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映画感想~ジョー・ブラックをよろしく~



■1998年公開の映画

あらすじを見て面白そうなのだと思いネトフリで鑑賞することに。もしかしたら有名なのかもしれないが映画に詳しい方ではないので完全初見。
25年前とずいぶん昔の作品だが映像は特に違和感なく観れた。オーバーサイズのスーツを着るファッションセンスは素直にダサいなと思ったが時代感なのかキャラ付けなのかはよく分からなかった。まぁ問題なし。

■人間界にやってきた死神


↑文字で見るとDEATH NOTEを彷彿とさせる笑。しかし普通の人間の姿形をした死神が現世にやってきて、人間とのちぐはぐなやり取りをするというのは伊坂幸太郎の「死神の精度」に近い。というか死神の精度がこの作品から着想を得たのではないかと思う。(知らんけど)
あらすじは、死神ジョー・ブラックが余命短い大富豪のビルの元にやって来て人間界に興味があるので案内をしろと言ってくる。案内役をしている間は延命されるということでビルは仕方なくその役を受け入れることに。表向きはビルの相談役と言うことでビルが経営する会社の会議に出席したりもする。ジョーは人間界に慣れていないので発言や挙動がいちいちコミカル且つ不審。周囲も警戒するがビルの娘であるスーザンとジョーが徐々に恋に落ちていくことに・・・という展開。

■死神ジョーブラックの目的は?


序盤ではジョーの目的がいまいち見えてこない。人間に興味があるからビルに付いて人間の世界をひたすら見て回るのだが、ビル自身が家と会社の往復ぐらいしかしていないのでジョーが話す相手も、ジョーが体験することも非常に限定的に見えてしまう。(映像になっていない裏設定でどこかに行っている。みたいなこともなさそう)
人間界に興味があるならもっと色んな所に行って色んなものを見て、体験してくればいいのに、とお節介ながら思ってしまう。

■孤独を憂う死神


しかし、その秘密は物語の後半で明らかになる。ジョーはヒロインのスーザンが働く病院に度々訪れるのだが、そこで余命の短い老婆と出会う。老婆はあの世に近い存在ということだからか、ジョーを見て現世のものではないことに気づく。普段は誰にも死神であるということを明かさないジョーだが彼女には自分の正体を打ち明ける。そんな彼女に対してジョーが、スーザンに恋をしたことを伝えるシーンがあるのだが、老婆の返答は「あなたはここに居るべき存在ではない、私と一緒にあの世に行こう」というものだった。
本質を突いた老婆の言葉に普段は冷静なジョーが動揺する。そして「孤独は嫌だ」と言う。
「ここには自分を受け入れてくれる人がいる。だからここに居たいんだ」と。このシーンでこの死神がなぜ現世にやって来たのかが分かる。おそらくジョーはあの世(死神が住む世界)で孤独だったのだ。作品の中のジョーの姿は俳優である(若かりし頃の)ブラッドピットだが、死神としてのジョーは無限の時間を生きる、人間よりもはるかに長い年月を生きている存在である。もしジョーが住む世界ではジョー以外の存在がいないか、もしくはいたとしてもジョーが孤独を感じるような環境であったとしたら。それはどれほど寂しく悲しいことだろう。
最初は寂しくも悲しくもなかったのかもしれない。しかし、おそらくジョーはある時気づいてしまったのかもしれない。人間たちは自分と違って他者と共存しているということを。誰かと共に生きているということを。そんな人間界に憧れを持ち、誰かと繋がることを求めてやって来た死神こそがジョー・ブラックなのかもしれない。

■自然に笑う死神


観ていて印象的だったのは、ジョーが人間界にやって来て初めて笑ったんじゃないかというシーン。それまではクールな表情の多いジョー。笑う場面もニヤッとする程度のものしかなかったが、ビルが娘のアリソンを泣かせてしまい謝罪も込めて嫌いなケーキを頬張るシーンがあるのだが、家族一同笑っている中でジョーも笑っているのだ。ふと「あれ?ジョーが笑うのってこれが初めてじゃないか?」と思った。別に映画を観返して確認したわけじゃないから間違っているかもしれないが、人間の細かい感情を読み取らないジョーが思いやりという感情からビルが取った行動を笑うというのは何だか感慨深いような気持になった。

■恋愛する死神


結局のところジョーがしたことは恋だったのか、もしくは依存だったのか。判断が難しい。ジョーは人間界に来てビルの発した言葉に強く影響されている。「恋を震わす情熱こそが生きるということだ」というビルの言葉(娘に対してのものだが)に魅かれたと言っているシーンがある。孤独を感じた死神はこのビルの言葉を受けて恋愛こそが生きるということ。恋愛をすることで自分は生を実感し、孤独から解放されると信じたのではないだろうか。
だとするとスーザンに対する関係性も最初から恋愛ありきで、例えるなら童貞の初体験のような特別ではあるが視野が狭く、独りよがりな恋愛だった可能性もある。
最終的にジョーはスーザンを残し、寿命の尽きたビルを連れてあの世へ帰ることになるが、彼はこの体験を経てあの世でどう過ごしていくのだろうか?
恋愛こそが自分の孤独を打ち消すものだと信じたままであれば、おそらく帰った先のあの世でも苦しみが待っていることだろう。スーザンに想いを馳せ自分が掴めたかもしれない、輝きに満ちた(ように見える)生活を手放したという感覚は辛く消しづらいものかもしれない。一方で、自分にはビルやスーザン、それにクインスや老婆といった心を通わせ合えた人間がいたことも事実。彼らとの繋がりをもってして孤独から解放されたと感じられればジョーが人間界に来た意味もある。どうかジョーには後者に近い考えを持って、人間界に来たことをプラスに捉えていて欲しいものだ。

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