見出し画像

一級建築士試験|コロナ禍において受験者に課せられる試練と受験手数料の返還措置

7月3日付で、公益財団法人建築技術教育普及センター(以下「センター」とします。)のホームページにおいて、受験手数料の返還について下記内容が公表されています。

また、6月に入り予定通りの日程で実施すると公表した際に、新型コロナウイルス感染症などへの対応として、『新型コロナウイルス感染症の疑いがある方は、必要に応じて保健所やかかりつけの医師等に相談の上、当日の受験を控えていただくようお願いします。』と掲載しています。

令和2年一級建築士試験における受験手数料の返還について 

国土交通省からの要請により、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の抑制の必要性を踏まえ、受験ができなかった方について、濃厚接触者である、発熱等がある、基礎疾患がある等の、新型コロナウイルス感染症に関連する健康上の特別な理由が存すると診断書の提出等により認められた場合には、手数料を返還いたします。
(センターのホームページより)

店舗等への休業要請と補償の問題と同様、受験を控えることを要請する以上、受験手数料は返還するということになるのでしょうか。センターのホームページにある『感染拡大の抑制の必要性を踏まえ~手数料を返還いたします。』という文面は、感染拡大抑制の一環としての受験手数料の返還であると受け取れます。つまり、「お金は返しますので、無謀な受験は控えて下さい。」という解釈です。

センターや国土交通省からすれば「受験を控える」ということになるのでしょうが、受験者にとっては「受験を断念する」ということになります。コロナ禍の「禍」は、「災い」「災難」「不幸なできごと」を意味する言葉ではありますが、「控える」と「断念する」という言葉の重さは、置かれた立場によって違ってきます。

以下の要件により受験する権利が成立するものと仮定します。
①試験対策コスト(お金、時間、努力)
②学科試験合格(※設計製図試験受験の場合)
③受験手数料

学科試験の受験においては①③が要件になり、設計製図試験の受験においては①②③が要件になってきます。受験を断念する対価として、国土交通省は、③のみを担保することで、感染拡大の抑制を図ろうということなのでしょうか…。

設計製図試験の受験要件のうち、受験者にとっては②が最も重いものだと思います。学科試験に合格しなければ設計製図試験は受験できません。学科試験の合格により設計製図試験を3回受験できる権利を獲得できます。

設計製図試験における2回目、3回目受験者にとって、受験を「控える」ということは、学科試験の合格によって獲得した設計製図試験を受験できる3回の権利の一つを「断念する」ことになります。特に、3回目受験者にとっては、学科試験受験からやり直すことを意味します。

以下の通り、建築士法施行規則第12条が改正され、今年の1回目受験者(学科からの受験者)から新規則が適用されますが、2回目、3回目受験者は、旧規則に基づく縛りを受けての受験となります。

建築士法施行規則第12条
(新規則)
学科の試験に合格した者については、学科の試験に合格した一級建築士試験(以下この条において「学科合格試験」という。)に引き続いて行われる次の4回の一級建築士試験のうち2回学科合格試験の設計製図の試験を受けなかった場合においては、3回の一級建築士試験に限り、学科の試験を免除する。
(旧規則) 
学科の試験に合格した者については、その申請により、学科の試験に合格した一級建築士試験に引き続いて行われる次の2回の一級建築士試験に限り、学科の試験を免除する。

繰り返しになりますが、試験対策コスト、学科試験合格、受験手数料といった要件がそろうことで、設計製図試験を受験することができます。

前述の通り、国土交通省からの要請によるセンター公表の受験ができなかった場合に受験手数料を返還する条件は、『新型コロナウイルス感染症に関連する健康上の特別な理由が存すると診断書の提出等により認められた場合』とされています。

感染拡大の抑制や受験者の置かれる状況を本気で考えるなら、上の理由により受験できなかった場合に返還するのは、受験手数料ではなく、設計製図試験を受験できる権利(学科試験の免除1回分)ではないかと思います

センター公表の文面にある『新型コロナウイルス感染症の感染拡大の抑制の必要性を踏まえ』という主旨に拘ります。

国家行政組織法第12条第1項に、『各省大臣は、主任の行政事務について、法律若しくは政令を施行するため、又は法律若しくは政令の特別の委任に基づいて、それぞれその機関の命令として省令を発することができる。』とあります。

つまり、省令すなわち施行規則が、国土交通大臣の裁量によるものであるなら、設計製図試験の受験者に対し、特例的な対応ができないものかと考えてしまいます。

最後に、受験者各自のことになります。今年に限らず、学科試験、設計製図試験とも、頭・心・体を整え試験会場へ向かうことが、実力を発揮する上では何より大事になってきます。

特に今年の場合は、体調を整え試験会場へ向かうことが最も重要だと思います。感染症の疑いが生じれば、心がかき乱されることになりますし、最悪受験を断念することにもなりかねません。こういった状況にならないようにしていくことも試験対策の重要事項の1つに加える必要があり、ここが例年とは異なる受験者の心理的負荷になってきます。

コロナ禍であるが故の試練が受験者に課せらますが、体調を整え乗り切ることは、要求図面を完成させることと同等に、重要なことであると思います。


建築士の塾ロゴ 改1


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
心ある一票、ありがとうございます
11
企業内一級建築士資格取得研修の23年間の実績。前提となる基礎知識を積み上げながら、⾃分がわかりたいところまで辿り着くことが理解。減点要素となり得る問題点のうち、回避すべきものと許容できるものを取捨選択していくことが判断。co-師(学びあう共育者)というスタンスで発信します。