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「シズル感」

すぐに実践できる、
自分のカメラで料理を撮影する、簡単なのに効果的なノウハウ
「美味しい写真の創り方」をお伝えします。

第2回は、「シズル感」です。

私は、料理の写真を撮るときに、一番大切にしているのがシズル感です。
一枚の料理写真から、それが伝えられなかったら、撮る意味もない、というくらい、の覚悟です(笑)

食べることは、生きることに繋がっていき、
写真を撮ることで、生命力を刺激するような何かを伝えたいという思いがありますね。

シズル感とは、「食品の食欲をそそる瑞々しさ」を表す業界用語でもあります。

第1回「料理写真とカメラアングル」食品の質感を伝えることで五感の記憶を呼び覚ます

記事の中でも、「シズル感」という言葉にも触れてきました。

今回は、シズル感には、食品のどんな質感があるのか、様々な具体例を見ながら、掘り下げていきましょう。

「オイルやソースの流れる様子」を見てみましょう

 オリーブオイル、蜂蜜、と粘性のある液体の流れる様は、口入れた時の絡み付くような質感を彷彿とさせるのではないでしょうか?
オリーブオイルや蜂蜜であれば、液体の透明感も感じられます。

「冷えたドリンク」をみてみましょう


ドリンクの液体の、透明感が印象的です。
私たちの身体の60%は水でできていて、私たちにとってなくてはならないものです。水の持つ特徴の一つは、透明であること、ではないでしょうか。ですから、水の質感は、目で見るときいつも、光のゆらめきとともにあります。
冷えたドリンク、グラスについた水滴、その透明感は、
今にも飲みたくなるような、ドリンクのシズル感を伝えることができるでしょう。

次は

「照り」をみてみましょう。

メインのお肉に、とろみのあるソースが絡んだ、ツヤっとした照り。

大皿に盛り付けられた酢豚。そこからざっくりとサーバースプーンで持ち上げ、取り分ける。スプーンの上にあるお肉を中心に、ソースの照りが感じられています。

料理を食べる動作のように持ち上げる演出を現場では「箸あげ」と言います。シズル撮影の中で、箸あげあり、なし、などで、見せ方を話し合います。

温かいお料理の「湯気」をみてみましょう

グツグツとわいた鍋から、立ち登る湯気は、温かいお料理の質感、温度感を伝えるシズル表現です。

七輪で焼いた、焼きたての干物


実は、熱々の熱湯だけでは、なかなか写真に映るほどの湯気を出すのは難しいです。
湯気だし撮影の時、使用しているのは、ドライアイス、またはスチームアイロンです。
ドライアイスならば冷気、スチームアイロンならば蒸気、をお料理の上に吹きかけて、シャッターを切ります。

湯気出し撮影するときは、湯気出しする人、撮る人と息を合わせることが成功の秘訣です。

こちらは、鯛茶漬けに、熱い出し汁を注いでいるところ。



写真を撮るにあたって、
この食品を美味しそうに見せる質感の、一番の見せ場はどこかな?と考えてみます。


そうすることで、何を撮り、何を伝えたいか、がはっきりと見えてくるはずです。


でも、
何だかドライアイスとかすごいことになってる!などと、びっくりしたかもしれません。
しかし、大袈裟なことはしなくても、十分にシズル感は伝えられます。

とてもシンプルなことです。

温かいお料理が、冷めていたら、美味しくないですよね?

お料理にソースをかけてから時間が経過して、乾いていたら、美味しくないですよね?

つまり、出来立て、
ソースも掛けたたて、が美味しそうです。

萎びたハーブより、水を通して、ぴんっとはったハーブを添えると、お料理が新鮮に見えますよね。

料理は鮮度が命です。

写真を撮るにあたって、
この食品を美味しそうに見せる質感の、
一番の見せ場、が決まったら、

一番最後に、それを仕上げるようにします。
シャッターを切る前の1番最後、直前です。

ソースでシズル感を見せたいならば、
ソースをかけていない状態で、カメラアングルから見て、盛り付けを良い状態に整えておきます。

シャッターを切る直前に、仕上げのソースをかけ、撮ります。



そんなシンプルなことで、写真の印象はガラリと変わります。

食品の撮影には
「食品の食欲をそそる瑞々しさ」を伝える「シズル感」は、最も重要と言っていいでしょう。




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