読書感想文(320)『リルケ詩集』(富士川英郎訳)

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回は、湊かなえさんの『母性』に引用されていることで最近話題にもなった、リルケの詩集です。
ただ、読もうと思ったきっかけは、平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』で、ギタリストがリルケの詩を元にした曲を理解する為に、リルケの詩を理解しようとしていたことです。
これを読んだ上で、もう一度『マチネの終わりに』を読もうと思ったのです。
しかし、確か作中で取り上げられていた「ドゥイノの悲歌」はこの新潮文庫に収録されていないことに途中で気づきました。
今度岩波文庫で読んでみようと思います。

感想

全然理解できなかった!!というのが正直な感想です。
例えて言うなら、現代詩のような訳の分からなさです。全然例えになっていませんが……。現代アートのような、といえば伝わるでしょうか。とにかく難解でした。
きれいな言葉を使えば、「深淵のような」とか「雲の上のような」とか言えますが、結局わからなかったのです。
ただ、勝手に思った範囲で言うなら、どことなく魂が自由に解放されているような印象を受けました。
自然を見ている時、その自然と一体化しているような……。
解説では「無常観」という言葉が使われていましたが、どちらかといえば「一即多」のような印象を持ちました。

今回も感想は上手く書けそうにないので、とりあえずいいなと思った詩をいくつか引用しておきます。

「僧院生活の巻」(一八九九)から

私がその中から生まれてきた闇よ
私はお前を焰よりも愛する
焰は世界を限って
或る範囲のためにだけ
かがやいているが
その外では何ものも焰を知ってはいないのだ

けれども闇はすべてを抱いている
いろいろなものの姿や 焰や 動物や 私を
闇は人々やもろもろの力を
自分の中に引き入れている――
(以下略)

P15,16

世の中にある「明るさ」もまた、このような性質を持っているかもしれません。

海の歌
   カプリ・ピッコラ・マリーナ

大海の太古からの息吹き
夜の海風
 お前は誰に向って吹いてくるのでもない
このような夜ふけに目覚めている者は
どんなにしてもお前に
堪えていなければならないのだ
 大海の太古からの息吹き
それはただ古い巌のために
吹いてくるかと思われる
はるか遠くからただひろがりだけを
吹きつけながら
 おお 崖のうえで 月光を浴びながら
ゆれ動く一本の無花果の樹が
なんとお前を感じていることだろう

P107,108

時空を超えた因果律のようなものを感じ、なんだかいいなと思いました。

ゆたかな林檎よ

ゆたかな林檎よ 梨とバナナよ
スグリよ……これらはみんな口のなかへ
死と生を語りかける……ほのかに私はそれを感じる……
子供の顔からそれを読み取るがいい
(中略)
君たちが林檎と名づけているものを 敢えて語るがいい
この甘さ はじめに濃くかたまって
それを味う口のなかでそっと起ち上り

清らかになり 目ざめ そして透明になるものを。
それは二重の意味をもっている それは太陽のものであり 地上のもの 此の世のものでもあるのだ
おお この経験よ 感触よ 歓喜よ――大きな!

P188,189

今月は青森に行く予定なので、その時に思い出したい詩です。

おわりに

今回あまりにも難解だったので、100分de名著にないかな〜と探してみましたが、残念ながらありませんでした。
でも、「ドゥイノの悲歌」はやっぱり一度読んでみたいなと思っています。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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