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#12 ヒルに血を吸わせて病気を治す?!

19世紀以前には病気を治療する方法として、潟血(しゃけつ)療法とよばれるものが一般的に行なわれていました。

潟血療法は、血を体の外に出すことによって病気を治すというもので、現代でも一部で使用されています。血を抜く際には、主にヒルに血を吸わせていました。

なぜ、血を抜くことで病気が治るとされていたのでしょう?

体液のバランスの不調が病気を招く

19世紀ごろまで、医学では人体のことはほとんど分かっていませんでした。もちろん、ウィルスや細菌が多くの病気をひき起こすことも、知られていませんでした。

宗教的タブーや法的制約のために、人体解剖もできなかった。そのため医師であっても人体の解剖学的知識は17世紀になるまでごくかぎられていた。体中に酸素と栄養を運ぶ血流の仕組みも、意識や思考、感覚をつかさどる脳 や神経経路の役割も理解していなかったのだ。(『図説 世界史を変えた50の動物 』)

ローマ帝国時代のギリシャで有名だった医学者であるガレノス(129年頃~200年頃)は、血には心臓でつくられる動脈血と肝臓でつくられる静脈血
のふたつの経路があり、血液は体のあちらこちらでよどんだりたまったりして病気をひき起こすが、その血を外に出すことによって病気が治る
と考えました。

ヒルに血を吸わせる

ヒルは、現代の私たちにはあまりなじみがないですが、淡水の池や水路に住み、馬や牛、人間などの動物の皮膚に吸い付いて血を吸う生き物です。

また、血を吸うときはヒルジンという抗凝固剤物質を出して、傷口がかさぶたで固まらないようにします。ヒルの画像は、刺激的なので、調べたい方だけお調べ下さい。笑

ヒルって瀉血治療の時に血を抜き取るのに使えるじゃん!ということで、ヒルを使った瀉血治療自体は紀元前から行なわれていましたが、ガレノスと彼の支持者がそれをさらに広く普及させたのです。

ヒルによる瀉血治療は中世の時代に増え、 17世紀には全盛期を迎えました。

ヒルによる血はさまざまな症状で推奨され、とくに 赤面、炎症、高熱といった症状は体内の過剰な血液が原因と考えられていたため、ヒル治療がよく用いられた。気持ちが過度に高揚し、元気で快活すぎる精神状態をひき起こす「多血質」の症状も、 高血によって治療された。

奇妙なことに、ヒルは外傷の手当にも使われている。すでに出血で弱っている患者はさらに断続的な高血をほどこされて衰弱が激しくなり、死にいたることもあった。瀉血は病気子防にも用いられ、 出産や手術の際は決まって使われた。(『図説 世界史を変えた50の動物 』)

ヒルを使ったのは医者だけではありませんでした。

イギリスでは、理髪師も外科手術や歯の治療を認められていたので、医者にかかることができない貧しい人や戦場で負傷した兵士に瀉血治療や外科手術を行なっていました。

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これは有名な雑学ですが、床屋さんの前に立っているサインポールは、理髪師がかつて行っていた瀉血治療や外科手術をあらわしていると言われています。 

ポールの赤は血を、白は腕に色かれる止血用の包帯を、そしてポール全体は静脈を広げって血を出しやすくするために患者に握らせた木の棒を表現しているらしいです。

瀉血治療に使えるために乱獲されたことで、ヨーロッパの多くの地域でヒルは、ほぼいなくなってしまいました。医師や理髪師たちは、ヒルを遠くの地域からから持ち込んだり、捕まえて自分で繁殖させなくてはいけなくなっていました。

モーツァルトは元々体調を崩していたところに医者が瀉血治療を行なったことにより、死期を早めてしまったといわれています。

また、画像はイメージですが、こんな感じの壺に水を入れてヒルを飼育していたそうです。

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現代では

1620年代に、科学医療の発展によって、心臓による血液循環の仕組みが解明され、 ガレノスの「2つの体液説」は誤りであるとされました。

しかし、ヒルによる湾血治療は19 世紀末まで続きました。

また、1980年代には、医療用ヒルが手術で使われていました。先ほど述べたように、ヒルの唾液には強力な抗凝固剤である「ヒルジン」が含まれているので、移植手術のときに、ヒルを移植にする部位につけて、血流の凝固を防止するのです。

現在では人間がつくった「合成ヒルジン」が使われています。

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最後までお読みいただきありがとうございました!

他にも、色んな記事を書いています!

今回参考にさせて頂いた本は、いつもおなじみの『図説 世界史を変えた50の動物 』エリック シャリーン (著)、甲斐 理恵子 (翻訳) です。図が豊富で、わかりやすくて、知識がたくさん詰まっています!

使用させて頂いた画像
Tim Mossholder on Unsplash
Stephanie Allen on Pexels
Susann Engqvist on Pixabay

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