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人とアンドロイドの関係性/ エンジニア 弓場亮介

社員の愛読書や影響を与えたエンタメ作品を通じて、個人を掘り下げていく連載シリーズ。読み込んだ当時のことやそれからの活動、今現在仕事を通じて社会に実装していきたいことなどをインタビュー形式でお届けします。

初回は新規事業開発部の弓場亮介 (ゆばりょうすけ)さん。エンジニアとして活躍する弓場さんに影響を受けた作品を聞きました。

弓場 亮介
1994年生まれ。神奈川県横浜市出身。
2021年電気通信大学大学院情報理工学研究科修士課程終了。修士(工学)
現在、株式会社アラヤ新規事業開発部エンジニア。学生時代からロボカップへの大会出場や開発インターンシップ、研究活動を通して様々なシステム開発に取り組んでいる。趣味はアニメ鑑賞、ライブ配信。

——弓場さんにとって印象的な作品はなんですか?

特に印象に残っているのは「イヴの時間」というアニメです。幼い時からガンダムやコードギアスは見ていましたが、ロボットに対しての見方が変わったのはこの作品です。

——どんな作品なのでしょうか。

人型ロボット、つまりアンドロイドが社会実装されて間もない近未来の話です。さわりだけ紹介すると、主人公は家事用アンドロイドの行動履歴に、とある喫茶店の存在を発見するんです。記録を頼りにたどり着いたのは、人間とロボットの区別をしないというルールを掲げる喫茶店「イヴの時間」。そこでは、アンドロイドが人のように振る舞い、コミュニケーションを楽しむ姿がありました。喫茶店での出会いを通じて人とアンドロイドの関係性に主人公の心が揺れ動いていく…といった話です。

——特に印象に残ったのはどういった部分でしょう?

僕はこの作品を高校生の頃に見たのですが、それまでは戦闘ロボット系が多くどちらかというとツールのような存在でした。
一方で、このイヴの時間で描かれるのは日常の中に溶け込んでいるアンドロイドの生活や、人との関係性による葛藤といった、双方が同じ生活を土台として比較的対等な立場として物語が繰り広げられてるんですよね。またアンドロイドと人の社会的な役割を背景とした法律のようなものもあって、もしアンドロイドが普及したらこういう未来になるのかなと想像が膨らみます。
喫茶店を舞台装置とした人とアンドロイドの関係性が丁寧に描かれていて、見終わった後に感じたことのない余韻があったなと思います。

——なるほど。人間とアンドロイドの間にある種の法律のようなものがあるとはどういうものでしょうか。

この作品の中ではSF作家のアイザック・アシモフが提唱したロボット工学の三原則が下地にあります。

第1条:ロボットは人間に危害を与えてはならない。
第2条:ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。
第3条:ロボットは前掲第1条及び第2条に反する恐れがない限り、自己を守らなければならない。

— 2058年の「ロボット工学ハンドブック」第56版、『われはロボット』より

特に第2条の命令に服従しなければならない。というのが物語の大事な要素になります。これはアシモフの作品内の原則なんですが、他の創作物や、現実世界でもロボットやAIなどの「近未来予測」の話になるとたまに耳にします。古典と言えるSFの設定が最近の作品や議論にも出てくるんですからすごい影響力ですよね。この三つが本当に人間とロボットにとっていいものなのかも考えると面白そうですね。

——高校生でこの作品を見たあと、大学ではやはり工学系に進んだのですか?

この作品や他のSF作品の影響もありますが、もともと何かを作ったりするのが好きで工学系の学部に進みました。領域も強化学習や画像認識などのAI分野やロボット工学について学んできました。学部時代は機械の設計などをやって研究室ではガッツリと情報系の研究をして、その中でもロボカップに出場し、家庭用ロボット部門で優勝した経験もありました。

ロボカップジャパンオープン2018
出典:http://www.rlg.sys.es.osaka-u.ac.jp/karaage/report.html

——素晴らしいですね!大学でもロボットに触れることは多かったんですか?

そうですね、大学の授業や研究室配属で色んなロボットやエージェントに関わりました。特に研究室見学の時にあったロボットのデモが印象的でした。例えば、Baxterという腕を持つ産業用ロボットがいるんですが何かをしてもらうということ以外に、水が入ったペットボトルで、触覚、視覚、聴覚を通じて水を感じさせたり、ぬいぐるみ握らせたり、ロボットに実世界を教えていく。そういう未知なるものに触れてある意味人間のように学習する過程が興味深かったです。

あとは、AI同士の役割分担の研究も印象に残ってます。
シミュレーション上でエージェントが鬼ごっこをするんですよ。

——鬼ごっこですか。

ええ、はじめは逃げ方が上手くはないんです。
ただ、逃げる側がうまく手をとりあう、つまりAI同士の連携をすることで上手に逃げられるように学習していく。AIやロボットが単独ではなく人や他者とのインタラクションを通して何かを得ていく。いわゆるヒトの行動発達的な要素をAIやロボットに適応して考えることはとても楽しかったですね。

——なるほど、ロボットとのコミュニケーションという点では「イヴの時間」のテーマに通じるものがありますね

そうかもしれませんね。AIやロボットについて、技術的、産業的な実装にとかく注視しがちですが、他者との関わりという点でも社会実装を見ていくのも大事ではないかなと思います。

——AIや脳研究に関する業務を行っているアラヤではどういうことをしていきたいですか?

興味としては「動き」を通して人間の理解を深めたいと思います。今、アラヤではヒトの動きのデータに関する仕事をしています。実際のヒトの動きやノウハウを情報化してコンピュータ上に蓄積していって、それをいつかAIやロボットに応用できたら面白いなと思います。

——いつか「イヴの時間」のようなアンドロイドがアラヤ発でできたらいいですね。期待してます!ありがとうございました。

ありがとうございました!

Editor 浅井順也

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