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今週、社内で話題になった事例。 0002

みなさん、こんにちは。
株式会社アーキロイドの津久井です。

さて今週も、当社で話題になった事例をご紹介します。

事例1:データが豊富なMAP API|Mapbox Tiling Service

【概要】
 MapBoxが提供するMapBox Tiling Service(MTS)は、大量のデータセットから、カスタムベクタータイルセットへの処理をしています。データは継続的に更新します。様々な情報の可視化、ソリューションの提供が可能です。提供するデータは、COVID-19感染状況のトラッキング、新規不動産リスト、空域制限、石油生産量、5G周波数帯の割当...などなど。noteでは具体的な利用例が紹介されています。下記に一つ紹介します。

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▲Crowdfree COVID-19の感染ケースや米国における郡の境界線、POIなどを元に、ライブ更新されるソーシャル・ディスタンシング・インデックス。TripAdvisor作成。(実際に触ってみました)

【アーキロイドポイント】
 データビジュアライゼーション、データインフォマティクス、などがバズワードになって久しいですが、MAPと紐付いた情報の可視化は、研究者、起業家、開発者にとって大きなトピックの一つでした。
 当社が提供するarchiroid.comでは、ユーザーが敷地上(今は1種類)に、箱を入力して家を設計するツールを実装しています。リアルで、多様な、設計体験を提供するには、自由に敷地を選択できるようにしたい。ミニマムセットとしてはこれほどのデータ量や優秀なAPIは不要ですが、将来的にはユーザーが敷地を選ぶ指標として、適切な情報を可視化できるのは素晴らしいことです。

事例2:エヌ・シー・エヌが「非住宅版 SE構法 構造性能保証制度」を開始、中小企業の木造非住宅市場参入を後押し

【概要】
 業界初の、木造非住宅物件への瑕疵保証制度。対象はSE構法で建設された3,000平方メートル以下、4階建て以下、瑕疵担保保証期間は10年間で、瑕疵保証金額が最大1億円。
 木造非住宅建築市場は年々拡大傾向にあり、2019年には市場規模7000億円まで拡大。法改正などもあり、世界的な脱炭素社会の実現に向けても、木造非住宅建築物普及の機運は高まっています。
 その一方で瑕疵担保責任保険制度が義務化されている住宅と違い、保険制度がない非住宅物件では、施工者の追うリスクが大きい。中小の工務店、建設会社の非住宅市場への参入をサポートするために、本制度を開始したそうです。

【アーキロイドポイント】
 構造計算を含む構法と保険を組み合わせて提供できるのは、高度技術を保有する企業ならではの強みだと思いました。木造非住宅建築物が盛り上がっているのは、建築関係者の誰もが認めるところです。多くのプレイヤーが参入できるように、民間発でこういった制度を提供することに、大きな意義を感じました。

事例3:アーキセプトシティ 都市型の小型戸建住宅ブランド「KITO」を発表

【概要】
 株式会社アーキセプトシティがスタートした、自社事業の都市型小型戸建住宅ブランド「KITO」(キト)。「容積を地球と共有し、森や多様な生命体を都市へと流通する」をコンセプトに、敷地容積の25%を非建築容積と位置づけ、小型の建築と木々やビオトープを併設する。持続可能な環境社会を実現する為の選択肢だそうです。

【アーキロイドポイント】
 都心部の住宅地では、大きな家が取り壊れたあと、信じられないほど小さな家が3軒建った、という話をよく聞きます。みなさんも1つくらいはそういったケースをご存知なのではないでしょうか。相続、税金、中古戸建の市況、いろいろな要因があると思いますが、すべてが敷地分割狭小化の方向に作用しています。しかし、都市部においては64%以上が2人以下世帯であり、今後大きな家が不要になっていくとも捉えられます。
 社会や家族のあり方が変わっていく中では、これまでとは異なる指標で、良い暮らしを考える必要があるかもしれません。それがKITOでは25%を地球と共有する、小さなビオトープ、ということでしょう。当社も多様な指標に答えられる、多様なプランをシミュレーションできるよう、自社サービスを開発、運営しています。

事例4:MakerCase

FabCafe Nagoya Fab Magazine No.1 -端材の再利用で楽しくモノづくり! ホテルキー風キーホルダー制作レポート-

【概要】
 WEB上で、パラメトリックにボックスを設計し、カットデータをダウンロードできるサービス。設計できるボックスは、Basic Box、Polygon Box、Kerf Bent Boxの3種類で、データのフォーマットはSVG, DXFの2種類。デジファブ機器での加工を前提としているので、設計だけでなくデータについても、使用する機材や仕上がりに合わせて調整が可能です。
 実際にPolygonBoxを作ってみました。

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▲大きさ、Polygonの辺の数、板材の厚さ、ジョイントの種類や大きさなどがパラメトリックに。

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▲カットデータ。ラベルの有無、色、線のフォーマット(線幅、カット線内外の色)、切り口(レーザー直径の半分)、面取り(ルータービットの直径)などが指定できる。

【アーキロイドポイント】
 作れるものは非常にシンプルですが、設計がWEBで完結するのが良いですね。入力に応じて、動的に出来上がりが変わるというのが、設計知識のない一般ユーザーにとっても使いやすいと思います。設計者、製作者でも同じモノを作るのならCADではなく、このツールを使うのではないでしょうか。
 当社も住宅の領域で同じように、シンプルなUIで、動的で、WEBで完結して、一般ユーザーでも使いやすい設計ツールを(目指して)開発しているので、こういった先行事例を沢山収集していきたいです。面白い情報があったらぜひ教えて下さい。

事例5:視覚・距離情報を有する点群に建築空間の分析と設計を接続することは可能か?

【概要】
 先週、0001の事例2で紹介した記事にもプレゼンターとして登場した
新井崇俊氏の論考。
 都市・建築に関する研究の目的は現象の理解、及びそこから導かれる知識を計画/設計に活かすことに大別される。思考プロセスにおける分析と、設計の操作は非対称で、必ずしも分析が直ちに設計に生きるわけではないが、計量的アプローチに基づくことで、ある程度横断的な検討が可能になる。
 ケーススタディ「東京大学目白台インターナショナルビレッジ」の計画では、平面に3万点の点群を散りばめた。各点同士を障害物などにぶつからずに結ばれるか、可視/不可視の状態を計量した。その結果、キッチンは個室を含む多くの場所から視覚的アクセシビリティが高い中心的な場所になっている事がわかった。
 また、視点を太陽にして点群と結べば日射量の計算に、同点群を母点とするドロネー網を描けば、任意の二点間の障害物を考慮した通過移動量の算出に、それぞれ応用できる。各地点の通過頻度分布から、どの地点で居住者の偶発的な交流が起こりやすいかを把握することができる。
 このように視覚と距離の空間情報を把握することで、建物内で起こるかもしれない現象を理解することができる。これを順問題と呼ぶと、所望の空間情報の分布から設計解(室や建物エレメントの配置)を導出することを、逆問題と考えることができる。
 コロナのパンデミックを経て空間に対する要求は、これまでと変わってくる可能性がある。新たに視覚・距離情報をベースとした議論は有効なのではないか。(逆問題の設計プロセスを新井氏はエンジニアドデザインと呼ぶ)

【アーキロイドポイント】
 アーキロイドでは、視覚・距離情報を取得、解析し、別の空間に再現する試みを以前より行っています。いずれarchiroid.com上に登場するかもしれません。これまで、住宅設計をプログラムに書き換える活動をする中で、評価の指標とその妥当性について、社内で度々ディスカッションをしてきました。この記事を読んで、本note筆者としては下記の部分が非常にストンと落ちたところです。

自然科学は、「自然/存在→現象」の関係性を理解(背後の法則を発見)することを目的としており、発見されればそれを応用して所望の現象を再現することができる。一方で都市・建築では「要求・構想→空間→現象」という新たな関係性が生まれており、「要求・構想→空間」の時点で設計者の経験とノウハウによる操作が介在。「空間→現象」は人的/自然的刺激が加わることがあり、記述さえ困難。しかし空間の量的側面に着目すれば、現象は「定量化された現象」まで抽象化可能な場合があり、自然科学同様に背後おの法則が発見可能となる。(要約) 

事例6:Deepblocks

【概要】
 MapBoxを使ったサービスとして、事例1のnote内に紹介されていたDeepblocks。サービスの概要は公式チュートリアルがわかりやすい。MAP上で、不動産開発シミュレーションができるサービス。外形線、用途などを入力すると、ビルのボリュームが3Dで立ち上がり、更にセットバックをパラメトリックに変更して、モデルの調整が可能。収益性レポートなどの出力もできる。現在、ゾーニング、人口統計、区画データなどの情報は、アメリカの43の都市に限られるが、建物入力自体は全世界で可能。

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▲筆者も実際に、新宿中央公園内にタワーを建設してみた。

【アーキロイドポイント】
 地図上の自由な土地で、ボリュームスタディと収益性の確認ができるのはすごいと思いました。操作も簡単で、作成していて楽しいです。プロが時間をかけて試算する必要があったことを、素人でも簡単なUIを通して「少しわかる」(あわよくばすごいわかる)というのがグッと来ました。

事例7:フィットネスを賭け事にするアプリCadooが約1.7億円調達

【概要】
 様々なレベルで、フィットネスの目標を設定し、もしもクリアできなかったら掛け金が没収。没収された掛け金は、クリアできた人に分配されるというアプリ。

【アーキロイドポイント】
 登録した時間に起きられなかったらお金を取られるアプリ、というのがちょっと前に話題になりました。お金を失うという恐怖心を、モチベーションに変えるということでした。Cadooは、それに加えてクリアする限りは常にお金がプラスになる可能性がある、というのがポイントです。この直接的すぎとも言える、インセンティブの設計が上手いですね。記事によると調達先の中に、学生を中心としたDorm Room Fund(ドームルームファンド)というのがあり、アメリカにはそんなものもあるのか、と驚いた筆者でした。

事例8:コスメとギターとエフェクターのビジネスモデルはほぼほぼ同一

【概要】
 コスメもエフェクターも効果や種類が多すぎて、素人にはわからない、ハードルが高い。でもちょっと調べて、少し試すうちになんとなく自分にあうのがわかったりして楽しい。そしてハマりだすともう沼で、同じ効果でも新しいのが出たら買い集めたりしてしまう。

【アーキロイドポイント】
 家は多くの人にとって一生に一度の買い物です。だから家を買う時というのは、ほとんどの人が初めてです。知識もなければ好みもわからん、という状態でしょう。選択肢がたくさんあったって選べないし、かといって適当に選んで失敗もできないのです。家づくりでは、コスメやエフェクターのように、徐々に楽しくなっていって気づいたら沼にハマる、ということはなかなかできません。archiroid.comは、家を自分で作ってみる機能と、他の人の作った家も含めて検索して比較できる機能を実装、提供しています。少しずつ分かって、楽しくなって、試行錯誤で沼にハマる、そんな体験を提供できるように、サービスをアップデートしています。


 先週の金曜日に初めてnoteを公開する時、タイトルを「今週、~~」としたことで、早速一週間後の自分を苦しめる結果となりました。なんとか金曜日に出せてよかったです。ちょっとタイトルが長いので通称、略称を考えているところです。継続して行けるように、応援よろしくお願いいたします。他の企画も仕込み中ですので、ぜひフォローしてお待ちいただけると幸いです。


「今週、社内で話題になった事例」 について
株式会社アーキロイドの社内で話題になった事例(ニュース、リリース、書籍、動画、論文などなど)のうち、いくつかをご紹介します。元記事の配信時期は必ずしも今週とは限りません。数ヶ月前、数年前のものもあるかもしれません。

社外にこれを発信することで、
①アーキロイドメンバーが日々どのようなことに目を向けているのか、を知ってもらいたい。
②せっかく読んでもらえるなら有益な情報をお届けするために、自分たちの情報感度をもっと高めていきたい。
という目論見があります。

メンバーも大半が30代に差し掛かってきたので、備忘録という意味合いが一番強いかも。ご笑覧ください。

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