荒井裕樹『感情の海を泳ぎ、言葉と出会う』書評(初出:『週刊読書人』)
荒井裕樹は、名もなき障害者の美術作品や女性運動の歴史をつぶさにリサーチし、マイノリティの未開拓な歴史を掘り下げてきた学徒である。そんな荒井の新著『感情の海を泳ぎ、言葉と出会う』(教育評論社)は、「良い文章とは何か?」をテーマに据えた一冊だ。だが、偉大な文筆家の名文が例示されるわけでも、文法的な指導がなされるわけでもない。いわゆる文章読本やハウツー本とは似ても似つかないつくりである。
なんせ冒頭で荒井は<良い文章とは何かについて、悩んだり迷ったりすること自体を味わうような本