映画を観に行こう(愛にイナズマ) その2


映画の感想を発信する以上、旬に乗り遅れてはならない。
旬とは、鮮度があること。時期が過ぎると、つめた~くなってしまう。用例を挙げるなら、「あの人は週末インスタに人間の写真をあげてたのに急に更新が途絶えてしまって心配だ」である。本当に例えばの話だが。他には、「『進撃の巨人』最終回について」でもいいだろう。ピークとアニ最高。インスタのIDを変えるか悩んだほどだ。
さて、極力ネタバレがないように本映画の魅力を伝えてみようと思う。自分の記憶と劇場公開の鮮度があるうちに。とりあえずゴジラなあなた、まだチケット買わないで。

「人は皆、役者である」 劇中のセリフだ。引き込まれる人も多いだろう。
『愛にイナズマ』は、他人との関係にモヤつく人の助け舟となる作品だ。
タイトルやポスターデザインからは考えにくいが、単語を単純に結びつけただけのゴリゴリなラブストーリーではない。コロナ禍が舞台。初の映画監督を任された主人公が制作を通じて出会う人々と悪戦苦闘しながら困難な環境下で成長していく話…

などと平凡なはずもなく。現代の人々が共感できる雰囲気に満ちている。
前半と後半で中心となる主人公の環境が変わる。明らかに変化する言動や態度を時期的な成長と一括りにすることもできなくはないが、この作品には意図された主張が隠されている。重要なのは、対照的に見えても「同じ」人物であること。属するコミュニティ毎に自分を作っていること。超理屈っぽくみえる人物でもそれを支えているのは私情であること。ある場面では周りを気にしていておどおどしていても、別の場面では理想を求め熱く燃えられること。
現代社会では自分を一貫させて保つことは困難だ。だからこそ、芯のある人は尊敬される。ただ、そうでない人も秘めた思いを持っている。何かの流れに押しつぶされても、それを見失わないでほしい。もし霞んできたら、少しでものびのびできる環境にいながら憧れや情熱を思い出してほしい。
劇中で主人公が最も輝いている部分は、家族にまつわる箇所であるように思われる。家族とは、最も基本的な共同体だ。摩擦が多くもあるが、これのために自分を奮い立たせて生きている人もいるのではないか。本作品では、自分を受け入れる存在、また心を取り戻させる存在として欠かせない要素になっている。

ネタバレを1シーンだけ。佐藤浩市演じる父親にカメラを回しながら、推しが「こいつは素材としてダメだ」的なことを大声で連呼する場面がある。『鎌倉殿の13人』の熱演が記憶に新しい大御所へのセリフとして非常に面白かった。のだが、パンフレットによると、推しはこのシーンで撮影スタッフが笑っている理由が分からなかったそうだ。それだけ役に入り込んでいたということだろう。これには私も鼻が高い。後方で腕を組んで観ていられる。

タイトルと裏腹に優しさも備えた『愛にイナズマ』、まさに今観てもらいたい映画だ。
そういえばサイン本販売会は外れていた。こんなに推しているというのに。

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