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#7 運命は「受け入れる」?「変えていく」?

中世における人びとの人生に対する価値観は、現代の私たちとは根本的に異なるものでした。

今回は、そんな彼らの価値観と現代に生きる私たちの価値観を比べてみましょう。

「人間の空間」と「神秘の空間」

現代の私たちにとって、地上のほとんどの場所は行こうと思えば行くことができるし、人の手を加えて環境を変えたりすることができますよね?

宇宙にある月や火星なども、行くのは難しいかもしれませんが、月や火星がどんな物質で構成されているのかは科学によって解明されています。

しかし中世の人びとにとって空間は「人間の空間」と「神秘の空間」に、はっきりと分かれていました。家や村や都市などは「人間の空間」ですが、都市や村から一歩外へ出ると、そこには人間の力の及ばない「神秘の空間」が広がっていました。

例えば、森は人間にとって一番身近なところ にある「神秘の空間」です。

「神秘の空間」には霊の力、人間の生活のすべてを左右する未知の力があり、人生における成功、不成功や幸、不幸の原因はすべて「神秘の空間」にあると考えられていました。だから彼らは、「神秘の空間」と折り合いをつけてることが何よりも大切でした。

当時は、占星術が大人気でしたが、それはこの考えから来ています。人間には全く予測することができない「神秘の空間」で起ることをなんとか理解しようとしていました。

決められた運命に身を任せる

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このような価値観が根底にあるので、中世においては運命は個人の努力よりもその人間がどのような星の下に生まれたのかによってすでに決まっている、と考えられていました。

何よりも大切なのは、生活の不安を除き、現世での生活を安全に営むことです。しかし、それが個人の努力によって得られるものでない以上、「神秘の空間」の力に頼るしかありません。なので、中世の人々は「神秘の空間」にいる神々に供物を捧げ、豊作や戦勝をお祈りしていました。

自分で自分の人生設計ができると考えられるようになるのは15世紀ごろからで、この頃ようやく「真面目に生きる」ということが良いことであるとされはじめました。

中世以降は、霊や神秘の空間は存在せずこの世界は人間のためにある、というキリスト教の考えが徐々に広がっていき、「人間の空間」と「神秘の空間」といった考えはなくなっていきました。

努力で人生を切り開く

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現代人の場合はどうでしょう?

現代では、人生における成功と不成功の原因は、その人のおかれた環境もちろんありますが、個人の努力によって最も大きく左右されると考えられているように思えます。

「志望校に落ちたのは、彼が頑張って勉強をしなかったから」「彼女が幸せそうなのは、がんばって努力を続けてきたから」。こういった努力主義の価値観は、私たちにとっては当たり前です。

では、どっちの価値観が良いのでしょうか?

しんどくなったら中世

現代社会では、基本的には努力主義の価値観の方が生きやすいと思います。

現代の私たちが努力主義の価値観になっているのは、そういう価値観が自然淘汰の中で勝ち残ってきたからです。中世の価値観のみで現代社会を生きていると、どんどん人生が堕落していってしまうでしょう。

けれど努力主義の価値観にも、欠点があります。

人生が上手くいってないと思うときに努力主義の価値観を信じすぎていると、どんな事も自分のせいにして、さらに自分を追い込んでしまいます。

人生では、自分の責任とは関係のない災害や、事故、失敗などがたくさん起ります。上手くいかないことが続いて、辛くなったときに中世の価値観を取り入れて見ると「全部が全部私のせいじゃない」と、ふっと気持ちが軽くなります。

そして自分を責めることが少なくなり、その結果また人生を前向きに生きることができるようになると思います。

どんな価値観も、それ一つにこだわっていきすぎると、生きづらくなってしまいます。たまには、いつも頑張っている自分を責任から解放してあげてみてはいかがでしょうか?

他の記事、参考資料

最後までお読みいただきありがとうございました。

他にも、色んな記事を書いています。

参考資料
『朝日百科 世界の歴史 1 紀元前の世界』 1991年 朝日新聞社

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