見出し画像

おんがくのおしえかた 12

お金になりにくい才能

DTMを介して主に作曲を教えて十八年になる私は、新しい生徒が入会し、退会する、というサイクルの中で実に様々な才能を見てきました。人には一つくらいは他人よりもずば抜けて秀でた才能があるものなのだなぁと日頃感じながら生きているのです。ただ、その才能は二通りの結論があります。一つは「お金になりやすい才能」ともう一つは「お金になりにくい才能」です。

例えば、大変気が利く友人がいます。よくそう言うところ気がつくな、と思う程気配り目配りが優れています。圧倒的に気が利かない私にとっては、一緒に何かをするだけで自己嫌悪に陥る程です。バイオリンの先生で、女性に人気があり、優しい先生として人気があります。ただ、友人の私からすると、そんな細かいところにまで気遣いして、日々気疲れしないかね?と聞いてみると「それがオレの弱点だ」と、どうやら自覚があるらしい。才能というのは無意識下で行われるため、知人友人にとっては秀でていても、当の本人、もしくは家族などにしてみれば、それはそれでいろいろと問題があるらしいのです。

彼の場合、音楽の講師という職業を得ています。私などとは違い人気があるコースで、しかも生徒が辞めていきません。気配りが良い、言葉を選び抜くコミュニケーションのとり方は生徒にとってはとても居心地が良いらしく、長く習ってもらえるため、商業的に大変優秀な講師として、私が通う教室でも中心的な人物です。私と一歳しか違わないのに人望が厚く、信頼に足る人物です。

長年プライベートでも接してきた私に言わせると、彼に関して言えば「才能を活かしたタイプ」の典型であると思われます。才能とは何もバイオリンが上手である、という類のものばかりではありません。才能には決して数値化できない、表現化できないものがあるのです。「優しい」「気が利く」などが数値化される世の中になったら、世も末です。彼に言わせれば「自分はこうありたい、と思っている事に忠実なだけ」と言います。…がその半面、家庭内ではかなりダラシナイそうで、奥様からその話をよく伺っていました。

社会的に需要があるかないか、で全てを判断することは危険ですし、私自身嫌悪を抱く事ですが、作曲を教えていて日々感じる憤りがあるのです。これ程秀でた才能がありながら、それを活かす方法が全く見つからない、という事が多くあります。

日本屈指の才能

例えば生徒のHさん。5年程前から習っている彼が、最初に持ってきたのは一冊のノートにびっしりと書かれた「歌詞」でした。凄まじいアイデアの量。そしてクオリティーも素晴らしい。ただ、一つ大きな問題点があります。「替え歌」なのです。自分が気に入った歌に、自分の歌詞を付けていくという「替え歌」に関して言えば、とてつもないずば抜けた才能を持っています。そして風刺的な表現に大変優れています。

ここから先は

2,580字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?