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【地中海ひとり旅】チュニジアのとあるビーチで

 「わたしはいま旅をしている。」そう最初に自覚した旅は、おそらく小学3年生の時の旅だったと思います。その頃よく、放課後おじいちゃんちに寄っては、おじいちゃんが若かりしころにしたという旅々の話を、日が暮れるまで聞いていました。でもおじいちゃん、「旅はいいぞお」って言ってみたり、一方で「旅なんてするもんじゃあない」なんて言ってみたり。「おじいちゃん、結局のところ旅が好きなの?嫌いなの?」って、子どもながら、頭の中は“はてな”だらけでした。いま思えばこの“はてな”が、わたしを旅の世界へと誘ったように思います。

 夏休みの終わりころ、両親に内緒で、電車に乗ってふた駅先の本屋さんに行きました。そう、わたしにとって、人生で初めての「旅」です。うだるような暑さに、夕方にはたしか、にわか雨に濡れた覚えがあります。電車の乗り方をおじいちゃんからあらかじめ聞いてはいましたが、覚えきれるわけもなく、泣きながら駅員さんに切符の買い方を聞いて、電車にはなんとか乗ることができましたが、本屋さんには、たしか辿り着けなかったはずです。初めてのことだらけのその旅は、「不安」と「寂しさ」で終わりました。

 しかし、そこから歳を重ねるに連れて、わたしの「旅」に対する想いは、どんどん強くなっていきます。幸いなことに、初めての旅で感じた「不安」や「寂しさ」の中に、ほんの少しだけ「好奇心」を得ていたのです。これは、およそ運が良かったと言えます。でなければ、いま頃わたしは旅が嫌いで、こうしていま、チュニジアのとあるビーチで日記帳にペンを走らせていなかったでしょうから。

地中海ひとり旅日記より抜粋
in Sidi Bou Said, Tunisia Feb.2024

ビーチわきの岩場で水遊びをする、ふたりの少年

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