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忘れなくていい

忘れたいと思うことほど、忘れられないことは多いと思う。それがどんなことであっても。

悔しいと思うことも、納得できないと思う気持ちも、簡単に拭い取れないことなんて、たくさんあるはずだ。

そんな気持ちも、自分に起こったことも、無理に忘れようとしなくてもいいと思う。

忘れていたはずなのに、ふと思い出してしまったときは今ある自分の持ち物を数えてみる。たとえ過去は過去として残っていても、自分の体は今にしか存在していないから。

「いま自分が持っているものってなんだっけ」

数えているうちに、心はだんだんと過去から遠のいていく。意識は今ここに向いてゆく。

悔しい気持ちや悲しい気持ちは、文字にして目に見える形にしたっていい。どうして悔しかったのかとか、これからはどうしたいのかとか、感情の先にあるものを掘り起こしていくと段々と落ち着いてくる。

どうしようもないときは、いっそのこと寝てしまったっていいと思う。寝ている間だけでも忘れて、起きたらおいしいご飯でも食べよう。

ときどき、忘れられないものを思い出してしまう自分のことを許して。人間そんなに簡単に作られていないし、背伸びをして完璧な人のように振る舞わなくていいし、強くなれない日もたくさんある。「そんな自分でいてなにが悪いの?」と思うくらいでいていいのだ。

だから何かを忘れられるような人になる必要だって無いのだと思う。

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