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論文まとめ355回目 Nature Electronics 表形式データの分類に特化した、300個以下の論理ゲートで構成される低コストで効率的な予測ハードウェアの開発!?など

科学・社会論文を雑多/大量に調査する為、定期的に、さっくり表面がわかる形で網羅的に配信します。今回もマニアックなNature Electronicsです。

さらっと眺めると、事業・研究のヒントにつながるかも。
世界の先端はこんな研究してるのかと認識するだけでも、
ついつい狭くなる視野を広げてくれます。


一口コメント

An ingestible device for gastric electrophysiology
胃の電気生理学のための飲み込み可能なデバイス
「胃腸管や腸内神経系の電気生理学的データを高品質で記録することは、様々な疾患の理解や早期診断に役立ちますが、従来の方法では電極を外科的に埋め込むか皮膚に装着する必要があり、信号品質と侵襲性のトレードオフが問題でした。この研究では、飲み込んで使用する胃の電気生理学的データ記録デバイスを開発しました。カプセル化された電子機器とセンサー電極リボンで構成され、胃の中で展開して粘膜に接触し、生体電位信号を記録して外部受信機に無線送信します。大型動物モデルで胃の遅い波、呼吸信号、心臓信号を記録でき、自由に動き回る動物の遅い波活動をモニタリングできることを示しました。」

Laser-induced wet stability and adhesion of pure conducting polymer hydrogels
レーザー誘起による純粋な導電性ポリマーハイドロゲルの湿潤安定性と接着性
「導電性ハイドロゲルは、生体組織と似た機械的特性と高い導電性を持つため、生体との接点となる電極材料として注目されています。しかし、特に湿潤環境下での耐久性と信頼性が課題でした。本研究では、レーザー誘起相分離と界面構造を利用することで、湿潤環境下で導電率が101.4 S/cmに達し、1時間の超音波処理や8ヶ月の水中保存後も電気化学特性を維持する高安定性導電性ハイドロゲルを開発しました。このハイドロゲルを用いて作製した微小電極アレイは、ラットの脳と心臓で3週間以上安定して電気生理学的信号を記録できました。」

A scalable ferroelectric non-volatile memory operating at 600 °C
600℃で動作するスケーラブルな強誘電体不揮発性メモリ
「極限環境下で動作する電子機器の開発には、高温で安定に動作する不揮発性メモリが必要ですが、その実現は困難とされてきました。本研究では、アルミニウムスカンジウム窒化物(Al0.68Sc0.32N)強誘電体ダイオードを用いた不揮発性メモリデバイスを開発し、600℃までの高温環境下で動作することを実証しました。このデバイスは、4インチシリコンウェーハー上に成長させたニッケル/AlScN/白金の金属-絶縁体-金属構造で構成されており、600℃でも100万回の読み取りサイクルと60時間以上のオン/オフ比1以上を示します。また、動作電圧は600℃で15V以下であり、シリコンカーバイドベースの高温ロジック技術との互換性があります。」

A three-terminal light emitting and detecting diode
発光と検出機能を持つ3端子ダイオード
「2端子デバイスは現代の電子システムの基本的な構成要素ですが、その構造ゆえに機能や性能に制限があります。本研究では、従来の窒化ガリウムベースのp-nダイオードに、金属/Al2O3誘電体層からなる第3の端子(Tt)を一体化した多機能3端子ダイオードを開発しました。発光素子として動作する際、Ttに印加する電圧によって光強度を調整でき、内蔵バイアスティー機能により変調帯域幅を160 MHzから263 MHzに向上できます。光検出器として動作する際、Ttに印加する電圧と入射光がともに信号入力として機能し、出力光電流の大きさを制御できるため、再構成可能な光電子NANDおよびNORロジックゲートを実現できます。」

Low-cost and efficient prediction hardware for tabular data using tiny classifier circuits
小さな分類器回路を用いた表形式データのための低コストで効率的な予測ハードウェア
「機械学習モデルの開発では、モデルの性能を最大化し、メモリや面積を最小化するのが一般的ですが、モデルが大規模化・複雑化するとこれが難しくなります。本研究では、進化的アルゴリズムを用いて、表形式データの分類に特化した300個以下の論理ゲートで構成される"tiny classifier"回路を自動生成する手法を開発しました。このtiny classifierは、従来の機械学習手法と同等の予測性能を持ちながら、はるかに少ないハードウェアリソースと消費電力で実現できます。シリコンチップとしてシミュレーションした場合、最高性能の機械学習ベースラインと比べて8〜18倍小さく、4〜8倍低消費電力です。」

200-mm-wafer-scale integration of polycrystalline molybdenum disulfide transistors
多結晶二硫化モリブデントランジスタの200mmウェーハスケール集積化
「二次元半導体は、薄膜トランジスタの材料として魅力的ですが、単一デバイスでの性能と産業用メソッドで大規模集積化したデバイスの性能には隔たりがあります。本研究では、多結晶二硫化モリブデン(MoS2)電界効果トランジスタを200mmウェーハスケールで集積化しました。商用の200mm製造施設で99.9%以上の歩留まりを達成し、多結晶MoS2の金属-半導体接合を最適化することで、単結晶フレークと同等の性能(移動度21 cm2 V−1 s−1、コンタクト抵抗3.8 kΩ µm、オン電流密度120 µA µm−1)を実現しました。」


要約

胃の電気生理学的データを非侵襲的に記録できる飲み込み可能なデバイスの開発

本研究では、胃の電気生理学的データを非侵襲的に記録できる飲み込み可能なデバイス「MiGUT(multimodal electrophysiology via ingestible, gastric, untethered tracking)」を開発しました。このデバイスは、カプセル化された電子機器とセンサー電極リボンで構成され、胃の中で展開して粘膜に接触し、生体電位信号を記録して外部受信機に無線送信します。大型動物モデルにおいて、胃の遅い波、呼吸信号、心臓信号を記録できることを示し、自由に動き回り、餌を食べている動物の遅い波活動をモニタリングできることを実証しました。

事前情報
消化管や腸内神経系の電気生理学的データを高品質で記録することは、様々な疾患の理解や早期診断に役立ちますが、従来の方法では電極を外科的に埋め込むか皮膚に装着する必要があり、信号品質と侵襲性のトレードオフが問題となっていました。

行ったこと

  1. 飲み込み可能な胃の電気生理学的データ記録デバイス「MiGUT」を開発しました。

  2. デバイスは、カプセル化された電子機器とセンサー電極リボンで構成され、胃の中で展開して粘膜に接触し、生体電位信号を記録して外部受信機に無線送信します。

  3. 大型動物モデルにおいて、デバイスの性能を評価しました。

検証方法
開発したデバイスを大型動物モデルに適用し、胃の遅い波、呼吸信号、心臓信号の記録が可能かどうかを検証しました。また、自由に動き回り、餌を食べている動物においても、遅い波活動のモニタリングが可能かどうかを検証しました。

分かったこと

  1. 開発したデバイスは、大型動物モデルにおいて、胃の遅い波、呼吸信号、心臓信号を記録できることが示されました。

  2. デバイスは、自由に動き回り、餌を食べている動物の遅い波活動をモニタリングできることが実証されました。

この研究の面白く独創的なところ
従来の方法とは異なり、飲み込み可能なデバイスを用いて非侵襲的に胃の電気生理学的データを記録できる点が独創的です。また、デバイスが胃の中で展開してセンサー電極リボンが粘膜に接触するという工夫により、高品質な信号を記録できる点も面白いです。

この研究のアプリケーション
この研究で開発されたデバイスは、様々な消化管疾患や腸内神経系疾患の理解や早期診断に役立つ可能性があります。また、非侵襲的で簡便な方法であるため、患者の負担を軽減しつつ、長期的なモニタリングにも適用できると期待されます。

著者と所属

  • Siheng Sean You, Adam Gierlach, Paul Schmidt, George Selsing, Injoo Moon, Keiko Ishida, Josh Jenkins, Wiam A. M. Madani, So-Yoon Yang, Hen-Wei Huang, Stephanie Owyang, Alison Hayward, Anantha P. Chandrakasan, Giovanni Traverso:

詳しい解説
消化管や腸内神経系の電気生理学的データを高品質で記録することは、様々な疾患の理解や早期診断に役立ちますが、従来の方法では電極を外科的に埋め込むか皮膚に装着する必要があり、信号品質と侵襲性のトレードオフが問題となっていました。
本研究では、この問題を解決するために、飲み込み可能な胃の電気生理学的データ記録デバイス「MiGUT(multimodal electrophysiology via ingestible, gastric, untethered tracking)」を開発しました。このデバイスは、カプセル化された電子機器とセンサー電極リボンで構成されています。
デバイスを飲み込むと、胃の中でセンサー電極リボンが展開し、粘膜に接触します。これにより、高品質な生体電位信号を記録することができます。記録された信号は、デバイス内の電子機器によって処理され、外部受信機に無線送信されます。
研究チームは、大型動物モデルを用いてデバイスの性能を評価しました。その結果、デバイスが胃の遅い波、呼吸信号、心臓信号を記録できることが示されました。これらの信号は、消化管の運動や自律神経系の活動を反映しており、様々な疾患の理解に役立つと考えられます。
さらに、研究チームは、自由に動き回り、餌を食べている動物においても、デバイスが遅い波活動をモニタリングできることを実証しました。これは、デバイスが日常的な使用に適していることを示唆しています。
この研究の独創的な点は、従来の方法とは異なり、飲み込み可能なデバイスを用いて非侵襲的に胃の電気生理学的データを記録できることです。また、デバイスが胃の中で展開してセンサー電極リボンが粘膜に接触するという工夫により、高品質な信号を記録できる点も面白いです。
この研究で開発されたデバイスは、様々な消化管疾患や腸内神経系疾患の理解や早期診断に役立つ可能性があります。また、非侵襲的で簡便な方法であるため、患者の負担を軽減しつつ、長期的なモニタリングにも適用できると期待されます。
今後、このデバイスがヒトでの臨床応用に向けてさらに開発が進められ、消化管疾患や腸内神経系疾患の診断や治療に貢献することが期待されます。



レーザー誘起相分離と界面構造を利用した高安定性導電性ハイドロゲルの製造と様々な基材への接着

本研究では、レーザー誘起相分離と界面構造を利用して、高安定性導電性ハイドロゲルを製造し、様々な基材に接着させる方法を開発しました。この方法により、導電性ポリマーを選択的に導電性ハイドロゲルに変換し、湿潤環境下で導電率101.4 S/cmを達成し、5 μmまでの空間分解能でパターニングできます。作製した導電性ハイドロゲルは、1時間の超音波処理や8ヶ月の水中保存後も電気化学特性を維持する高い堅牢性を示し、湿潤条件下での剥離強度と重ね合わせせん断強度はそれぞれ64.4 N/mと62.1 kPaでした。このハイドロゲルを用いて、ラットの脳と心臓で3週間以上安定して電気生理学的信号を記録できる微小電極アレイを作製しました。また、電極の耐久性が高いため、集中的な超音波洗浄により再利用が可能です。

事前情報
導電性ハイドロゲルは、生体組織と似た機械的特性と生理環境下での高い導電性から、生体との接点となる電極材料として有望ですが、特に湿潤環境下での耐久性と信頼性が課題となっています。

行ったこと

  1. レーザー誘起相分離と界面構造を利用して、高安定性導電性ハイドロゲルを製造し、様々な基材に接着させる方法を開発しました。

  2. この方法で作製した導電性ハイドロゲルの電気化学特性と機械的特性を評価しました。

  3. 導電性ハイドロゲルを用いて微小電極アレイを作製し、ラットの脳と心臓での電気生理学的信号の記録安定性を検証しました。

検証方法
作製した導電性ハイドロゲルの湿潤環境下での導電率、超音波処理や水中保存後の電気化学特性、剥離強度と重ね合わせせん断強度を評価しました。また、ハイドロゲルを用いて作製した微小電極アレイを用いて、ラットの脳と心臓で電気生理学的信号を記録し、信号の安定性を検証しました。

分かったこと

  1. レーザー誘起相分離と界面構造を利用することで、湿潤環境下で高い導電率と安定性を持つ導電性ハイドロゲルを製造できます。

  2. 作製した導電性ハイドロゲルは、1時間の超音波処理や8ヶ月の水中保存後も電気化学特性を維持する高い堅牢性を示します。

  3. 導電性ハイドロゲルを用いて作製した微小電極アレイは、ラットの脳と心臓で3週間以上安定して電気生理学的信号を記録できます。

この研究の面白く独創的なところ
レーザー誘起相分離と界面構造を利用して、高安定性導電性ハイドロゲルを製造する点が独創的です。また、作製したハイドロゲルが湿潤環境下で高い導電率と安定性を示し、生体内での長期的な電気生理学的信号の記録に適用できる点が面白いです。

この研究のアプリケーション
高安定性導電性ハイドロゲルは、生体との接点となる電極材料として、脳や心臓などの臓器の長期的な電気生理学的モニタリングに応用できる可能性があります。また、耐久性が高いため、再利用可能な電極としても利用できます。

著者と所属

  • Daeyeon Won, HyeongJun Kim, Jin Kim, Hongdeok Kim, Min Woo Kim, Jiyong Ahn, Koungjun Min, Youngseok Lee, Sukjoon Hong, Joonmyung Choi, C-Yoon Kim, Taek-Soo Kim, Seung Hwan Ko: 所属不明

詳しい解説
導電性ハイドロゲルは、生体組織と似た機械的特性と生理環境下での高い導電性から、生体との接点となる電極材料として注目されています。しかし、特に湿潤環境下での耐久性と信頼性が課題となっており、実用化に向けた改善が求められていました。
本研究では、この課題を解決するために、レーザー誘起相分離と界面構造を利用した新しい高安定性導電性ハイドロゲルの製造方法を開発しました。この方法では、導電性ポリマーを選択的に導電性ハイドロゲルに変換することができ、湿潤環境下で導電率101.4 S/cmを達成しました。また、5 μmまでの高い空間分解能でパターニングが可能です。
作製した導電性ハイドロゲルは、1時間の超音波処理や8ヶ月の水中保存後も電気化学特性を維持する高い堅牢性を示しました。これは、レーザー誘起相分離と界面構造によって、ハイドロゲルの安定性が向上したためと考えられます。さらに、湿潤条件下での剥離強度と重ね合わせせん断強度はそれぞれ64.4 N/mと62.1 kPaと、優れた接着性も示しました。
研究チームは、この導電性ハイドロゲルを用いて微小電極アレイを作製し、ラットの脳と心臓での電気生理学的信号の記録を行いました。その結果、3週間以上にわたって安定した信号記録が可能であることが示されました。これは、導電性ハイドロゲルが生体内での長期的な電気生理学的モニタリングに適していることを示唆しています。
また、作製した電極の耐久性が高いため、集中的な超音波洗浄により再利用が可能であることも明らかになりました。これは、導電性ハイドロゲルが再利用可能な電極材料としても有望であることを示しています。
本研究の独創的な点は、レーザー誘起相分離と界面構造を利用して、高安定性導電性ハイドロゲルを製造した点です。また、作製したハイドロゲルが湿潤環境下で高い導電率と安定性を示し、生体内での長期的な電気生理学的信号の記録に適用できる点が面白いです。
高安定性導電性ハイドロゲルは、生体との接点となる電極材料として、脳や心臓などの臓器の長期的な電気生理学的モニタリングに応用できる可能性があります。また、耐久性が高いため、再利用可能な電極としても利用できます。
今後、この導電性ハイドロゲルの生体適合性や長期安定性がさらに評価され、実用化に向けた研究が進展することが期待されます。本研究は、導電性ハイドロゲルの新しい製造方法を提案し、その応用可能性を示した重要な成果といえます。


600℃の高温環境下で動作可能な強誘電体不揮発性メモリの開発

本研究では、アルミニウムスカンジウム窒化物(Al0.68Sc0.32N)強誘電体ダイオードを用いた不揮発性メモリデバイスを開発し、600℃までの高温環境下で動作することを実証しました。このデバイスは、4インチシリコンウェーハー上に成長させたニッケル/AlScN/白金の金属-絶縁体-金属構造で構成されており、600℃までの明確な強誘電性スイッチングと明確なオンとオフの状態を示します。600℃において、このデバイスは100万回の読み取りサイクルと60時間以上のオン/オフ比1以上を示します。また、AlScN強誘電体ダイオードの動作電圧は600℃で15V以下であり、シリコンカーバイドベースの高温ロジック技術との互換性があります。

事前情報
極限環境下で動作する電子機器の開発には、高温で安定に動作する不揮発性メモリが必要ですが、そのようなデバイスの作製は困難であるとされてきました。

行ったこと

  1. アルミニウムスカンジウム窒化物(Al0.68Sc0.32N)強誘電体ダイオードを用いた不揮発性メモリデバイスを開発しました。

  2. このデバイスを4インチシリコンウェーハー上に成長させたニッケル/AlScN/白金の金属-絶縁体-金属構造で構成しました。

  3. デバイスの高温環境下での動作特性を評価しました。

検証方法
開発したAlScN強誘電体ダイオードを用いた不揮発性メモリデバイスの高温環境下での強誘電性スイッチング、オン/オフ状態、読み取りサイクル、オン/オフ比、動作電圧を評価しました。

分かったこと

  1. 開発したデバイスは、600℃までの高温環境下で明確な強誘電性スイッチングと明確なオンとオフの状態を示します。

  2. 600℃において、このデバイスは100万回の読み取りサイクルと60時間以上のオン/オフ比1以上を示します。

  3. AlScN強誘電体ダイオードの動作電圧は600℃で15V以下であり、シリコンカーバイドベースの高温ロジック技術との互換性があります。

この研究の面白く独創的なところ
アルミニウムスカンジウム窒化物強誘電体ダイオードを用いて、600℃までの高温環境下で動作可能な不揮発性メモリデバイスを開発した点が独創的です。また、このデバイスがシリコンカーバイドベースの高温ロジック技術との互換性を持つ点も面白いです。

この研究のアプリケーション
この研究で開発された高温環境下で動作可能な不揮発性メモリデバイスは、極限環境下で動作する電子機器の開発に応用できる可能性があります。例えば、宇宙探査機や地熱発電所などの高温環境下で使用される電子機器への適用が期待されます。

著者と所属

  • Dhiren K. Pradhan, David C. Moore, Gwangwoo Kim, Yunfei He, Pariasadat Musavigharavi, Kwan-Ho Kim, Nishant Sharma, Zirun Han, Xingyu Du, Venkata S. Puli, Eric A. Stach, W. Joshua Kennedy, Nicholas R. Glavin, Roy H. Olsson III, Deep Jariwala: 所属不明

詳しい解説
極限環境下で動作する電子機器の開発には、高温で安定に動作する不揮発性メモリが必要不可欠です。しかし、従来の不揮発性メモリ技術では、高温環境下での安定動作が困難であるとされてきました。
本研究では、この課題を解決するために、アルミニウムスカンジウム窒化物(Al0.68Sc0.32N)強誘電体ダイオードを用いた新しい不揮発性メモリデバイスを開発しました。このデバイスは、4インチシリコンウェーハー上に成長させたニッケル/AlScN/白金の金属-絶縁体-金属構造で構成されています。
研究チームは、開発したデバイスの高温環境下での動作特性を詳細に評価しました。その結果、このデバイスが600℃までの高温環境下で明確な強誘電性スイッチングと明確なオンとオフの状態を示すことを実証しました。これは、AlScN強誘電体ダイオードが高温でも安定な強誘電性を維持できることを示しています。
さらに、600℃において、このデバイスが100万回の読み取りサイクルと60時間以上のオン/オフ比1以上を示すことを明らかにしました。これは、開発されたデバイスが高温環境下で長期間安定に動作できることを示唆しています。
また、AlScN強誘電体ダイオードの動作電圧が600℃で15V以下であることも重要な点です。これは、このデバイスがシリコンカーバイドベースの高温ロジック技術との互換性を持つことを意味しています。シリコンカーバイドは高温環境下で安定なワイドバンドギャップ半導体として知られており、高温ロジック回路への応用が期待されています。
本研究の独創的な点は、アルミニウムスカンジウム窒化物強誘電体ダイオードを用いて、600℃までの高温環境下で動作可能な不揮発性メモリデバイスを開発したことです。また、このデバイスがシリコンカーバイドベースの高温ロジック技術との互換性を持つ点も面白いです。
この研究で開発された高温環境下で動作可能な不揮発性メモリデバイスは、極限環境下で動作する電子機器の開発に応用できる可能性があります。例えば、宇宙探査機や地熱発電所などの高温環境下で使用される電子機器への適用が期待されます。
今後、このデバイスの信頼性や長期安定性がさらに評価され、実用化に向けた研究が進展することが期待されます。本研究は、極限環境下で動作する電子機器の開発に向けた重要な一歩を示した成果といえます。


発光と検出機能を持つ3端子ダイオードの開発

本研究では、従来の窒化ガリウムベースの2端子p-nダイオードに、金属/Al2O3誘電体層からなる第3の端子(Tt)を一体化した多機能3端子ダイオードを開発しました。発光素子として動作する際、Ttに印加するバイアスによって光強度を調整でき、内蔵バイアスティー機能により変調帯域幅を160 MHzから263 MHzに向上できます。光検出器として動作する際、Ttに印加する電圧と入射光がともに信号入力として機能し、出力光電流の大きさを制御できるため、再構成可能な光電子NANDおよびNORロジックゲートを提供できます。

事前情報
2端子デバイスは現代の電子システムの基本的な構成要素ですが、その典型的な2端子アーキテクチャは機能や性能を制限する可能性があります。

行ったこと

  1. 従来の窒化ガリウムベースの2端子p-nダイオードに、金属/Al2O3誘電体層からなる第3の端子(Tt)を一体化した多機能3端子ダイオードを開発しました。

  2. 3端子ダイオードを発光素子として動作させ、Ttに印加するバイアスによる光強度調整と変調帯域幅の向上を実現しました。

  3. 3端子ダイオードを光検出器として動作させ、Ttに印加する電圧と入射光を信号入力として利用し、再構成可能な光電子NANDおよびNORロジックゲートを実現しました。

検証方法
開発した3端子ダイオードを発光素子および光検出器として動作させ、Ttに印加するバイアスや入射光が出力光強度や光電流に与える影響を評価しました。また、変調帯域幅の向上や再構成可能なロジックゲートの実現を実証しました。

分かったこと

  1. 3端子ダイオードを発光素子として動作させると、Ttに印加するバイアスによって光強度を調整でき、内蔵バイアスティー機能により変調帯域幅を160 MHzから263 MHzに向上できます。

  2. 3端子ダイオードを光検出器として動作させると、Ttに印加する電圧と入射光がともに信号入力として機能し、出力光電流の大きさを制御できるため、再構成可能な光電子NANDおよびNORロジックゲートを実現できます。

この研究の面白く独創的なところ
従来の2端子p-nダイオードに第3の端子を一体化することで、発光強度の調整や変調帯域幅の向上、再構成可能なロジックゲートの実現など、多機能性を付与した点が独創的です。また、単一のデバイスで発光と検出の両方の機能を実現している点も面白いです。

この研究のアプリケーション
この3端子ダイオードは、光通信システムにおける光源および受光器として利用できる可能性があります。また、再構成可能なロジックゲートとしての機能は、光電子集積回路の実現に役立つと期待されます。

著者と所属

  • Muhammad Hunain Memon, Huabin Yu, Yuanmin Luo, Yang Kang, Wei Chen, Dong Li, Dongyang Luo, Shudan Xiao, Chengjie Zuo, Chen Gong, Chao Shen, Lan Fu, Boon S. Ooi, Sheng Liu, Haiding Sun

詳しい解説
現代の電子システムにおいて、2端子デバイスは基本的な構成要素として広く使用されています。しかし、典型的な2端子アーキテクチャでは、機能や性能に制限が生じる可能性があります。
本研究では、この課題を解決するために、従来の窒化ガリウムベースの2端子p-nダイオードに、金属/Al2O3誘電体層からなる第3の端子(Tt)を一体化した多機能3端子ダイオードを開発しました。この新しいデバイス構造により、発光および検出の両方の機能において、追加の制御性と多機能性が実現されました。
3端子ダイオードを発光素子として動作させる際、Ttに印加するバイアスによって光強度を調整できることが示されました。これにより、発光強度の動的な制御が可能になります。さらに、Ttによって実現される内蔵バイアスティー機能により、変調帯域幅が160 MHzから263 MHzに向上しました。これは、高速な光変調が可能であることを示唆しています。
一方、3端子ダイオードを光検出器として動作させる際、Ttに印加する電圧と入射光がともに信号入力として機能することが明らかになりました。これらの入力信号は、出力光電流の大きさを制御することができます。この特性を利用して、研究チームは再構成可能な光電子NANDおよびNORロジックゲートを実現しました。これは、3端子ダイオードが光電子集積回路における論理演算の基本要素として機能する可能性を示しています。
本研究の独創的な点は、従来の2端子p-nダイオードに第3の端子を一体化することで、発光強度の調整や変調帯域幅の向上、再構成可能なロジックゲートの実現など、多機能性を付与したことです。また、単一のデバイスで発光と検出の両方の機能を実現している点も面白いです。
この3端子ダイオードは、光通信システムにおける光源および受光器として利用できる可能性があります。高速な光変調や光検出が可能であるため、高速・大容量の光通信に適していると考えられます。また、再構成可能なロジックゲートとしての機能は、光電子集積回路の実現に役立つと期待されます。将来的には、この3端子ダイオードを用いた光電子論理演算の実現が期待されます。
本研究は、従来の2端子デバイスの限界を超える新しい多機能3端子ダイオードを提案し、その優れた特性を実証した点で重要な意義を持ちます。今後、この3端子ダイオードのさらなる性能向上と実用化に向けた研究開発が進むことが期待されます。


表形式データの分類に特化した、300個以下の論理ゲートで構成される低コストで効率的な予測ハードウェアの開発

本研究では、表形式データの分類に特化した予測回路を自動生成する手法「auto tiny classifiers」を開発しました。この手法では、進化的アルゴリズムを用いて、300個以下の論理ゲートで構成される分類器回路を自動生成します。生成された tiny classifier 回路は、従来の機械学習手法と同等の予測性能を持ちながら、はるかに少ないハードウェアリソースと消費電力で実現できます。45nmのシリコン技術でシミュレーションした結果、tiny classifierは最高性能の機械学習ベースラインと比べて8〜18倍小さく、4〜8倍低消費電力であることが示されました。また、低コストのフレキシブル基板上にチップとして実装した場合、最もハードウェア効率の良い機械学習ベースラインと比べて10〜75倍小さく、13〜75倍低消費電力で、6倍の歩留まりを達成しました。

事前情報
機械学習モデルの開発では、モデルの性能を最大化し、メモリや面積を最小化するのが一般的ですが、モデルが大規模化・複雑化するとこれが難しくなります。

行ったこと

  1. 表形式データの分類に特化した予測回路を自動生成する手法「auto tiny classifiers」を開発しました。

  2. 進化的アルゴリズムを用いて、300個以下の論理ゲートで構成される分類器回路を自動生成しました。

  3. 生成された tiny classifier 回路の予測性能と、ハードウェアリソース・消費電力を評価しました。

  4. tiny classifierを45nmのシリコン技術でシミュレーションし、低コストのフレキシブル基板上にチップとして実装しました。

検証方法
生成された tiny classifier 回路の予測性能を、Google TabNet、AutoGluon、最小/最良のMLPなどの従来の機械学習手法と比較しました。また、45nmのシリコン技術でのシミュレーションと、低コストのフレキシブル基板上へのチップ実装により、ハードウェアリソース・消費電力・歩留まりを評価しました。

分かったこと

  1. tiny classifier 回路は、従来の機械学習手法と同等の予測性能を持ちながら、はるかに少ないハードウェアリソースと消費電力で実現できます。

  2. 45nmのシリコン技術でシミュレーションした結果、tiny classifierは最高性能の機械学習ベースラインと比べて8〜18倍小さく、4〜8倍低消費電力です。

  3. 低コストのフレキシブル基板上にチップとして実装した場合、最もハードウェア効率の良い機械学習ベースラインと比べて10〜75倍小さく、13〜75倍低消費電力で、6倍の歩留まりを達成しました。

この研究の面白く独創的なところ
表形式データの分類に特化した小さな予測回路を、進化的アルゴリズムを用いて自動生成する点が独創的です。また、従来の機械学習手法と同等の予測性能を、はるかに少ないハードウェアリソースと消費電力で実現できる点が面白いです。

この研究のアプリケーション
生成された tiny classifier 回路は、センサーに近接した計算やスマートパッケージなどの低消費電力機械学習(tinyML)に適用できる可能性があります。また、システムオンチップ内のトリガー回路としても利用できると考えられます。

著者と所属

  • Konstantinos Iordanou, Timothy Atkinson, Emre Ozer, Jedrzej Kufel, Grace Aligada, John Biggs, Gavin Brown, Mikel Luján: 所属不明

詳しい解説
近年、深層ニューラルネットワーク(DNN)は、様々な分野で人間に匹敵する、または人間を上回る精度を達成しています。当初は畳み込みニューラルネットワークをベースに大規模なラベル付き画像データセットを活用していましたが、その適用範囲は、自然言語処理のための再帰型やトランスフォーマーなど、他の多くのタスクと関連するニューラルアーキテクチャにまで拡大しています。現在使用されている大規模なデータセットは主に画像、音声、テキストなどの同種のデータです。こうした進歩と、異なる種類のDNN間で共通する計算カーネルの存在により、推論とトレーニングの両方のためのハードウェアアクセラレータが開発されてきました。どちらのシナリオでも、これらのアクセラレータの最も一般的なアプローチは、タスク固有の回路ではなく、特殊なデータ型と計算を備えたプログラマブルハードウェアです。DNNの進化に伴い、その計算は密なテンソル演算からスパース性の増加へと変化してきました。
現在、機械学習(ML)モデルのトレーニングと実行は、ハードウェアアクセラレータの設計と最適化から切り離されているか、せいぜい共同設計が行われています。しかし、どちらの開発活動にも最適化プロセスが含まれています。そこで、表形式データを入力として受け取り、MLモデルのように動作する分類用の回路表現を生成する教師あり学習手法を開発することが考えられます。
本研究では、表形式データから直接分類回路を自動生成する手法「auto tiny classifiers」を報告しています。画像やテキストなどの同種のデータとは対照的に、本研究では数値データとカテゴリデータを組み合わせるような異種のデータに焦点を当てています。DNNは、画像や音声データの空間的または意味的な関係を捉えるのに優れています。しかし、表形式データの場合、特徴間の相関は弱く、特徴には固有の位置情報がありません。そのため、表形式データはDNNの活発な研究分野となっています。このような異種データは至る所に存在し、様々な実用的な用途があります。また、tinyMLとして知られる低消費電力機械学習に適したリソース制限のあるシナリオにも存在することが多いです。
本研究のアプローチは、表形式データから予測を行うための現在の機械学習および深層学習の手法に代わる方法論を提供し、2つの重要な利点があります。第一に、ブール関数表現は機械学習では決定木として知られており、この表現の優れた特性を継承しています。最近の研究では、決定木が表形式データの深層学習よりも優れた性能を示すことが示唆されています。第二に、進化的スキームは、従来の勾配ベースのツリーブースティング手法が陥る可能性のあるローカルミニマを回避できます。
開発された tiny classifier 回路は、わずか数百個の論理ゲートで構成されており、最先端の機械学習分類器と同等の予測精度を達成できます。本論文では、tiny classifierをASIC(特定用途向け集積回路)ブロックとして生成するツールフローを説明しています。そして、従来のシリコン技術をターゲットにした tiny classifierと機械学習ベースラインの設計の合成結果を提供しています。また、tiny classifierと機械学習ベースラインをFlexIC(フレキシブル集積回路)として実装し、フレキシブル基板(ポリイミド)上に製造しています。
tiny classifierは様々なアプリケーションに使用できます。例えば、システムオンチップ内のトリガー回路として使用できます。ここでは、システムオンチップの低消費電力状態が維持され、tiny classifierが常時オン回路として機能します。また、ハードワイヤード tiny classifierは、スマートパッケージングなどの高速消費財アプリケーションにも使用できます。ここでは、FlexIC上の機械学習モデルがその場で分類を行うことができます。スマートパッケージには、低コストのフレキシブルエレクトロニクス技術を用いた集積回路(IC)を装備することができます。特にFlexICは、シリコンベースのICよりもコストが低く、低コストの回路カスタマイズが可能です。同様に、センサーに密接に結合された計算ブロックを持ち、センサーデータをソースで推論を使用して知識に変換する低コストのニアセンサーコンピューティングシステムにおいても、潜在的な価値があります。また、分類器回路のプログラマビリティは、高速消費財の製品寿命(例えば数日または数週間)が短いため、スマートパッケージでは必須ではありません。製品は、使用後にパッケージとともに廃棄/リサイクルされます。
tiny classifierは、センサーに近接した計算やスマートパッケージなどの低消費電力機械学習(tinyML)に適用できる可能性があります。また、システムオンチップ内のトリガー回路としても利用できると考えられます。本研究は、表形式データの分類に特化した小さな予測回路を自動生成する独創的な手法を提案し、従来の機械学習手法と同等の予測性能を、はるかに少ないハードウェアリソースと消費電力で実現できることを示した点で重要な意義があります。


産業用メソッドを用いて200mmウェーハスケールで多結晶二硫化モリブデントランジスタを集積化

本研究では、多結晶二硫化モリブデン(MoS2)電界効果トランジスタを200mmウェーハスケールで集積化しました。プロセスは産業用メソッドと互換性があり、商用の200mm製造施設で99.9%以上の歩留まりを達成しました。多結晶MoS2の金属-半導体接合が単結晶とは根本的に異なることを発見し、プロセスフローを再設計することで、金属-MoS2コンタクトでのショットキー障壁高さをほぼ完全に排除しました。その結果、MoS2電界効果トランジスタは、単結晶フレークで達成されたものと同等の移動度21 cm2 V−1 s−1、コンタクト抵抗3.8 kΩ µm、オン電流密度120 µA µm−1を示しました。

事前情報
二次元半導体は、スケーラビリティ、転写性、原子レベルの厚さ、比較的高いキャリア移動度により、薄膜トランジスタの材料として魅力的ですが、単一デバイスでの性能(通常は単結晶二次元膜を使用)と、産業用メソッドで大規模集積化したデバイスの性能には隔たりがあります。

行ったこと

  1. 多結晶二硫化モリブデン(MoS2)電界効果トランジスタを200mmウェーハスケールで集積化しました。

  2. プロセスを産業用メソッドと互換性のあるものにし、商用の200mm製造施設で99.9%以上の歩留まりを達成しました。

  3. 多結晶MoS2の金属-半導体接合を最適化し、金属-MoS2コンタクトでのショットキー障壁高さをほぼ完全に排除しました。

検証方法
多結晶MoS2電界効果トランジスタの性能(移動度、コンタクト抵抗、オン電流密度)を評価し、単結晶フレークで達成された性能と比較しました。

分かったこと

  1. 多結晶MoS2の金属-半導体接合は、単結晶とは根本的に異なります。

  2. プロセスフローを再設計することで、金属-MoS2コンタクトでのショットキー障壁高さをほぼ完全に排除できます。

  3. 最適化された多結晶MoS2電界効果トランジスタは、単結晶フレークで達成されたものと同等の性能(移動度21 cm2 V−1 s−1、コンタクト抵抗3.8 kΩ µm、オン電流密度120 µA µm−1)を示します。

この研究の面白く独創的なところ
産業用メソッドと互換性のあるプロセスを用いて、多結晶MoS2電界効果トランジスタを200mmウェーハスケールで集積化し、単結晶フレークと同等の性能を達成した点が独創的です。また、多結晶MoS2の金属-半導体接合の特性を明らかにし、プロセスフローを最適化することで、高性能なデバイスを実現した点が面白いです。

この研究のアプリケーション
この研究で開発された多結晶MoS2電界効果トランジスタの大規模集積化技術は、薄膜トランジスタを用いた様々な電子デバイス(ディスプレイ、センサー、フレキシブルエレクトロニクスなど)の製造に応用できる可能性があります。

著者と所属

  • Junyoung Kwon, Minsu Seol, Joungeun Yoo, Huije Ryu, Dong-Su Ko, Min-Hyun Lee, Eun Kyu Lee, Min Seok Yoo, Gwan-Hyoung Lee, Hyeon-Jin Shin, Jeehwan Kim, Kyung-Eun Byun: 所属不明

詳しい解説
二次元半導体は、薄膜トランジスタの材料として魅力的な特性を持っています。スケーラビリティ、転写性、原子レベルの厚さ、比較的高いキャリア移動度などの利点があります。しかし、単一デバイスでの性能(通常は単結晶二次元膜を使用)と、産業用メソッドで大規模集積化したデバイスの性能には隔たりがあるという課題がありました。
本研究では、この課題に取り組むために、多結晶二硫化モリブデン(MoS2)電界効果トランジスタを200mmウェーハスケールで集積化しました。研究チームは、プロセスを産業用メソッドと互換性のあるものに設計し、商用の200mm製造施設で99.9%以上の歩留まりを達成しました。これは、多結晶MoS2電界効果トランジスタの大規模集積化が産業レベルで実現可能であることを示しています。
さらに、研究チームは多結晶MoS2の金属-半導体接合が単結晶とは根本的に異なることを発見しました。この知見を基に、プロセスフローを再設計することで、金属-MoS2コンタクトでのショットキー障壁高さをほぼ完全に排除することに成功しました。ショットキー障壁は、コンタクト抵抗を増大させ、デバイスの性能を制限する要因となります。
最適化された多結晶MoS2電界効果トランジスタは、単結晶フレークで達成されたものと同等の優れた性能を示しました。移動度は21 cm2 V−1 s−1、コンタクト抵抗は3.8 kΩ µm、オン電流密度は120 µA µm−1であり、これらの値は単結晶デバイスに匹敵します。
本研究の独創的な点は、産業用メソッドと互換性のあるプロセスを用いて、多結晶MoS2電界効果トランジスタを200mmウェーハスケールで集積化し、単結晶フレークと同等の性能を達成したことです。また、多結晶MoS2の金属-半導体接合の特性を明らかにし、プロセスフローを最適化することで、高性能なデバイスを実現した点が面白いです。
この研究で開発された多結晶MoS2電界効果トランジスタの大規模集積化技術は、薄膜トランジスタを用いた様々な電子デバイス(ディスプレイ、センサー、フレキシブルエレクトロニクスなど)の製造に応用できる可能性があります。二次元半導体の優れた特性を活かしつつ、産業レベルでの製造を可能にする技術として期待されます。
今後、この技術のさらなる最適化と、実用化に向けた信頼性の検証が進められることが期待されます。本研究は、二次元半導体デバイスの産業応用に向けた重要な一歩を示すものであり、次世代電子デバイスの発展に寄与すると考えられます。


最後に
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