見出し画像

【6週目】 今週、社内で話題になった事例。(コンワダさん)

こんにちは、株式会社アーキロイドの津久井です。

毎週金曜日は、『コンワダさんの日』です。(今週、社内で話題になった事例から幾つかを紹介する日)
これまでの事例集は、こちら。では今週もいきましょう!

事例1:宇宙ビッグデータを活用した土地評価エンジン「天地人コンパス」体験版を提供開始

【概要】
 JAXA認定スタートアップ「天地人」が、「天地人コンパス Demo」の提供を開始しました。宇宙ビッグデータを活用した土地評価エンジンであり、衛星写真だけでなく、降水量などの気象情報、3D地形情報、地表面温度などの地球観測衛星データを活用し、土地の解析、可視化、データ提供を行います。利用者の持っているデータとの複合的な分析も可能です。農業、都市開発など様々な用途に利用できます。宇宙から稲の栽培環境をモニタリングする「宇宙ビッグデータ米」というプロジェクトなどに使われているそうです。

画像4

▲筆者も触ってみました。ベースマップは、コンワダさん2で紹介したmapboxでした。
都心部の夏の熱中症リスクのヒートマップ。筆者が加筆した真ん中の白い矢印は皇居を指しています。お堀に囲まれて涼しいのでしょうか。

画像5

▲長野県松本市の熱中症リスクも見てみました。都心部に比べるとかなり涼しげで、”避暑”の意味を思い知らされた気がします。

画像6

▲ピンポイントで、毎月の地表面温度(昼/夜)と降水量を表示してみました。その他に平均日射量や農地情報も表示できます。ベースマップも航空写真から地図に変更してみました。

画像3

▲GUIだけでなく、「天地人コンパスAPI」を通して情報取得、連携が可能(天地人公式サイトより)

【アーキロイドポイント】
 本事例集の頻出ワードである、土地、評価、航空写真...全部込みの事例を持ってまいりました。情報や技術は先行して持っていたり、秘匿することで他者に対して有利に動ける。これは戦略的には当然のことです。一方で、内容によってはオープンにして、公共の知、公共の財産とすることで、みんなが重要な方向性を間違わないようにすることも必要です。特に持続可能性を重視する今日においては、地球に関する物理的な情報(範囲や規模の大小を問わず)は、天地人コンパスのように開いていくべき、と考えます。
 例えば住宅産業を例に考えてみましょう。行政やデベロッパーが主導して大型の開発を行うときは、必ず環境問題や都市問題に神経を注ぎます。計画策定の上で、こうしたデータは非常に重要な役割を担うでしょう。(アメリカで都市の成長を優先して、水害が頻発するようになった話をコンワダさん1の事例6で取り上げています。)
 個人で土地を購入したり、住宅を建設する際も有用です。土地との出会いは縁とか運命と営業マンに言われたり、自らで焦って逃すまいと即決すると言うのは良くある話です。土地にしても住宅にしても、大体の人は初めての買い物です。何を信じて決断すれば良いのか、確信が持てないことがほとんどでしょう。こうしたオープンで正しい評価がどんどん増えていけば、自身、地域社会、引いては地球に対しても、良い選択ができるでしょう。

事例2:虎ノ門ヒルズのBIMモデルを活用した、避難訓練VR疑似体験アプリ(PLATEAU)

【概要】
 虎ノ門ヒルズのBIMモデルを活用した、避難訓練擬似体験アプリです。開発元は、国土交通省主導のプロジェクトPLATEAUコンワダさん4の事例1でもすこし紹介しました。)です。

画像5

画像6

画像7

▲実際に筆者も体験してみました。人が密集していると危険度を表示し、実際に動きにくくなります。サイレンや館内放送も流れるので結構リアルでした。

【アーキロイドポイント】
 現地に行かなくても、その建物の中で没入体験ができるのはワクワクします。筆者は日頃虎ノ門ヒルズに用事がないので、リアルでこの避難を体験することはなさそうですが、ここにお勤めの方にとっては結構リアリティのあるツールなのかもしれません。
 現状こうしたツールはまだ現実と瓜二つ、とまでは行きません。重要なのはツールの力を借りて「想像できる」か、だと思います。当社が提供するarchiroid.comには住宅のVR内覧機能があります。もちろん現実と見紛うクオリティにしていきたいですが、現状は、VRで体験することで空間の使い方が想像できて、また設計をブラッシュアップする、試行錯誤のループを提供できると思っています。

事例3:ローンを組まない住宅の建て方『HOUSE-KT(加藤小屋)』

【概要】
 設計者で施主である加藤氏の妻の実家の敷地に立つ家です。夫婦2人+子供2人の4人家族で、9坪の平屋。住まい方、使い方が変わることを前提に、最小限の予算、その中でできる魅せ方、将来的な可能性を担保する可変性のある構成、を実現しています。将来は、自身の設計事務所、ピアノ教室、ヨガ教室、店舗...など様々な転用を思案しているそうです。自己資金、または最小限のローンでミニマムな家を作り、必要に応じて増改築していくという、家づくりのあり方を体現しています。

【アーキロイドポイント】
 当社は以前、慶應大学松川研究室と軸組を使ったインスタレーションを制作するなど、低予算で、可変的でミニマムな躯体だけの販売を考えていました(ボツになってはいません)。

 低予算で、取得のハードルが低く、暮らしの変化に応じて自由に増改減築し、不要になったらリセールが効くし、部材単位での売買もできる。そんな住まいのあり方です。一方で、それをマスにむけて実現するにはハードだけでなく、住宅の資産性、資金調達の方法、保険など、ソフトで整備しなければならない部分がたくさんあります。
 「HOUSE-KT(加藤小屋)」は、施工費720万円で、魅力的で、使いやすそうで、生活の中で自由に改変できそうで、将来にも可能性をふんだんに残した状態が実現されています。コンセプトを含め見た瞬間に「これだ!これを建築家じゃなくて一般ユーザにもできるようにしたい!」と盛り上がったのでした。

 加藤氏も言及しているローンについて、少し深堀りしましょう。日本における住宅ローンは100年以上の歴史があり、給与所得者を対象とした住宅ローンは不動産会社発祥なんだそうです。戦前に阪急電鉄が自社の開発した戸建住宅を、月賦販売することから始まりました。戦後に金融機関による住宅ローンが始まり、1950年代に住宅金融公庫が設立され、戸建て持家を中心とする住宅政策を後押ししました。時を経て2007年に住宅金融支援機構が発足し、公庫融資が廃止されて、フラット35が導入されました。現在は、リフォームローン、借り換えローン、共用部分改修ローンなど様々なタイプのローンがあります。
 住宅は、多くの人にとって一生に一度の買い物であり、人生最大の買い物です。住宅と金融施策は切っても切り離せないし、その住宅は社会、家族、暮らし、住まいと、実に様々なレベルの”あり方”と密接です。

画像2

▲上田篤・久山政樹「現代住宅双六(すごろく)」(朝日新聞1973/1/3)
結婚→子育て→庭付き郊外一戸建て住宅(上がり)という、日本の給与所得者のパターンを示した。

画像1

▲厚生労働省「平成30年国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフで見る世帯の状況」より(リンク

 グラフを見ると、現代住宅双六が掲載された1970年代は最も多いのは4人家族でしたが、現在は2人世帯が一番多いのがわかります。特に都市部においては64%以上が2人以下世帯だそうです。(コンワダさん2参照)
 本事例集でも、例えば狭小化や非定住化など、暮らしや住まいの多様化に対応しようとする事例を度々取り上げてきました。当社では、「誰もがもっと自由に『暮らし』を考えられるようになってほしい。」という話を良くします。暮らしの箱としての住まいをもっと自由に多様にするには、ローンだけでなく、住宅取得のあり方全体(土地の取得の仕方、建物の設計の仕方、建て方、資金調達の方法など)がもっと多様でオープンであるべきだと考えています。

事例4:LiDARスキャナで部屋を3D化してBlenderでツーバイ材DIYの設計したらうまくできました

【概要】
 タイトルが、綺麗に概要になっているので割愛します。

【アーキロイドポイント】
 まだまだフローがプロ仕様ですが、DIYブームは巣ごもり生活で加速していますし、上記事例3にあるような可変性を前提とした暮らしが広がると、一般のユーザーも同じような体験ができる日も来るかもしれません。実は本note筆者も数ヶ月前、この事例と同じく洗面所空間にラブリコを使った棚をDIYしました。LiDARスキャンのないiPhoneため、レーザー距離計で天井の高さを図りつつ、紙とペンで設計しました。(後日Rhinoに起こしましたが。)最近、LiDARスキャンの事例を多くみるので、新しいiPhoneが欲しいです!

事例5:名作アニメの家をarchiroidでつくってみた 『サザエさん』『ドラえもん』他

 (今週もまた)宣伝です。3週連続で企画noteを出しました。archiroid.comで昔懐かしのアニメの家を再現した企画です。メチャクチャ面白いので是非ご覧ください!
 以下再現したアニメ:サザエさん、野比のび太、あたしンち、おそ松くん、おそ松さん、万事屋銀ちゃん、クレヨンしんちゃん、小林さんちのメイドラゴン、「耳をすませば」月島雫、「聖☆おにいさん」聖さんの部屋、ちびまる子ちゃん。

まとめ

 さて、今回も、「今週、社内で話題になった事例。」(通称:コンワダさん)をお読みいただき、ありがとうございます。お楽しみいただけているでしょうか。
 筆者自身は、今一度各事例を深く読み込むこともできますし、「アーキロイドとして(時には筆者として)噛み砕く」ことで、アーキロイドの思考の軸を確認することに繋がっています。
 気になったことや、面白い事例などがありましたら是非コメントください。来週も楽しみにしているよ、と言う方は「スキ」を押していただけると当社の(いや筆者の)励みになります。どうぞよしなに。

「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

バックナンバーはこちら▼


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?