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〜〜波待ち日記〜〜 シャーク

1月4日 (土)マンリービーチ
サイズ:ハラ〜ムネ
オンショア強めのチョッピーコンディション

オーストラリアに家族で移住する前のこと。妻は仕事の都合で、2020年の年明けと共に単独で先行して移住することになった。

「引っ越しの手伝い」という名目で年末年始の休みを使って付いてきた僕は、ホームポイントとなるであろうマンリービーチで初めてのサーフィンを試みた。

オンショアが強く、フェイスがガタガタだったせいもあるのだろう、週末だというのに、アウトはガラガラだった。それでもそこそこサイズはあったから、十分にサーフ可能だったし、何より水と景色が綺麗なこのマンリービーチを、僕は一発で気に入ってしまった。

こんな贅沢な環境でサーフィンができるなんて最高だ。

鼻歌混じりにテイクオフを繰り返していると、何やらビーチの方からスピーカーを通じたライフガードの音声が聞こえてきた。

ライフガードのアナウンス、そしてサイレンが……

ただでさえ英語の聞き取りが怪しい上に、オンショアが吹き付ける中で、その音声は僕の耳にはなんの意味も伴わない音としてしか届いていなかった。

大方、ビーチの海水浴客に注意を促すアナウンスだろう。カレントが出ていたし、マンリービーチはライフガード発祥の地らしいから、監視のクオリティも高そうな気がする。

しかし、スピーカーの音声は途切れない。繰り返し何かをがなり立てている。

そして、今度はサイレンが鳴り響き始めた。

これが尋常ではない事態であることは直感的に理解できた。

ふとアウトに目を向けると、ピークで張っていたローカルサーファーたちが、岸に向かってパドルを始めた。心なしか、皆その顔が真剣そのものだった。

……どういうことだろう?俺も上がった方がいいのかな?

そう思ったとき、一瞬オンショアが緩んだ隙に、僕の耳に意味がわかる英単語が飛び込んできた。

「Shark is sighted——」

人生で最も全力を出したパドル

シャーク。

サメ……。

ここ、シャークアタックが多いと言われているオーストラリア——。

いひーーーっ!?

その瞬間、心臓が跳ねた。

僕は全力で岸に向かってパドルを始めた。

もう一度言う。

ここ、シャークアタックが多いな〜、と思っていたオーストラリア。

その実力をいきなり見せつけられたカタチである。

コンテスト中にグレートホワイトにリーシュを噛みちぎられたミック・ファニングの姿が脳裏をよぎる。

あぁ……あれはJベイ(南アフリカ)か。

そんなアホなことを考えながらも死に物狂いで水を掻くが、焦れば焦るほど、全然前に進めている感じがしない。

スープだ!スープカモン!!早くスープ来いよ!!!

僕は海に懇願したが、その時はハイタイド、しかも僕はアウトにいたから、波は簡単に割れてくれない。

足に、あるいは腕に、今にもサメが食らいついてくる予感がつきまとうと、筋肉が縮こまり腕が上手く回らない。

紙一重でパニックには陥らずに済んだが、多分、あれはパニック寸前だったんじゃないだろうか。

ともかく、僕は無事に岸に生還した。

時間にしたらわずか5分にも満たなかっただろうが、恐怖の中でパドルしている時間は永遠にも思えた。

ビーチ前のサーフショップで店番していた女の子によれば、いくらシャークアタックが多いオーストラリアといえども、サメでビーチがクローズするのはマンリーでは結構珍しいことらしい。

それを裏付けるかのように、ライフセーバーがビーチに立てたアラートの前で記念撮影をする人が後を絶たなかった。

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もちろん、僕も御多分に漏れない。

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怖かったけれど、かなり貴重な経験ができた1ラウンドだった。

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