです。それで君たちは心安らかでいられます。“今日だけを見て生きる”習慣を育んでください」
 ならば明日の準備をする必要はないのだろうか? いやまったく逆だ。彼は続けてこう述べた。今日やるべきことにすべての知性と情熱を注ぐこと、それが明日に備える最高の方法である、と。

 人が足を踏み入れようとする間に、川の流れは刻々と変化する。人生もまた、絶え間なく変化する。唯一確かなものは今日という日だけだ。今日生きる楽しさを、なぜ未来の問題を解決しようとして台なしにするのだろう?
 今日を良く生きることは、すべての昨日を幸せな夢に変え、すべての明日を希望に変える。

行動は不安を消去する最高の治療薬

 マリオン・ダグラスが私の講座に在籍していたときのことだ。これは彼が話した本当の話だ。彼の家庭では、一度ならず二度までも悲惨な出来事が起きた。最初は、5歳になる娘が亡くなってしまった。「10ヵ月後、神様はもう一人女の子を授けてくれました。でも、その子も生後5日目に亡くなってしまったのです」。二度の死別は、あまりにも耐えがたかった。「私は完全に打ちのめされて、自信を失いました」

 「私にはもう一人子供がいました。4歳の息子です。ある日の午後、息子が言いました。“パパ、ボートを作ってよ!”。ボートなんて作る気分ではありません。でも息子は粘り強く、結局、作ってやることにしました。完成するより前に、私は気づいていました。ボートを作っていた3時間は、この数ヵ月で初めてリラックスできて、落ち着いた気持ちになれたんです! 何かの計画や考えで忙しいとき、思い悩んでいるのは難しいようです。だから私は、忙しくしていよう、と強く決心しました。その上、いろいろな刺激を人生に取り入れました。地元で市民活動に参加して、今では教育委員会の委員長です。今では忙しすぎて、“悩んでいるひまはない”状態です」

 忙しくするという単純なことで、なぜ心配事が消え去るのだろう? それはある法則に基づいている。「どんなに頭脳明晰な人でも、人間は一度に“一つ”しか思考できない」というものだ。感情も同じだ。何かに夢中になったり熱中している間、同時に、憂鬱でいることはできない。

 自分が幸福なのか不幸なのか、わざわざ考える必要はない。忙しくしよう。血が回り始めれば、頭が働き始める。すぐに体内の活力がポジティブに湧き上がり、あなたの頭から不安を追い払うだろう。すぐに行動しよう。そして行動し続けよう。それは、地球に存在する最も安価にして最高の治療薬である。

変えられないことには折り合いをつける

 何十年と人生を進んでいくとき、私たちは、多くの不愉快な状況に遭遇する。それはしかたない。だが、私たちには選択肢がある。避けられないことを受け入れて自分を順応させるか、あるいは、抵抗して人生を台なしにしたあげく心まで壊してしまうかだ。

 「聖なるサラ」の名を博した大女優サラ・ベルナールは、変えられない現実と折り合うことを知っていた著名な女性の一例だ。半世紀の間、彼女は、四つの大陸で劇場に君臨する女王であり、世界で最も有名な女優だった。だが、大西洋を横断中、彼女は嵐の中デッキで転倒し、足に重傷を負った。医師は、彼女の足を切断するしかないと思ったが、彼女にそれを伝えるのをためらっていた。その辛いニュースによって、彼女が興奮状態に陥るかもしれないからだ。しかし、医師は間違っていた。サラは、一瞬彼を見ると、静かに言った。「“事実なら選択の余地はない”わね」

 避けられない運命だった。手術室に車いすで運ばれるとき、彼女の息子は泣いていた。彼女は屈託なく手を振り、「どこにも行かないで。すぐに戻るから」と明るく言った。手術から回復した後、サラ・ベルナールは、さらに7年間、世界中を公演して回り観客を魅了した。

 『リーダーズ・ダイジェスト』誌で、作家エルシー・マコーミックは、「変えられない現実との戦いをやめれば、エネルギーが湧き、より豊かな人生を築くことができる」と書いている。変えられない現実との戦いは、良い人生を築くことと両立しない。そんな気力と体力は誰も持っていない。避けようのない人生の吹雪には、身をかがめてやり過ごすことだ。
 不安や心配を消す方法について、最高のアドバイスは何か知りたくないだろうか? この価値ある言葉は、『ニーバーの祈り』として知られている。「変えることができないものを、受け入れる冷静さを下さい。変えることができるものを、変える勇気を下さい」

リラックスの習慣を身につけて成果を上げる

 不安や悩みの原因の一つが疲れである。精神科医なら、身体が疲れると不安や恐怖といった感情に対する抵抗力が弱まることを知っている。疲労の防止は、心労の防止になるのだ。

 80歳の誕生日を目前にしたヘンリー・フォードにインタビューしたとき、彼がとても若々しく元気に見えることに驚いた。秘訣をたずねると彼は言った。「私は、座れるときは絶対に立ったりしないし、横になれるときは絶対に座らないのだ」

 心の疲れは、どうしたら解消するのだろうか? 何かしているときはつねにリラックスしよう。どうやってリラックスするのだろうか? 心から始めるのか、頭から始めるのか? どちらからでもない。最初に、筋肉をリラックスさせるのだ! 試してみよう。目から始める。椅子の背にもたれ、目を閉じ、自分の目に向かって静かに言う。「目からどんどん力が脱ける。目の周りからどんどん力が脱ける」。これを1分間、静かに繰り返す……。数秒後、目の筋肉が、言葉の通りになり始めていることに気づいただろうか? 誰かの手が緊張をぬぐい取ってくれた気がしなかっただろうか?

 1日の終わりに、どれだけ疲れて“いる”かでなく、どれだけ疲れて“いない”かで成果を測るべきだ。1日の終わりに、神経が疲れていらいらしているときは、その日は量、質ともに効率の悪い1日だったということだ。すべての人が同じように考えれば、心の疲れからくる死亡率は一夜で下がるだろう。そして、疲労と心労を抱えた人が病院にあふれることも、きっとなくなる。

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