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ビッグマック指数で見る「安いニッポン」の真相

「ビッグマック指数」と「安いニッポン」。
インパクトのある言葉ですが、具体的な意味はわかりますか?
これらは、日本の物価が海外よりも安くなっていることを表す指標となっています。
ニッセイ基礎研究所のレポート『ビッグマックから「安いニッポン」を考える』によると、日本経済にとってこの現象はメリットもあればデメリットもあるそうです。

気になったので、レポートを読んでみました。

ビッグマック指数とは何か?

まず、ビッグマック指数とは何かを説明しましょう。
ビッグマック指数とは、世界中で同じレシピで作られているビッグマックの価格を、米ドルに換算して比較するものです。
これは、世界の物価や為替レートを比較するための重要な指標なのです。
例えば、2023年1月調査時点では、日本のビッグマックは410円(3.15ドル)、米国は5.36ドル、ユーロ圏は4.86ユーロ(5.28ドル)でした。これは、日本のビッグマックが米国やユーロ圏よりも約4割も安く買えることを意味します。

なぜ「安いニッポン」になったのか?

次に、「安いニッポン」という言葉の意味と原因を見てみましょう。
「安いニッポン」とは、日本の物価が海外よりも安くなっていることを表した言葉です。
この現象が生じた直接的な要因は、長期にわたる物価の低迷と為替レートの変化です。
日本は1990年代後半以降、長らく低い物価上昇に直面してきました。
これは、平均2%程度で上昇してきた米国やユーロ圏などと大きく異なります。
2021年以降、世界は物価上昇に見舞われましたが、日本でも2023年1月には消費者物価上昇率が前年同月比で4%超えとなりました。しかし、他国に比べれば日本の物価上昇率は大きくありませんでした。
物価上昇が低く抑えられ続けてきたことで、物価は変わらないという強い予想が生まれました。これにより、物価の粘着性が高まりました。つまり、物価が変動しにくくなったのです。
また、他国との物価上昇率の差を埋め合わせるほどに円の購買力が上昇(円高)しなかったこともあります。
実際の為替レートは、購買力平価(物価水準に応じて調整された為替レート)に近づく円高を記録したこともありましたが、全般として購買力平価よりも円安で推移しています。

「安いニッポン」は良いことか悪いことか?

最後に、「安いニッポン」が日本経済に与える影響を考えてみましょう。
「安いニッポン」自体はそれほど問題ではないかもしれません。
同じ製品を日本で安く作れるなら、海外への輸出を増やせるはずですし、物価が安いことで外国からの旅行者や海外企業が増える可能性もあります。
しかし、「安いニッポン」が生産性が低く競争力を失っているために生じたものであれば、物価の安さは望ましいとはいえません。
ビッグマックの生産コストを考えると、牛肉やレタス、小麦などの海外と貿易される財(貿易財)に加えて、店舗の家賃や人件費といった海外と貿易されない財(非貿易財)が含まれます。
過去の研究によれば、ビッグマックの内外価格差の約6割は非貿易財の価格で説明されるそうです。つまり、日本でビッグマックが安く買えるのは賃金が低いからだとも考えられるのです。
「安いニッポン」現象は、生産性を引き上げられず所得を増やすことができなかった日本への警鐘だと言えます。
日本経済が持続的な成長を達成するためには、「安いニッポン」から脱却する必要があります。そのためには、

  • 非貿易部門(サービス業など)の生産性向上

  • 賃金上昇に伴う消費拡大

  • 物価目標達成に向けた金融政策

  • 為替レート変動への対応策

などが必要です。

大好物のビッグマックを食べながら、「安いニッポン」について考えてみませんか?


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