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学力の経済学④〜「褒めて育てる」を間違えると逆効果!!

学力の経済学シリーズでは「学力の経済学」の本をもとに僕の経験も交えながらお伝えします。著者は中室牧子氏。教育経済学者。中室氏の本を書いた目的は、「知っておかないともったいないこと」を伝えたいです。知っていると知らないとでは大きな差が出ると僕も読んで思いました。ぜひ、このブログをきっかけにこの本も読んでいただけたらと思います。

※先に結論を知りたい方は一番最後へワープください。
 結論だけ分かれば良いというわけではありません。
 どうしてそうなのか知ることはもっと大事だと思っています。※この記事に興味を持ち、開いてくださった方には一番最後の結論だけは読んでほしいです。

このブログを音声化したものです ↓

from:ありのまま@9

どんな時に子どもを褒めると効果的かが分かります!

「子どもは褒めて育てましょう」

ってよく聞くフレーズ。

学校でもよく聞こえてきますね。

褒められて育った子どもは「自尊心」が高くなり、

先生との関係を良好に作れ、

学習意欲も高いと聞きます。

「褒めて育てる」というのは「自尊心」を高めることが目的なのです。

つまり「自尊心」が高い子を育てたいわけです。

ただ「自尊心」が高いとうまく生きていけるのでしょうか?

これにはどんな科学的な根拠があるのでしょうか?

アメリカでこの自尊心を使ったいくつかの研究で

次のことがわかっています。

自尊心が高いと学習意欲や学力が高く、未成年の喫煙や飲酒などの反社会的行為が少ない一方、大人になってからの勤務成績、幸福感、健康状態は良好な傾向が示されました。

なんだ、いいじゃないか!

ありのまま@9の紛らわしいタイトルは何だったんだ!

っていう怒りを抑えて、もう少しお読みください。

先ほどの結果を受けて、カルフォルニア州では

1986年以降、自尊心に関する大規模の研究が行われました。

子どもたちの自尊心を高めれば、学力や意欲が高まり、反社会的行為を未然に防止することができるのではないか

を期待しての研究です。

多くの人が賛同するこの研究の中から意外なことがわかったのです。

自尊心が高まれば。子どもたちを社会的なリスクから遠ざけることができるという有力な科学的根拠は、ほとんど示されなかったのです。

つまり、自尊心が高まれば、反社会的行為を未然に防止できる

っていうことは全くないということです。

さらにフロリダ州立大学の心理学者、バウマイスター教授らが

自尊心が高まると学力が高まる

という定説を覆す研究結果を発表したのです。

学力が高いということが原因で、自尊心が高いという結果をもたらす

というのです。

学力が高い子が結果として、自尊心が高くなっているというに過ぎない

ということです。

だからこそ、学校の先生としては、

学習面に関して、子どもたちをできるようにする

ことが極めて大事なことが分かります。

だからこそ、「跳び箱の開脚跳びができる」ということに

独自の研究をし、全国にその指導法を広め、

日本の子供達が全員跳び箱が跳べるようにしようとした

向山洋一先生は偉大だなと僕は思います。

さらにバウマイスター教授らは警笛を鳴らしました。

それは、

子どもの自尊心を高めるような様々な取り組みは、学力を押し上げないばかりか、時には学力を押し下げる効果を持つ

と示したのです。

バージニア連邦大学のフォーサイス教授らは

自分の授業の学生のうち、

「最初の試験で成績の悪かった学生たち」を

ランダムに2つのグループにわけ、

毎週メールで別のメッセージを送りました。

1つのグループは、宿題の連絡と共に

「あなたはやればできる」

というような自尊心を高めるメッセージを送りました。

もう1つのグループは宿題に関する事務的な連絡や

「個人の管理能力や責任感の重要性を説くメッセージ」

を送りました。

この結果は、自尊心を高めるメッセージを受け取ったグループの

試験の成績が有意に低かったことが示されました。

これはすべての学生に悪影響だったわけではなく、

特に「もともと学力の低い学生」に大きな負の効果を

もたらしたということも明らかになりました。

むやみやたらに子どもをほめると、「実力の伴わない」ナルシストを育てることになりかねない

ということです。

何だか、よく分からなくなってきましたね。

もう嫌だー

って読むのをやめたくなる気持ちを抑えて、もう少し読んでください。

著者は次のように書いています。

子どもを褒めてはいけないと言っているわけではない。

重要なのはその「褒め方」なのです。

褒め方まで考えてなかった〜

って思った方、

僕もそうです。

コロンビア大学のミューラー教授らは、

公立小学校の生徒を対象にして、「褒め方」に

関する実験を行いました。

ランダムに2つに分けられたグループで

両方のグループにIQのテストをしました。

1つのグループではテストの成績がよかったときには

「あなたは頭がいいのね」

もともとの能力を称賛するメッセージを伝えました。

もう1つのグループでは、

「あなたはよく頑張ったわね」

努力を称賛するメッセージを送りました。

すると

子どものもともとの能力(=頭の良さ)をほめると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する

という結果が出たのです。

つまり、能力を褒められた子たちは

良い成績を取れた時はその理由を「自分は才能があるからだ」

と考え、

悪い成績を取った時も「自分は才能がないからだ」

と考える傾向があったこともわかっています。

才能があるからやらなくても大丈夫

      

成績が下がると「才能がない」とやる気を失う。

この連鎖によって、成績が低下していくのです。

怖いですね。

だからこそ以下のことが最も大事です。

著者の中室氏がまとめたものです。

<ここだけは絶対読んで!>

子どもを褒めるときには、「あなたはやればできるのよ」ではなく、「今日は1時間も勉強できたんだね」「今月は遅刻や欠席が一度もなかったね」と具体的に子どもが達成した内容を挙げることが重要です。そうすることによって、さらなる努力を引き出し、難しいことでも挑戦しようとする子どもに育つということです。

※学力の経済学⑤は今回の知見から僕の経験則を交えてお伝えします。

 第5回は5月2日(土)にお届けします。

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