父の面影の記憶
荒浪の父はギャンブラーだった。お酒を飲まない代わりに競馬、パチンコ、麻雀は少々。なのであまり家庭的な父親ではなかった。
私と姉は父と母との言い合いをみて、家庭のあたたかさというのを知らずに育った。なので、私達は「父のようなタイプじゃない男が良い」というのが理想になっていた。
父は若い頃は非常にモテたらしく、顔立ちは少し彫りが深くほっそりした人だった。なので、私と姉は交際相手を選ぶとき、自然とその手の顔立ちは避けて男性を選んできた。
それから姉に子供が生まれ、その子は、とっても子供が苦手だった父が非常に可愛いがった。そして父はその子が13歳の時にこの世を去った。
その女の子は現在27歳になり、私の姪っ子だ。
この夏に姪っ子は東京から里へ帰ってきて私の家で滞在していた時だった、
「あんた、彼氏いないの?」
「いない。」
「どんな男性がタイプ?」と聞くと、
彼女はスマホ取り出し、画像を見せてくれてびっくり
若い頃の父に似た、フランス人男性。
「ちょっと、おじいちゃんに似てるねん」と微笑ましく笑う姪っ子。
どうやら、人気のフランス人の若手俳優らしいが名前は憶えていない。
あれほど、私と姉はトラウマで「お父ちゃんに似てる男はいくら見た目良くても嫌やな!」と言ってたのが姪っ子の代で簡単に覆された。
母の財布から千円札を数枚むしり取って出ていく父の後ろ姿。
彫りの深い顔にいつも眉間をよせてタバコをふかしながらパチンコ台にしがみつく父。幼少期の記憶…
一方で姪っ子には、いたせり尽くせり可愛がってくれたおじいちゃん。
私と姉には 冷淡に見えた父の面影が、姪っ子には理想の面影になっていく現実に、本当に人生わからないことばかり起きるものだと痛感の夏。
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