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論文まとめ89回目 NATURE(科学) 2023/9/6

  1. 心臓のような「脈動する流れ」がパイプ内の乱流を減少

  2. RNAの構造が細胞内のタンパク質生成を動的に制御

  3. リチウム硫黄(Li-S)バッテリー内部の化学反応を「超詳細」に観察し、新しい変換メカニズムを発見!

  4. 量子もつれを使って原子時計の精度を「標準量子限界」を超えて向上

  5. 製薬業界向けのエコな電気化学的方法!

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなNATUREです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。


一口コメント

Turbulence suppression by cardiac-cycle-inspired driving of pipe flow
心周期に着想を得た管内流れの駆動による乱流抑制
「心臓がどうやって「ズボンのベルト」をゆるくしたりきつくしたりして、血液がスムーズに体中を流れるように工夫しているか、それを学びました。この「自然のスムーズオペレーター」のテクニックを使えば、ガスや水、石油を運ぶ大きなパイプもスムーズになる。つまり、心臓が教えてくれることで、エネルギー代も節約できるんですよ!自然界ってすごい!」

Pervasive downstream RNA hairpins dynamically dictate start-codon selection
下流に広く存在するRNAヘアピンが、開始コドン選択を動的に決定する
「RNAってのは、細胞内で「料理長」みたいなもんで、どの食材(タンパク質)をどれだけ使うか指示出してるんですよ。で、この研究では、その「料理長」がどうやってメニュー(タンパク質)を変えるか、つまり「今日は寒いから鍋にするぞ!」って決めるようなメカニズムがわかったんです。この発見で、将来的には「細胞の料理」をもっと上手にコントロールできるようになるかもしれないんですよ!」

Visualizing interfacial collective reaction behaviour of Li–S batteries
Li-S電池の界面集団反応挙動の可視化
「バッテリー界の"ダークマター"とも言えるリチウムポリサルフィドだけど、この研究でそのミステリーが少しずつ解けてきたよ。結果?もっと長持ちして、もっと強力なバッテリーが作れるかも!電動車で遠出する?これからは余裕かもね!」

Quantum-enhanced sensing on optical transitions through finite-range interactions
有限距離相互作用による光遷移の量子センシング
「これは時計が「ずば抜けて」精度が高くなるような、まるで「時計の超能力」を手に入れたような研究です。量子もつれっていうのは、遠く離れた粒子同士が仲良く手を繋いでるようなもんです。この手を繋いでる力を使って、時計が「今、何時か」って言うのが、ものすごく正確になります。つまり、量子もつれが時計をスーパーヒーローにするんです!航海でも、スマホの通信でも、科学の研究でも、この「超時計」が役立つんですよ。」

Quinone-mediated hydrogen anode for non-aqueous reductive electrosynthesis
非水系還元的電気合成のためのキノン媒介水素アノード
「みんなが知ってるような薬を作るには、いろんな化学反応が必要なんだよね。でも、その反応で使う材料や方法って、環境に悪いことも多いんだ。そこで研究者たちが考えたのが、「水素ガスと特別な化学物質(アントラキノン)を使って、エコで効率的な反応をしよう!」っていう新技術。小規模なテストから始めて、最終的には大量の薬の原料も作れるようになったんだ。これで製薬業界も地球もウィンウィン、まるで環境版の「錬金術」みたいなもんさ!」


要約

心周期に着想を得た管内流れの駆動による乱流抑制

一般的なパイプやチャンネル内の流れは通常乱流ですが、心臓のように脈動する流れを模倣することで、乱流を抑制することが可能であると研究は示しています。

①事前情報 :
パイプやチャンネルの流れは、通常乱流であり、摩擦損失やポンピングコストが高い。一方で、心臓(特に大動脈)の流れは高い流速であっても乱流が少ない。

②行ったこと :
研究者は、心臓の波形の主要な特徴を取り入れた脈動する流れが乱流に与える影響を調べました。

③検証方法 :
大動脈の血流に相当するレイノルズ数(流れの性質を表す無次元数)でパイプ内の流れを模倣し、乱流がどれだけ抑制されるかを調査しました。

④分かったこと :
心臓のように脈動する流れは乱流を大いに抑制し、さらに高い速度では乱流による抵抗を25%以上も削減できる。

⑤この研究の面白く独創的なところ :
心臓の自然な動きが如何に効率的であるかを示しており、これを人工的なシステムに応用することの可能性を示唆しています。

応用先
この研究は、暖房回路や水道、ガス、石油パイプラインなどの流体輸送プロセスを効率化するために使える可能性があります。特にエネルギーコスト削減や環境への影響を低減する観点から重要です。



下流に広く存在するRNAヘアピンが、開始コドン選択を動的に決定する

この研究は、RNAの特定の構造が、タンパク質の生成をどのように制御するかを明らかにしています。特に、細胞がストレスや免疫反応に適応する過程で、RNAの構造が変化し、それによってタンパク質の生成が動的に調節されることが確認されました。

①事前情報 :
細胞内でのタンパク質生成は非常に複雑なプロセスであり、uAUG(上流スタートコドン)と呼ばれる特定のRNA領域がそれを制御する重要な役割を果たしています。ただし、その具体的なメカニズムは不明でした。

②行ったこと :
植物(アラビドプシス)の免疫応答中におけるRNAの構造とタンパク質生成の関係性を詳細に調査しました。

③検証方法 :
トランスクリプトーム全体の翻訳と構造の解析を統合し、ディープラーニングのモデリングを用いて調査を行いました。

④分かったこと :
uAUGの下流に存在する特定のRNA構造(uAUG-ds)が、タンパク質生成の起点を選択する際のキーコントローラーであることが明らかになりました。このRNA構造は、免疫反応後に特定のRNAヘリカーゼによって解消され、それによって防御タンパク質が生成されることも確認されました。

⑤独創的なところ :
従来不明だったRNAの動的な構造変化が、細胞の適応メカニズムにおいてどのように機能するかを明らかにした点です。特に、この機構が植物だけでなく、人間の細胞にも一般化できることを示しています。

応用
この発見は、病気の治療や生物工学において、タンパク質生成を制御する新しい手法を開発する際の基礎となる可能性があります。


Li-S電池の界面集団反応挙動の可視化

https://scitechdaily.com/scientists-discover-unexpected-pathway-to-batteries-with-high-energy-low-cost-and-long-life/

リチウム硫黄(Li-S)バッテリーは高エネルギー密度と低コストで注目されていますが、リチウムポリサルフィドの複雑な反応がその効率を阻害していました。この研究では、その反応を原子レベルで観察し、新しい反応メカニズムを解明しました。

事前情報
Li-Sバッテリーはエネルギー密度が高く、低コストであるが、リチウムポリサルフィドの"シャトル効果"が長らく問題とされていました。

行ったこと
電子顕微鏡を用いて、Li-Sバッテリー内でのリチウムポリサルフィドの反応を原子レベルで観察しました。

検証方法
in situ液体セル電気化学的透過電子顕微鏡を使用して、原子レベルでの反応をリアルタイムでキャッチ。

分かったこと
リチウムポリサルフィドが特定の表面で集合し、集団的な電荷移動を引き起こすと、瞬間的にLi2Sナノ結晶が生成する新しい反応メカニズムを発見。

この研究の面白く独創的なところ
通常とは異なる「集団的な」反応メカニズムを発見したこと。これはLi-Sバッテリーの理解を深め、設計に革新をもたらす可能性があります。

応用
この新しい知識は、より効率的で安定したLi-Sバッテリーの開発に役立ちます。これにより、電動車や再生可能エネルギーの貯蔵方法など、エネルギー関連の多くのアプリケーションが革新される可能性があります。


有限距離相互作用による光遷移の量子センシング

研究者たちは、量子もつれを利用して1Dイオンチェーン内の粒子を結びつけ、光学的な原子時計の精度を向上させる新しい方法を開発しました。これにより、これまで以上に精度の高い時計が実現します。

①事前情報:
光学的な原子時計は非常に精度が高いが、「標準量子限界」によってその精度が制限されています。量子もつれはこの限界を超える可能性があります。

②行ったこと:
研究チームは、最大51個のイオンを含む1Dチェーンを用いて、大規模な量子もつれを誘発し、標準量子限界を突破しました。

③検証方法:
彼らはラムゼー型干渉計を用いて、Winelandパラメーターや構造因子(スピン波励起、SWE)などを研究しました。このシステムは、象徴的な一軸ねじれ(OAT)モデルを模倣しています。

④分かったこと:
彼らは、12個のイオンだけでWinelandパラメーターを-3.9±0.3 dB、51個のイオンで標準量子限界よりも-3.2±0.5 dB低い計測不確かさを実現しました。

⑤この研究の面白く独創的なところ:
大規模な量子もつれを現実世界のセンサー、具体的には光学的な原子時計に応用し、標準量子限界を破った点が新規性があります。

応用
この技術は、時間計測と同期システムを革新的に高精度化し、航海、通信、基礎物理学研究など多くの分野に影響を与える可能性があります。


非水系還元的電気合成のためのキノン媒介水素アノード

この研究では、持続可能な電気化学反応を可能にする水素アノード技術を紹介しています。これは特に製薬業界での大規模合成に有用です。

①事前情報:
電気化学的合成は環境に優れていますが、外部の電子源が必要であり複雑です。現在の小規模な応用では、大規模な場合には持続可能でない犠牲金属アノードがよく使用されています。

②行ったこと:
研究者は、アントラキノン媒体を使用する水素ベースのアノードシステムを開発しました。水素ガスがこの媒体を酸化し、その後、電気化学的酸化を受けて回路を完成させます。

③検証方法:
初めに小規模なバッチ反応で有効性を確認し、後に大規模合成用に循環フローリアクターでこの方法を適用しました。

④分かったこと:
この技術は、製薬合成において重要なニッケル触媒によるクロスエレクトロフィルカップリング(XEC)を効果的にサポートできます。これにより、製薬中間体のヘクトグラム規模の合成が可能になります。

⑤この研究の面白さと独創的なところ:
クイノン媒体を介した水素アノードが、犠牲金属なしで持続可能な大規模な電気化学反応を可能にする点に独創性があります。

応用
この技術は、特に製薬業界で、より持続可能で効果的な電子源を提供することで、大規模な化学合成を革新する可能性があります。




最後に
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