静かな船出と賑やかな船出
12年前に出版した『パリでメシを食う』が10刷、39000部になったとのお知らせが幻冬舎から届く。この本は文庫書き下ろしという形態だったので、発売当時もその後もひとつのメディアにも取り上げられず、静かでゆっくりとした船出だった。それでも遠くにいけることもあるということを知ってる。そのことは、いつもわたしを勇気づけてくれる。
一方、映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」の方はちょっと賑やかな船出を迎えようとしている。本日が最終日となる、クラウドファンディングで現時点で226人の方にご支援いただいた。これ以上ないほどに素敵な船出だ。
とても嬉しいのと同時に、まだ映画もみていないのに、わたしたちを信じて、大事なものを託してくれた、そのずっしりとした重たさも感じていたり。
出航間近に迫った「映画」という船は、どこの映画館に寄港できるのだろう。
映画館やミニシアターの話を聞けば聞くほど、このコロナ禍を経て映画館に行く人は少なくなり、いまものすごく苦しい場所にいることがわかってきた。書店さんも大変だという話を聞くけど、ミニシアターはそれ以上かもしれない。本は積読できるけど、映画はそのときその場に行かないといけないから。いまわたしができることは、本も映画もとにかく伝え続ける。応援してくれる人を増やす。 文化を死なせないために。
クラファン期間中も、わたしたちはあちこちの映画館へのアプローチを地味に続けていた。多くの方の強力により現在9館での上映が決まった。いちはやく決断してくださった映画館には、感謝してもしきれない。
個人的には、一番最初に、今年の春に「うちでかけますよ!」とすぐにお返事をくださった神戸元町映画館の林未来支配人にはめちゃくちゃに感謝している。あのとき、配給をどうするかずいぶん悩んでいたんだけど、いいや、どうなっても元町映画館はかけてくれるんだから、というのがけっこうな心の支えになって、自主配給にむかっていくその曲がり角を曲がることができた。
『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』はたぶん聞いたらびっくりするほど低予算の映画です。そしてわたしたちは、映画の世界ではとても無名の存在。そんな映画がはたしてどこまでいくことができるのか、楽しみでもある。
どこまでいけるわからない。でも、いいよ、一緒に船をこぐよというお気持ちの方がいたらぜひ一緒にどこかの島を目指しませんか。お礼の気持ちをこめて、支援してくださった人全てのお名前が公式HPに掲載されます。
それではまた!
明日からは映画配給の本番に向かって第二ラウンドがはじまる。
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