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表参道ランチをめぐる冒険②<美味しいものが大好き④>

コロナ自粛の4月5月、自宅で存在意義を賭して料理当番を自発的に引き受けることになった時、僕を本当に助けてくれたのが、おうちでシェフ味といううたい文句の「ふーみん食堂」というレシピ本だ。

中華風家庭料理の名店、骨董通りの小原流会館の地下にある「ふーみん」はキラー通りの1971年に当時25歳のふーみんさんが何も料理人修行をしたことがないのにオープンしたのが始まりらしい。この場所に移ってからでももう30年以上という表参道界隈では知らない人がいない名店。毎日開店時刻の11:30前にはお店の前に並べられた長椅子のずらっと人が待っている。若い人もいるがオールドファンも目立つ。

実は今日、コロナ後初めて行った。ド定番の「豚バラ肉の梅干し煮」をいただいた。この料理、自粛期間に上記のレシピ本を参考に作り家族からも好評を得たのだが、今日久しぶりに食べたらお店の方がうまい。なんでだろう?何か特別なものが入ってる?いやいやそんなはずはない。材料がお店の方が高級?ってわけでもなさそう…うーん、と考え込んでしまった。

帰りにレジで、家で「ふーみん食堂」のレシピ通りに作ったけどお店の方が美味しかったのはどうしてなんでしょう?と単刀直入に訊いたら、「この本読むといいですよ!」とレジの横に積み上げられた新しい本『青山「ふーみん」の和食材でつくる絶品台湾料理 斉風瑞著ー伝説の神レシピをおうちで完全再現』を勧められた。内心〈そりゃ、お店の方がお美味しくないと困りますから〉と笑いながら受け流されるかと思ったら、「この新しい本の方が詳しく書いてありますから!これで作ってください!」とガチで返事されてしまった。もちろん買ったんだけど…。

表参道の老舗中華といえばもう一軒どうしても外せない店がある。今から30年前に、ジュネーブから東京に転勤になり、南阿佐ヶ谷に当時あった銀行の社宅に住むことになった。ジュネーブ時代と比べると家の広さが1/2になってしまい、「日本人はウサギ小屋に住んでいる」と当時よく言われた劣悪な住環境はまさにその通りだあなと思った。場所的には緑が多く春には爛漫と咲き誇る桜が見事な善福寺川公園至近で言うことはなかった。で、その当時こんなにおいしい中華が阿佐ヶ谷にあるんだ、と思ったのが「希須林」だ。町中華よりも少し価格設定が高めで、お店もおしゃれだった。連日盛況で今のようにネットのグルメ情報はなかったけれどそれでも予約をきちんと取らないといけない店だった。

ところがしばらくすると、閉店するという。青山に行っちゃうんだって。そういえば「バードランド」もそう。せっかく阿佐ヶ谷の名店だと思っていると都心に行っちゃう。(どちらも、しばらくすると支店のような形で阿佐ヶ谷にも再進出されてましたが)最近では「鮨なんば」もそうですね。東京ミッドタウン日比谷に行っちゃった。

その「希須林」が表参道交差点からすぐのところに移転したのは知っていたが、ずっと行く機会がなかった。8年前に神宮前5丁目のオフィスに1年いた時、そして去年から南青山4丁目にオフィスを構えて、格好のランチ場所になった。

阿佐ヶ谷時代には本格的な味の黒酢の酢豚や担々麺はまだ競合が少なかったように思うが、今や様々なお店が個性を競いあってる時代なので、「希須林」の定番であるこの二つはもはや正当な王道の趣さえある。日替わりの定食や、ほかの麺にしろ地味豊かでやはり栄養のバランスも良くちゃんとお美味しい。軽井沢のハレニラテラスにも素敵なお店を出している。

あ、そうそう、一つ残念なことは、以前は食べ放題的にザーサイがドカッと各テーブルに置いてあって、注文した食事がくるまでこれを食べるのが楽しみだったが、今年の初めぐらいかな、ある日テーブルから突然姿を消し、小皿に少しだけ入ったものしかもらえなくなった。

因みに、「ふーみん」の方は食べ放題ザーサイは今も健在。今日もずっと食べ続けたー。そうだ、今日「ふーみん」に行ったのはザーサイが食べたかったからだった!

サーサイ





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