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+2回目+ 深イイ話。脂肪酸について。

こんにちは、世界初お菓子テックカンパニーCEOの柴田アリサです。

「今さら聞けない油のお話」シリーズの2回目です。1回目で、「続きは明日、書きますね」と言っておきながら、その誓いをさっそく破ってしまいました。できない約束は、すべきではないのですね。言い訳させてもらうと、近所の山に散歩に行ったら、思いのほか疲れてしまい、家に帰るや布団を出してパタンキューだったのです。

話を本題にもどします。

前回は、油もとい脂質の選び方について、紹介しました。

~油の選び方~
1体に負担がかからないものを考えよう
2どんな料理に使うか考えよう
3どれくらいの価格のものなら継続的に使えるか、お財布と相談しよう
~油の特徴~
・油を分解する臓器は膵臓(脂質とグリセリンに分解してくれます)
・脂質は小さな分子の集合体である
・脂質は、分子の長さによって区別される
・脂質は、 分子の組み合わさり方 によっても区別される

脂質は、ツブツブすなわち分子の組み合わさり方 や、その 長さ が重要なのだと、せつめい したところでした。今日はその続き、ツブツブの組み合わさり方について。かっこよく表現すると、脂肪酸の分子構造について です。
分子構造というと、少しわかりにくいので、脂肪酸の「名前」とでも言いましょうか。ひとえに脂肪酸といえど、いろんな種類があるのです。

脂肪酸は大きく2つに分けることができます。「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」です。

「飽和脂肪酸」 は、

牛脂やラード
バター
チョコレート(カカオマスやココアバター)
ココナッツオイル
パーム油

などに多く含まれます。
実は、これらには驚くべき共通点があります。常温では固形であることが多いのです。
チョコレートもココナッツオイルもバターも、少し固いですよね。溶かすには、電子レンジで温めたり、湯煎をしなくてはいけません。わたし が住んでいる北海道なんかだと、夏でも涼しいことが多いので、よっぽど暑くならない限りは、固形の状態をキープしています。

これはどういうことかというと、バターやチョコレートの「融点」が比較的「高い」からなのです。「融点」とは、それぞれの物質が持っている「固体⇄液体」になる温度のこと。固体と液体がちょうど切り替わる ポイント のことなのて、「融点」といいます。
水の融点は0度である というのをイメージすると、わかりやすいかもしれません。0度以下で氷になり、0度以上で水になるのは、有名なお話。
つまり、「飽和脂肪酸」には融点が高いので、固形であるという、特徴があるのです。

それに、、、ダイエットを気にしている人なら、あれ?と思うかもしれません。そう、どの油をとっても、コレステロールが高そうな雰囲気をかもしだしてますよね。じゃあ、飽和脂肪酸は、体に悪いのでしょうか?

実は、コレステロール には、近年の研究によって、体の炎症 を抑える効果があることがわかりました。コレステロールの高い卵を食べて、体の調子がよくなった というようなお話を聞くのは、これが要因の1つです。
(コレステロールは、最近になって新しい発見があったりと、とても面白いジャンルなので、後日、別の機会に、詳しく書きたいと思います。)

それに、飽和脂肪酸は、強い細胞膜を作るのに、とても大切な材料となります。しかも、これはとても面白い現象なのですが、この「飽和脂肪酸」、体内で「不飽和脂肪酸」へと変身を遂げるタイミングがあるのです!
体内に、糖質(ご飯やパンなどに多く含まれます)やタンパク質(お肉や卵に多く含まれます)が余っている時、それらと協力しあって、体内で化学反応がすすみ、「飽和脂肪酸」へと変化するのです。体内で化学反応 だなんて、人体の神秘を感じちゃいますね。



一方、「飽和脂肪酸」は、主に植物油と言われるものに多く含まれます。「不飽和脂肪酸」と違い、融点が低く、常温では液体であることがほとんどです。家にある油のほとんどはこれにあたります。オリーブオイル ごま油 菜種油 キャノーラ油 紅花油。どれも液体でビンやプラスチックの容器に入ってますよね。

この「飽和脂肪酸」、さらに細かく分類することができます。これは、かなり科学っぽい響きなので、心して聞いてほしいのですが、その名も「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」。



「なんだかわかりにくいぞ!!」と叫びたくなりますが、ここはグッとこらえてください。というのも、これには、わたし が編み出した、とても簡単な覚え方があるのです。その名も、ありさメゾットその1です。

説明しよう!ありさメゾットとは
~わたし が考案した、科学や栄養のこと、ひいてはお菓子づくりを簡単にするための方法のこと。一般的ではないので、覚えなくても良いが、覚えると意外に便利。

ありさメゾットその1
どちらにも入っている「価」の文字を「価値」というように、意味付けしましょう。(実際は、結合している炭素の数を表していますが、小難しい話はおいておきます。)
・わたしたち人間にとって、価値が小さい方を「一価」
・価値が大きい方を「多価」という風に、イメージすれば、それぞれの特徴とも合わさって、バッチシです!

価値が小さい「一価不飽和脂肪酸」は、わたしたちの体内で作ることができます。自分の体で作れるので、希少価値が下がってしまう。なので、「一価」。
さらに、先ほどの、{「飽和脂肪酸」は、体内で「不飽和脂肪酸」へと変身を遂げるタイミング がある} という せつめい とも結びつきます。そう、この一価不飽和脂肪酸は、飽和脂肪酸の変身後でもあるのです。もちろん、「一価不飽和脂肪酸」は植物油からも摂取することができますが、豚の油に含まれるラードなんかは、体内で「オレイン酸」という「一価不飽和脂肪酸」に変化します。

オレイン酸!!!

聞いたことがある名前が出てきました。なんだか嬉しくなりますね。これは、オリーブオイルなどに多く含まれる、脂肪酸の種類 のことです。特徴としては、善玉コレステロールを減らさず、悪玉コレステロールだけを減らす効果があります。そのため、オレイン酸は、比較的ヘルシーな脂肪酸と言えるでしょう。(一価不飽和脂肪酸の中には、オレイン酸の他に、パルミトレイン酸なんてのもありますが、とてもマニアック。)ちなみに、オレイン酸は オメガ9系列 という脂肪酸にカテゴライズされます。



それでは、いよいよ価値が大きい「多価不飽和脂肪酸」について、みてみましょう。価値が大きい というとおり、その名に恥じず、「必須脂肪酸」とも呼ばれています。これもおきく2つに分けることができます。

オメガ3系列
オメガ6系列

聞いたことありますね。美容雑誌によく出てくる「オメガ6」とかってやつです。これらは体内で作ることができないので、食べ物 で摂取する必要があります。自分の体で作ることができない、なので、貴重なのです。価値の大きな「多価不飽和脂肪酸」と覚えることができます。

オメガ3系列とオメガ6系列、特徴的なのが、摂取方法。というのも、摂取量のバランス感覚が非常に重要になってくるからなのです!
というのも、それぞれが相反する性質を持つために、どちらの短所も打ち消しつつお互いの良さを最大限に発揮する バランス をつかむことが求められます。

それでは、その性質について、ひもといていきましょう。

オメガ3系列にはα-リノレン酸 EPA DHA が挙げられます。青魚に多く含まれており、「ニシン酸」や「イワシ酸」という脂肪酸もあったりと、とても魚くさい感じがします。

「お魚が嫌いだと、摂取できないじゃん!」

と思うかもしれませんが、植物油にも含んでいるものがあります。「亜麻仁油」と「荏胡麻油」です。この2つは、わたしも大好き!毎日食べてます。しかし、熱にとても弱い という特徴を持つので、加熱調理には使えません。生で食べるサラダにかけたり、熱を加えない納豆に混ぜたりすることで、おいしく食べることができます。(納豆にかけると、高級なテリーヌのような風味になって、最高ですよ!)

効能としては、免疫力強化が挙げられます。血圧を下げたり、脳神経細胞の機能に関わったりと、体に良いことづくめです。炎症をしずめる効果もあります。
しかし、過剰摂取しすぎると、免疫過剰になり、逆にアレルギー反応を強めたりといった可能性もあるので、気をつける必要があります。免疫過剰になると、わずかのアレルゲンでも強力に反応(=過剰)してしまうことがあるのです。

オメガ6系列には、リノール酸やγ-リノレン酸という脂肪酸があります。グレープシードオイル、キャノーラ油、サラダ油に多く含まれており、オメガ3に比べて、意識しなくて、日常的に摂取することができます。

オメガ6系列の効能としては、コレステロールや血圧を下げる効果があり、やはり良いことづくめなよう。しかし、過剰摂取では、逆に免疫を弱める効果を発揮してしまい、様々な病気の原因となるのです。それに、炎症を起こす物質も発生させてしまいます。少しなら、人間の体にとって、とても重要な働きをするのですが、、、

心臓病やガンなど、これらのほとんどは、体内の細胞の炎症作用によるものです。油の選択を間違って、オメガ6系列をたっぷり摂取するという偏った食生活を知らぬうちにしてしまったがために、発症してしまうことがあるのです。

余談ですが、オメガ6は、果物でいうと森のバターとしても名高いアボカドにたっぷりと含まれています。必須脂肪酸を果物で摂取することができる ということで、美容に良いというイメージにつながったため、味もさることながら、女性に人気があるります。でも、先に書いたように、食べすぎはよくありません。女性の皆さん、気をつけてくださいね。(わたしはアボカドも大好きなので、自害の年も込めてます。)

ざっくりとまとめると、オメガ3系列は免疫強化 オメガ6系列は免疫抑制。よって、この2つは相反する効果を持つために、お互いの良さを活かすためにも、バランス感覚がもっとも重要になってくるというわけなのです。

人にもよりますが、今のわたしたちの生活だと、オメガ3をティースプーン1杯飲むくらいが、ちょうど良いバランスです。

本日最後に伝えたいのが、オメガ3とオメガ6の共通点である「細胞の膜を作っている」ということ。すなわち、細胞膜の材料というわけです。

わたしたち をわたしたちたらしめる 脳も細胞の集合体です。脳細胞の脂質は、リン脂質 という少し変わった名前です。もちろん、リン脂質の細胞膜も、オメガ3とオメガ6などの脂肪酸から作られています。

そして、これは非常に面白いことなのですが、人間の脳は、ほとんどが脂質でできているんです!なんと、全体の60%もしめるとか。
なので、良質なオメガ3とオメガ6を摂取することは、良い脳みそを作ることにつながります。良い油を食べれば、良い脳みそが作られるという わたし の持論は、こういったことが根拠になっているのです。

本日の、意外と深い脂肪酸のお話はここまで。

次回は、良い脳みそ、良い細胞を作るための「良質な油」について。また、最近何かと話題のトランス脂肪酸にも触れてみたいと思います。




note書くときのコーヒー代や、クロエちゃんへのスペシャルおやつ代にさせていただきます٩( 'ω' )و