読書感想文(112)田中貴子『猫の古典文学誌;鈴の音が聞こえる』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

この本はだいぶ前に買ったのですが、タイトルを見た瞬間に「読まねば!」と思いました。
だって猫ですよ、猫。今の職場に黒猫がいるのですが、とっても可愛いのです。

感想

論文チックだったらちょっと読むのがしんどいかなあと思いながら読み始めたのですが、期待以上に面白かったです。
色々と書きたい話題があるのですが、長くなり過ぎるので一つか二つ紹介したいと思います。

例えば「猫に生まれ変わる方法」がいくつか書かれていました。

・世間をあざむいた法師は、来世で猫に生まれ変わる。(『根本説一切有部毘奈耶』)
・邪悪で貪欲にして飽きることのない者で、親友を離反する者は猫に生まれる。(『分別業報略経』)
・長く猫狗飼っていると、これらはよく物を損害するので飼ってはいけない。(『明曠戒疏』)

P63

仏教では、猫はあまり良く扱われていないそうです。
別の章で書かれていましたが、涅槃図にも猫はあまり描かれないとのことです。
いくつか描かれているものもあるそうですが、それを「これは猫ではない」と否定している所有者もいるとか。
猫が何故涅槃図に描かれないかという説についてもいくつかお話があるようです。

あとは『猫の草子』という作品もあり、これは御伽草子の一つだそうです。
著者が訳を書いてくれているのですが、是非とも原文で読んでみたいと思ったので、恐らくそのうち読みます。
ちなみにストーリーは、「猫を綱に繋いではいけない」というお触れが出たことによって、鼠が厳しい状況になり、鼠や猫がそれぞれの言い分を法師に訴えかける、といった話です。
その中で、鼠が詠んだ歌もあったので、紹介しておきます。

・ねずみとる猫の後ろに犬のゐて狙ふめのこそ狙はれにけり
・あらざらんこの世の中の思ひ出に今ひとたびは猫なくもがな
・じじといへば聞き耳たつる猫殿の眼の内の光恐ろし

P126

二首目は百人一首「あらざらんこの世のほかの思ひ出に今ひとたびのあふこともがな」(和泉式部)が引かれています。
しかし、他の2首は元の歌が思い浮かびませんでした。わかる方がおられましたらお教えください。

歌といへば、猫を詠んだ歌や句もいくつか紹介されていました。

・浅茅生の小野の篠原いかなれば手飼ひの虎のふしどころみる(『古今和歌六帖』952番)
・人心手飼ひの虎にあらねどもなれしもなとかうとくなるらん(『夫木和歌抄』12918番)
・余所にだによどこも知らぬのらねこのなく音は誰に契りおきん(『夫木和歌抄』13043番)
・猫の恋やむとき閨の朧月(『己が光』・芭蕉)

P56,57,154

和歌では「手飼ひの虎」と詠まれることもあったようです。
大学時代にこの本に出会っていれば、『国歌大観』のデータベースを使ってもう少し詳しく調べられたのですが……。

他にも禅僧がよく猫を可愛がっていた話や、平安貴族は犬より猫派だった話など、色々と面白い話が載っていました。
そのうちまとめてみたいなーと思います。そうすれば友人と猫の話になった時にネタになるかもしれません。
でも「猫可愛い〜」って言ってる中で「そういえば『猫の草子』では……」とか話し始めるの、結構嫌ですね笑。
時と場所をわきまえて色んな人に布教したいと思います。

おわりに

古典ってやっぱりまだまだネタの宝庫だな〜と思います。
自分が高校生の頃、古典の面白いネタをネットで検索しても上手く見つけられなかったので、そういうまとめサイトをいつか作れないかな〜と思っています。
もしかしたらもうあるかもしれませんが、あったら嬉しいです。
そんなサイトがあれば中高の先生も授業で使うことができると思います。
まだ実現の目処は立っていませんが、やりたいな〜と思っていればいつか実現するので、やりたいな〜と思っておきます。

ということで、最後まで読んでくださってありがとうございました。


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